── つみたて投資枠だけで見れば51.2%、80歳代以上は94.0%。金融庁データに載る「その年に買付がなかった口座数」を編集部が集計した。
金融庁の公表資料には、口座数とは別に「2025年1月1日〜12月31日中に一度も買付がなかった口座数」という数字が載っています。NISA口座全体28,558,925口座のうち、該当は10,446,488口座(36.6%)。年代別では30歳代の29.0%が最も低く、80歳代以上が73.5%で最も高くなりました。
2025年に一度も買付がなかった口座の割合(年代別)。金融庁「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)」より編集部作成
NISA口座は2025年12月末時点で28,206,434口座。2025年6月末の26,958,356口座から半年で4.6%増えました。ここまでは各社の報道でよく見る数字です。
同じ調査には、あまり引用されない表があります。「投資枠の利用状況別口座数」です。ここには買付額の分布が階級別に並んでおり、その左端に「0円」の口座数が置かれています。注記には「0円」欄の定義が明記されています ──「「0円」欄に記載の各口座数は、2025年1月1日〜12月31日中に一度も買付がなかった口座数」。
この欄の値は10,446,488口座。合計28,558,925口座に対して36.6%にあたります。約1045万口座が、2025年の1年間に新しい買付をしていません。
「0円」はその年に買い足さなかったという意味です。口座を解約した、資産が入っていない、損をしている、という意味ではありません。2024年までにまとまった額を投資して、そのまま保有している方も、この36.6%に含まれます。逆に言えば、この数字だけでは「積み立てを止めた人」と「もともと一括で買って持ち続けている人」を区別できません。
年代別に割合を出すと、30歳代の29.0%を谷にしたU字を描きます。買付が止まっている口座の割合は、現役世代の真ん中で最も低くなります。
| 年代 | NISA口座 合計 | うち買付 0円 | 0円の割合 (NISA全体) | 成長 投資枠 | つみたて 投資枠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10歳代 | 115,114 | 64,505 | 56.0% | 73.5% | 69.4% |
| 20歳代 | 3,379,078 | 1,205,139 | 35.7% | 72.4% | 42.9% |
| 30歳代 | 5,002,912 | 1,452,171 | 29.0% | 64.5% | 37.0% |
| 40歳代 | 5,449,123 | 1,667,580 | 30.6% | 61.6% | 41.8% |
| 50歳代 | 5,591,021 | 1,769,810 | 31.7% | 60.6% | 46.0% |
| 60歳代 | 4,228,441 | 1,497,869 | 35.4% | 57.7% | 56.6% |
| 70歳代 | 3,134,939 | 1,571,243 | 50.1% | 61.3% | 78.2% |
| 80歳代以上 | 1,658,297 | 1,218,171 | 73.5% | 76.3% | 94.0% |
| 全年代 | 28,558,925 | 10,446,488 | 36.6% | 63.5% | 51.2% |
出典:金融庁「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)」(2026年7月3日公表)。割合は編集部算出。「成長投資枠」「つみたて投資枠」の列は、それぞれの枠での買付が0円だった口座の割合で、分母は枠ごとに公表されている合計値。
谷の右側は単調に上がります。40歳代30.6%、50歳代31.7%、60歳代35.4%、そして70歳代で50.1%と半分を超え、80歳代以上では73.5%、4口座に3口座が2025年に買付をしていません。左側も同じで、20歳代は35.7%と30歳代より高くなっています。
左端の10歳代(56.0%)は性質が異なります。ジュニアNISAは2023年末で新規の買付を終えており、その口座は制度上いま買付ができません。10歳代は口座数そのものも2025年6月末から-12.1%と、全年代で唯一減っています。
枠別に見ると差はさらに開きます。つみたて投資枠での買付が0円だった口座は14,592,033口座、全体の51.2%。70歳代は78.2%、80歳代以上は94.0%に達します。
NISAは1人1口座ですが、その中に成長投資枠とつみたて投資枠の2つがあります。「つみたて投資枠が0円」の口座には、成長投資枠だけを使っている方が含まれます(逆も同じです)。枠別の0円率をそのまま「何もしていない人の割合」と読むことはできません。両方とも0円だった口座が、第1節の36.6%にあたります。
年間の投資枠は360万円です。しかし実際の買付額の分布を見ると、「0円超60万円以下」が10,105,117口座(35.4%)で最も多く、0円と合わせると72.0%になります。月あたりに直すと5万円以下です。
| 2025年の買付額 | 口座数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 0円 | 10,446,488 | 36.6% |
| 0円超60万円以下 | 10,105,117 | 35.4% |
| 60万円超120万円以下 | 2,391,424 | 8.4% |
| 120万円超180万円以下 | 1,053,151 | 3.7% |
| 180万円超240万円以下 | 2,021,609 | 7.1% |
| 240万円超300万円以下 | 902,192 | 3.2% |
| 300万円超360万円以下 | 1,638,944 | 5.7% |
| 合計 | 28,558,925 | 100.0% |
出典:金融庁「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)」。構成比は編集部算出。注記:2025年1月1日〜12月31日中の、投資枠の利用状況の分布であり、2025年12月31日時点で廃止されている口座の取引を含む。
一方で「300万円超360万円以下」も1,638,944口座(5.7%)あり、枠を使い切る層も一定数存在します。なお、この階級と「180万円超240万円以下」(7.1%)は、そのすぐ手前の階級より口座数が多くなっています。240万円は成長投資枠の年間上限、360万円は年間投資枠そのものの上限にあたり、上限まで使い切った口座がそれぞれの階級の上端に集まるためと考えられます。制度は同じでも、実際の使われ方は両端に散らばっています。
買付の有無より手前の段階、「そもそも口座を持っているか」にも差があります。金融庁が公表する都道府県別の口座数を、総務省の住民基本台帳人口で割ると、人口100人あたりの口座数は全国で22.78。都道府県別では東京29.67に対し青森13.90で、2.13倍の開きがあります。
金融庁の都道府県別口座数(2025年12月末)÷ 総務省 住民基本台帳人口(令和8年1月1日・総計)。編集部算出
| 順位 | 都道府県 | NISA口座数 | 人口100人 あたり |
|---|---|---|---|
| 1 | 東京 | 4,176,700 | 29.67 |
| 2 | 神奈川 | 2,473,048 | 26.90 |
| 3 | 奈良 | 336,951 | 26.05 |
| 4 | 兵庫 | 1,336,099 | 24.91 |
| 5 | 京都 | 609,324 | 24.79 |
| 6 | 愛知 | 1,803,517 | 24.13 |
| 7 | 大阪 | 2,108,008 | 24.02 |
| 8 | 滋賀 | 336,057 | 23.99 |
| 9 | 千葉 | 1,494,937 | 23.68 |
| 10 | 三重 | 400,196 | 23.20 |
| …(第11位〜第37位は省略)… | |||
| 38 | 高知 | 114,325 | 17.48 |
| 39 | 宮崎 | 177,172 | 17.10 |
| 40 | 大分 | 183,072 | 16.78 |
| 41 | 福島 | 291,068 | 16.67 |
| 42 | 秋田 | 145,996 | 16.39 |
| 43 | 沖縄 | 241,757 | 16.29 |
| 44 | 鹿児島 | 247,841 | 16.08 |
| 45 | 北海道 | 793,552 | 15.88 |
| 46 | 岩手 | 162,852 | 14.33 |
| 47 | 青森 | 162,135 | 13.90 |
出典:金融庁「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)」都道府県別表、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年(2026年)1月1日現在【総計】)の「人口、世帯数、人口動態(都道府県別)【総計】」。人口はNISAの基準日(2025年12月末)の約1か月後にあたり、時点がほぼ揃います。人口100人あたりの口座数は編集部算出。都道府県別の合計は28,193,996口座で、全国調査の28,206,434口座とは一致しません(公表資料の注記:一部の金融機関では基準日時点での都道府県別の口座数を集計できなかった等の要因により、別紙1のNISA口座数と一致しない)。
この集計は金融機関が把握する住所地ベースであり、東京都には本社所在地の影響が乗る可能性があります。ただし東京都を除いても、神奈川26.90と青森13.90で1.94倍の差が残ります。全国は22.78、中央値は20.85です。
上位は東京・神奈川・奈良・兵庫・京都・愛知・大阪・滋賀で、三大都市圏とその通勤圏に集中しています。下位は青森・岩手・北海道・鹿児島・沖縄・秋田です。
所得水準、金融機関の店舗網、年齢構成など複数の要因が考えられますが、本調査のデータで因果関係を示すことはできません。本リリースは差が存在するという事実までを示すものです。
| 分析主体 | IKIGAI TOWN 編集部(スペシャリスト・ドクターズ株式会社) |
|---|---|
| データ出典 | 金融庁「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)」(2026年7月3日公表) 2512.xlsx(全国)/ 2512pref.xlsx(都道府県別) |
| 人口データ | 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年(2026年)1月1日現在【総計】)/人口、世帯数、人口動態(都道府県別)【総計】。47都道府県の積み上げが公表の合計123,767,642人と一致することを確認済み |
| 集計対象 | NISA口座全体・成長投資枠・つみたて投資枠の各「投資枠の利用状況別口座数」表、および都道府県別・年齢層別NISA口座数 |
| 編集部の計算 | 各階級の構成比、買付0円の割合、人口100人あたりの口座数、上位下位の倍率、中央値。利回りの仮定・将来推計は一切行っていない |
| 分母の扱い | 買付0円の割合は「投資枠の利用状況別口座数」表の合計(28,558,925口座)を分母とした。口座数の表(28,206,434口座)とは集計範囲が異なるため混用していない |
| 公表日 |
「始めたかどうか」より「続いているかどうか」
NISAの報道は口座数の伸びで語られがちですが、この調査でいちばん重い数字は36.6%だと考えます。口座を開くことと、買い続けることは別の行為です。
年代別のU字も示唆的でした。30歳代が最も止まっておらず、そこから年齢が上がるにつれて買付が減っていきます。給与天引きや自動積立の設定が続いている層と、退職後にまとまった資金で一度買ってそのままにしている層とでは、口座の使われ方が違うのだろうと推測できます。ただし、これは推測であって、本データからは断定できません。
私たちがFP相談の現場で多く受けるのは、「NISAは始めたのですが、そのあとどうすればいいか分からない」という相談です。年間360万円の枠に対して72.0%が年60万円以下という分布は、その感覚と符合します。制度が用意した器の大きさと、実際に使われている量には距離があります。
その距離を埋めるのは、より複雑な商品知識ではなく、家計のどこからいくらを回せるのかという整理だと考えています。買付が止まっている理由が「余裕がない」なのか「判断がつかない」なのかで、必要な打ち手は変わります。
IKIGAI TOWN 編集長 塩飽哲生