基礎知識

相続・贈与とは?
相続税の仕組みと生前対策の全体像【2026年版】

公開日:2026年4月11日 更新日:2026年4月11日 執筆:IKIGAI TOWN 編集部

「うちには大した財産はないから相続税なんて関係ない」。そう思っていたはずが、いざ親の相続が発生してみると、実家の土地評価だけで基礎控除を超えてしまう——。基礎控除の縮小(2015年改正)と、都市部の地価上昇によって、相続税はいまや決して一部の富裕層だけの話ではありません。本記事では、相続税の仕組み・生前贈与の基本・2026年からの制度改正、そして40〜60代が今やるべき対策までを、一枚の地図のように整理します。

相続・贈与の全体像

「相続」とは、人が亡くなったときにその人(被相続人)の財産を家族などの相続人が引き継ぐことをいいます。一方「贈与」は、生きているうちに財産を無償で渡すことです。どちらも財産が別の人の手に渡るという点は同じですが、課される税金は別で、相続には相続税、贈与には贈与税がかかります。

そして両者は完全に別物というわけではなく、「生前贈与した財産の一部は、相続のときに相続財産として足し戻す」というルールが存在します。つまり、相続税と贈与税はセットで設計されており、片方だけを見て対策するとバランスを崩してしまうのが、相続・贈与を難しく感じさせる一番の理由です。

Point

相続対策は「相続税を減らす」だけが目的ではありません。①相続税を減らす ②納税資金を準備する ③家族が争わないようにする、この3つのバランスを取ることが本当のゴールです。

相続税の計算の仕組み(基礎控除・法定相続分)

相続税の計算は複雑に見えますが、大きな流れを掴むことが先決です。ざっくり次の4ステップで計算されます。

  1. 被相続人の財産をすべて洗い出し、時価で評価する(=課税価格)
  2. そこから基礎控除額を差し引く
  3. 残った額を法定相続分で各相続人に分けたと仮定して税率を当てはめる
  4. いったん計算した相続税の総額を、実際の取り分に応じて按分する

ここで最も重要なのが基礎控除です。計算式は覚えやすく、3,000万円+600万円×法定相続人の数。つまり相続人が多いほど基礎控除額も大きくなります。

法定相続人の数 基礎控除額 主なケース
1人3,600万円配偶者のみ、または子1人
2人4,200万円配偶者+子1人
3人4,800万円配偶者+子2人
4人5,400万円配偶者+子3人
5人6,000万円配偶者+子4人

例えば夫が亡くなり、妻と子2人が相続人となる場合、基礎控除は4,800万円。財産が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。逆にいえば、都市部の持ち家と預貯金・有価証券を合わせると、4,800万円を超えてしまう家庭は決して珍しくないのが現実です。

注意

「配偶者の税額軽減」により、配偶者が相続する財産は1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い額まで相続税がかからない制度があります。ただし、二次相続(残された配偶者が亡くなったとき)で子どもの税負担が重くなりやすいので、一次相続と二次相続を合わせて考える視点が必要です。

生前贈与の基本(暦年贈与 vs 相続時精算課税)

生前に財産を移す方法には、大きく分けて2つの課税方式があります。どちらを選ぶかで、長期の税負担が大きく変わります。

① 暦年贈与(暦年課税)

1月1日〜12月31日までの1年間に、受け取った人1人あたり年110万円までの贈与は贈与税がかかりません。この110万円を毎年コツコツと子や孫に贈与していく方法が「暦年贈与」と呼ばれます。シンプルで使いやすい反面、後述する「持ち戻し」のルールに注意が必要です。

② 相続時精算課税

60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円までは贈与税をかけず、相続のときに相続財産に合算して精算する仕組みです。2024年からは、これに加えて年110万円の基礎控除が新設され、この枠内なら申告不要で、相続時にも加算されないという大きな改善がありました。

「結局うちは、どっちの贈与が向いているの?」

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2026年からの制度改正ポイント

近年の相続・贈与に関する税制は、「生前贈与を使って相続税を回避する」動きに歯止めをかける方向で変更されてきました。2026年時点で押さえておくべき主な変更点は次の3つです。

① 暦年贈与の「持ち戻し」が3年→7年に延長

従来、相続開始前3年以内の暦年贈与は相続財産に加算(持ち戻し)されていましたが、2024年以降の贈与については段階的に加算期間が7年に延長されています。延長された4〜7年前の贈与分については、合計100万円までは加算対象外とされる緩和措置もあります。

② 相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設

同じく2024年から、相続時精算課税を選んだ場合でも年110万円までは非課税・申告不要で、かつ相続財産への加算も不要に。従来「使いづらい制度」とされてきた相続時精算課税が、大きく使いやすくなりました。

③ マンション評価の見直し

いわゆる「タワマン節税」対策として、2024年からは居住用区分マンションの相続税評価額の計算方法が改正され、市場価格との乖離が一定以上ある場合は評価額が引き上げられるようになりました。高層階ほど影響を受けやすい見直しです。

40〜60代が今やるべき生前対策

制度改正を踏まえたうえで、40〜60代の「これからが対策本番」という世代が取れる代表的なアクションを整理します。

  • 財産リストの作成:不動産・預貯金・有価証券・保険・借入などを一覧化し、概算評価額を把握する。
  • 相続人の確定:法定相続人は誰になるかを早めに確認。複雑な家族関係ほど早めの整理が必要。
  • 生命保険の活用:「500万円×法定相続人数」の非課税枠は見逃し厳禁。納税資金の準備にも有効。
  • 生前贈与の設計:暦年贈与と相続時精算課税のどちらが向いているか、7年持ち戻しを踏まえて戦略を立てる。
  • 家族信託・遺言書の検討:親の認知症対策や、家族間の争いを防ぐ仕組みを生前に準備する。
  • 納税資金の確保:相続税は原則現金一括納付。不動産中心の資産構成では特に注意。

Point

相続対策は「開始のタイミング」がそのまま効果に直結します。暦年贈与は時間を味方につける制度ですし、家族信託も判断能力があるうちしか契約できません。「まだ早い」と思える時期こそが、最大の武器です。

まとめ

  • 相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」。都市部の持ち家世帯は対象になりやすい。
  • 生前贈与には暦年贈与と相続時精算課税があり、2024年以降どちらも大きく仕組みが変わった。
  • 暦年贈与の持ち戻し期間は3年→7年に延長されており、早めの着手ほど効果が大きい。
  • 対策の本質は「税金を減らす」「納税資金を準備する」「争いを避ける」の3点セット。

相続・贈与は、家族構成・資産構成・居住エリアによって最適解がまったく異なる領域です。IKIGAI TOWNでは、2026年制度改正・家族信託・地域別の土地評価まで、テーマ別の解説記事を用意しています。関連記事から気になるトピックをぜひご覧ください。

※ 本記事は2026年4月時点の税制に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。相続税・贈与税は家族構成や資産内容、取引の経緯によって取り扱いが大きく変わります。実際の対策・申告にあたっては、必ず税理士・弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。本記事の情報により生じたいかなる損害についても、当サイトでは責任を負いかねます。