保険・医療

傷病手当金とは?
支給額と申請方法【2026】

家族で将来のお金と暮らしの選択肢を話し合う場面
数字を確認したあと、暮らしの選択肢を増やすために家計を整えます。

「病気やケガで働けなくなったら収入はどうなるの?」――20〜60代の家計相談で必ず出てくる問いです。

目次(12セクション)
  1. 傷病手当金とは?受給できる4つの条件
  2. 支給額の計算方法(標準報酬日額の2/3)
  3. 支給期間は通算1年6ヶ月(2022年改正)
  4. 申請手続きの流れ(事業主証明→医師意見書→申請書)
  5. 待期期間の3日間ルール(よくある誤解と注意点)
  6. 有給休暇との使い分け戦略
  7. 退職後も受給できる条件(資格喪失後継続給付)
  8. 傷病手当金と障害年金の調整ルール
  9. 傷病手当金と出産手当金・労災との併給調整
  10. 不支給になるケースと対策
  11. 国民健康保険加入者への代替策
  12. 傷病手当金の非課税扱いと社会保険料の注意点

傷病手当金とは?受給できる4つの条件

傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで働けなくなったときに、生活を保障するために支給される給付金です。次の4条件をすべて満たす必要があります。

  1. 業務外の病気・ケガで療養中であること(業務上・通勤途上は労災の対象)
  2. 療養のため労務不能であること(医師の意見が必要)
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること(待期3日間は無給)
  4. 給与の支払いがないこと(給与が支給されていれば傷病手当金はその分減額)

Point

「待期3日間」は、有給・公休・欠勤を問わず連続3日休むことで成立します。4日目以降から支給対象になります。うち3日間は無給でなくてもOKですが、4日目以降は原則として無給であることが必要です。

支給額の計算方法(標準報酬日額の2/3)

支給額の計算式は2016年4月以降、次の通り定型化されました。

傷病手当金の支給日額

支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 3分の2

具体例:月給30万円の会社員

標準報酬月額が30万円の場合、日額は 30万円 ÷ 30日 × 2/3 ≒ 6,660円。30日休むと、1ヶ月で約20万円が支給される計算です。

標準報酬月額日額(概算)月額(30日)
20万円4,440円約13.3万円
30万円6,660円約20.0万円
40万円8,880円約26.7万円
50万円11,110円約33.3万円

加入期間が12ヶ月に満たない場合は、「加入期間の平均額」と「加入している健保組合の標準報酬月額平均」のいずれか低い額で計算します。

支給期間は通算1年6ヶ月(2022年改正)

支給期間は支給開始日から通算して1年6ヶ月(18ヶ月)までです。2022年1月1日施行の改正前は「支給開始日から暦で1年6ヶ月」でしたが、改正後は復職した日数を除く「通算」方式になりました。

例えば、6ヶ月受給 → 3ヶ月復職 → 12ヶ月受給、の場合、改正前は最後の12ヶ月のうち後半の一部しか受給できませんでしたが、改正後は合計18ヶ月分を受給可能です。うつ病・がん治療など長期化・断続的な療養が多い20〜60代にとって非常に大きな改善です。

申請手続きの流れ(事業主証明→医師意見書→申請書)

申請書は「健康保険傷病手当金支給申請書」で、A4サイズ4ページ構成です。協会けんぽ・健保組合ともに同様の様式です。

①被保険者記入用(1〜2ページ目)

氏名・被保険者証記号番号・療養のため休んだ期間・仕事を休んだ日数・申請期間・労務不能の期間・休業中に支給された給与の有無などを記入します。

②事業主記入用(3ページ目)

会社の人事・総務が記入する欄です。出勤簿の写し、休業期間中の賃金支払状況(有給・無給の別、給与額)を記載します。

③療養担当者(医師)記入用(4ページ目)

主治医が記入する欄です。傷病名、発病または負傷年月日、労務不能と認めた期間、診療実日数、症状経過と所見を記載します。この欄がないと申請は受理されません。医師への依頼時は「傷病手当金申請用の意見書をお願いします」と伝えましょう。

提出先と支給までの期間

  • 協会けんぽ加入者:協会けんぽ各都道府県支部へ郵送
  • 組合健保加入者:加入する健康保険組合へ(会社経由が多い)
  • 支給までの期間:申請から支給決定まで2週間〜1ヶ月程度が目安

注意

申請は原則として1ヶ月単位でまとめて行います。療養開始後すぐに申請できるわけではなく、月ごとに「この1ヶ月は労務不能でした」という事実確定を経て申請するのが一般的な流れです。

待期期間の3日間ルール(よくある誤解と注意点)

傷病手当金の支給は、仕事を休んだ初日からではなく4日目からです。最初の連続3日間は「待期期間」と呼ばれ、この間は傷病手当金が支給されません。待期期間には次のようなルールがあります。

待期3日間の成立条件

  • 連続3日間の休業が必須 ── 土日祝・有給休暇・欠勤のいずれでも構いません。ただし「飛び飛び」の休みでは成立しません
  • 待期中に給与が出ていても問題なし ── 有給休暇で3日間休んだ場合でも待期は成立します
  • 待期完成後、4日目以降に無給であること ── 4日目以降に給与が支払われている日は支給対象外(または差額調整)になります

よくある誤解

誤解正しい理解
土日を含めて3日休んだが、月曜に出勤したので待期不成立金・土・日の連続3日で待期は成立。月曜(4日目)に出勤した場合は月曜分が不支給になるだけ
有給を使うと待期が成立しない有給でも待期は成立する。ただし有給中は給与が出ているため傷病手当金は不支給
入院しないと待期が認められない自宅療養でも医師が労務不能と認めれば待期は成立する

Point

一度待期が完成すれば、同一傷病で再び休業した場合に改めて待期を満たす必要はありません。ただし、別の傷病で休業する場合は新たに3日間の待期が必要です。

有給休暇との使い分け戦略

病気やケガで休業する際、有給休暇と傷病手当金のどちらを先に使うかは、家計への影響が大きい判断です。それぞれのメリット・デメリットを整理します。

有給休暇を先に使う場合

  • メリット:給与が満額支給されるため、休業初期の収入減を避けられる
  • デメリット:有給を使い切ると、復職後に体調不良で休みたいときに無給欠勤になる

傷病手当金を先に使う場合

  • メリット:有給を温存できるため、復職後の通院日や体調不良日に柔軟に使える
  • デメリット:傷病手当金は給与の約2/3のため、休業初期から収入が3割減る

実務的なアドバイス

待期期間の3日間は有給を充て、4日目以降は傷病手当金に切り替えるのが一般的です。ただし、がん治療のように復職後も定期的に通院が必要なケースでは、有給を温存しておく方が長期的に有利な場合があります。休業期間の見通しを主治医に確認したうえで判断しましょう。

有給と傷病手当金の比較

比較項目有給休暇傷病手当金
支給額給与の100%給与の約67%(2/3)
日数制限残日数のみ(年20日が上限目安)通算1年6ヶ月
医師の証明不要必要(申請書の医師記入欄)
課税課税対象(給与所得)非課税
社会保険料通常通り天引き本人負担分は別途支払い

退職後も受給できる条件(資格喪失後継続給付)

退職すると健康保険の被保険者資格を失いますが、一定の条件を満たせば退職後も傷病手当金の残り期間を受給できます。これを「資格喪失後の継続給付」と呼びます。

資格喪失後継続給付の3条件

  1. 退職日までに継続して1年以上、健康保険の被保険者であったこと ── 任意継続期間は含まれません。転職で保険者が変わっても、空白なく1年以上あればOKです
  2. 退職日(資格喪失の前日)に傷病手当金を受けている、または受ける条件を満たしていること ── つまり退職日時点で労務不能の状態であることが必要です
  3. 退職日に出勤していないこと ── 退職日に挨拶回りなどで出勤してしまうと「労務可能」とみなされ、継続給付の権利を失います

注意

退職日に出勤すると継続給付の権利を失うケースは、実務で非常に多いトラブルです。会社への感謝の気持ちから最終日に出勤する方がいますが、傷病手当金を受給中の場合は絶対に出勤しないでください。引き継ぎや挨拶はメール・電話で行いましょう。

退職後の受給で変わること

  • 支給額は退職時の標準報酬月額をもとに計算(退職後に変動しない)
  • 退職後に別の仕事に就いて「労務可能」と判断されると、その時点で支給終了
  • 退職後は任意継続被保険者や国民健康保険に加入しても、傷病手当金は退職時の健保から支給される
  • 失業保険(雇用保険の基本手当)と傷病手当金は同時には受給できない。ハローワークで受給期間延長の手続きを行う

傷病手当金と障害年金の調整ルール

同一の傷病で傷病手当金と障害厚生年金(または障害基礎年金)の両方を受給できる状態になった場合、併給調整が行われます。

調整の仕組み

  • 障害厚生年金が支給される場合:障害厚生年金の日額(年額÷360)が傷病手当金の日額以上であれば、傷病手当金は全額不支給。障害厚生年金の日額が傷病手当金の日額未満であれば、差額が傷病手当金として支給される
  • 障害基礎年金のみの場合:障害基礎年金との調整はないため、傷病手当金は全額支給される(障害厚生年金に該当しない場合)
  • 障害手当金(一時金)を受けた場合:障害手当金の額に達するまで傷病手当金は支給停止される

Point

障害年金の請求には初診日から1年6ヶ月の「障害認定日」を待つ必要があり、傷病手当金の支給期間(通算1年6ヶ月)とほぼ重なります。うつ病やがんなど長期療養が見込まれる場合は、傷病手当金の受給中に障害年金の請求準備を進めておくことが重要です。

具体例:傷病手当金と障害厚生年金の調整計算

項目金額
傷病手当金の日額6,660円(標準報酬月額30万円の場合)
障害厚生年金の日額5,000円(年額180万円÷360日の場合)
差額支給1,660円/日が傷病手当金として支給

傷病手当金と出産手当金・労災との併給調整

傷病手当金は他の公的給付と重複する場合に調整されます。主なケースを整理します。

出産手当金との調整

出産手当金と傷病手当金の受給期間が重なった場合、出産手当金が優先されます。出産手当金の日額が傷病手当金の日額以上であれば傷病手当金は不支給、出産手当金の日額が下回る場合は差額が支給されます。

労災保険との調整

業務上または通勤途上の傷病は労災保険の対象であり、傷病手当金(健康保険)は支給されません。ただし、業務外の傷病で傷病手当金を受給中に、別の原因で労災の休業補償給付を受ける場合は調整が発生します。

老齢厚生年金との調整

退職後に傷病手当金を受給しながら老齢厚生年金(特別支給含む)を受給する場合、老齢厚生年金の日額が傷病手当金の日額以上であれば傷病手当金は不支給となります。老齢厚生年金の日額が下回る場合は差額が支給されます。

Point

併給調整は自動的に行われず、健保組合や協会けんぽへ届出が必要です。調整対象の年金や給付を受けている場合は、傷病手当金の申請時に正直に申告しましょう。虚偽申告は不正受給として返還を求められます。

不支給になるケースと対策

傷病手当金は条件を満たせば支給される制度ですが、以下のケースでは不支給や支給停止になることがあります。事前に対策を知っておきましょう。

不支給になる主なケース

ケース理由対策
医師の意見書が不十分労務不能期間が曖昧、傷病名が不明確申請前に医師へ「傷病手当金用の意見書」と明確に伝え、労務不能期間を具体的に記載してもらう
待期期間が未完成連続3日間の休業を満たしていない飛び飛びの休みではなく、連続3日間の休業を確保する
給与が支払われている休業中に会社が給与を全額支給会社の休職制度を確認し、無給期間の開始日を把握する
業務上の傷病(労災)健康保険ではなく労災保険の対象業務との因果関係を確認し、労災申請を検討する
申請期限を過ぎた労務不能日ごとにその翌日から2年で時効月ごとにこまめに申請する(まとめて後から申請すると一部時効になるリスク)
退職日に出勤した資格喪失後継続給付の要件を満たさない退職日は絶対に出勤しない。引き継ぎはメールや電話で行う

申請が却下された場合の対処法

  1. 不支給決定通知書の理由を確認 ── 具体的な不支給理由が記載されています
  2. 健保組合・協会けんぽに問い合わせ ── 書類の不備であれば再提出で受理される場合があります
  3. 審査請求(不服申立て) ── 不支給決定に不服がある場合、決定を知った日の翌日から3ヶ月以内に社会保険審査官へ審査請求できます
  4. 再審査請求 ── 審査請求の決定に不服がある場合、社会保険審査会へ再審査請求が可能です

国民健康保険加入者への代替策

国民健康保険(国保)には、原則として傷病手当金の制度がありません。自営業・フリーランス・個人事業主の方は、病気やケガで働けなくなった場合に公的な所得補償がないため、自分で備える必要があります。

例外

新型コロナウイルス感染症に関しては、2020年から国保加入者にも傷病手当金が特例的に支給されました。ただしこれは時限措置であり、恒久的な制度ではありません。一部の国保組合(医師国保・建設国保など)は独自に傷病手当金を設けている場合があります。加入先の国保組合に確認しましょう。

代替手段の比較

手段概要月額保険料の目安
就業不能保険病気・ケガで働けない期間、毎月定額を受給できる。精神疾患を対象外とする商品もあるため要確認2,000〜5,000円程度
所得補償保険損害保険会社が扱う1年更新型の保険。所得の一定割合(50〜70%)を補償する3,000〜8,000円程度
共済の休業保障都道府県民共済や全労済に休業保障のプランがある。掛金が安いが保障額は低め1,000〜3,000円程度
小規模企業共済個人事業主の退職金制度。傷病時の貸付制度あり(直接の所得補償ではない)1,000〜70,000円(掛金)
預貯金(生活防衛資金)生活費の6ヶ月〜1年分を確保しておくことで、保険料なしで備えられる

自営業・フリーランスの方は、生活防衛資金の確保を最優先とし、そのうえで就業不能保険や所得補償保険で不足分を補うのが合理的です。保障額は「月々の固定費(家賃・ローン・社会保険料)をカバーできる水準」を目安に設計しましょう。

傷病手当金の非課税扱いと社会保険料の注意点

傷病手当金は所得税・住民税ともに非課税です。確定申告の必要もありません。ただし、休業中も社会保険料の支払いは続くため、手取り額を正しく把握しておく必要があります。

休業中の社会保険料

  • 健康保険料・厚生年金保険料:在職中は会社が立て替え、復職後にまとめて控除されるか、休業中に毎月振込で支払うケースが一般的です。会社の休職規程を事前に確認しましょう
  • 雇用保険料:給与が支給されない月は、雇用保険料の負担はありません
  • 住民税:前年の所得に基づく住民税は休業中も納付が必要です。給与天引きができないため、普通徴収(自分で納付)に切り替わることがあります

傷病手当金と確定申告の関係

傷病手当金は非課税所得のため、年末調整や確定申告の収入に含めません。ただし、年の途中で休業した場合、その年の給与所得が減るため、年末調整または確定申告で所得税の還付を受けられる可能性があります。医療費が多い年は医療費控除も併せて申告しましょう。

Point

傷病手当金の受給中に退職し、翌年に確定申告する場合は「退職所得の源泉徴収票」と「給与所得の源泉徴収票」の両方が必要です。また、退職後に国民健康保険に切り替えた場合、傷病手当金の収入は保険料の算定基礎に含まれない(非課税所得のため)点も押さえておきましょう。

保険や制度を調べている本当の理由は、「家計でどこまで備えればよいか」の不安かもしれません

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最終確認日:2026年5月15日

※本記事は2026年5月時点の一般的な情報であり、個別の税務・経営・法務相談に代わるものではありません。各制度の適用要件・税額は個人の状況により異なります。実行にあたっては、必ず公式情報および税理士・社労士・FP・弁護士など専門家にご相談ください。本記事の情報により生じたいかなる損害についても、当サイトでは責任を負いかねます。

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