公的制度

傷病手当金とは?
支給額と申請方法【2026年版】

公開日:2026年4月11日 更新日:2026年4月11日 執筆:IKIGAI TOWN 編集部

「病気やケガで働けなくなったら収入はどうなるの?」――40〜60代の家計相談で必ず出てくる問いです。会社員・公務員には「傷病手当金」という強力な公的セーフティネットがありますが、制度の存在を知らずに民間の医療保険ばかり上乗せしている方も少なくありません。本記事では、傷病手当金の支給額の計算式、最長1年6ヶ月の支給期間、申請書の書き方、退職後の受給条件、そして所得補償保険・就業不能保険との違いまで整理します。

傷病手当金とは?受給できる4つの条件

傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで働けなくなったときに、生活を保障するために支給される給付金です。次の4条件をすべて満たす必要があります。

  1. 業務外の病気・ケガで療養中であること(業務上・通勤途上は労災の対象)
  2. 療養のため労務不能であること(医師の意見が必要)
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること(待期3日間は無給)
  4. 給与の支払いがないこと(給与が支給されていれば傷病手当金はその分減額)

Point

「待期3日間」は、有給・公休・欠勤を問わず連続3日休むことで成立します。4日目以降から支給対象になります。うち3日間は無給でなくてもOKですが、4日目以降は原則として無給であることが必要です。

支給額の計算式と具体例

支給額の計算式は2016年4月以降、次の通り定型化されました。

傷病手当金の支給日額

支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 3分の2

具体例:月給30万円の会社員

標準報酬月額が30万円の場合、日額は 30万円 ÷ 30日 × 2/3 ≒ 6,660円。30日休むと、1ヶ月で約20万円が支給される計算です。

標準報酬月額日額(概算)月額(30日)
20万円4,440円約13.3万円
30万円6,660円約20.0万円
40万円8,880円約26.7万円
50万円11,110円約33.3万円

加入期間が12ヶ月に満たない場合は、「加入期間の平均額」と「加入している健保組合の標準報酬月額平均」のいずれか低い額で計算します。

支給期間は通算1年6ヶ月(2022年改正)

支給期間は支給開始日から通算して1年6ヶ月(18ヶ月)までです。2022年1月1日施行の改正前は「支給開始日から暦で1年6ヶ月」でしたが、改正後は復職した日数を除く「通算」方式になりました。

例えば、6ヶ月受給 → 3ヶ月復職 → 12ヶ月受給、の場合、改正前は最後の12ヶ月のうち後半の一部しか受給できませんでしたが、改正後は合計18ヶ月分を受給可能です。うつ病・がん治療など長期化・断続的な療養が多い40〜60代にとって非常に大きな改善です。

申請書の書き方と提出手順

申請書は「健康保険傷病手当金支給申請書」で、A4サイズ4ページ構成です。協会けんぽ・健保組合ともに同様の様式です。

①被保険者記入用(1〜2ページ目)

氏名・被保険者証記号番号・療養のため休んだ期間・仕事を休んだ日数・申請期間・労務不能の期間・休業中に支給された給与の有無などを記入します。

②事業主記入用(3ページ目)

会社の人事・総務が記入する欄です。出勤簿の写し、休業期間中の賃金支払状況(有給・無給の別、給与額)を記載します。

③療養担当者(医師)記入用(4ページ目)

主治医が記入する欄です。傷病名、発病または負傷年月日、労務不能と認めた期間、診療実日数、症状経過と所見を記載します。この欄がないと申請は受理されません。医師への依頼時は「傷病手当金申請用の意見書をお願いします」と伝えましょう。

提出先と支給までの期間

  • 協会けんぽ加入者:協会けんぽ各都道府県支部へ郵送
  • 組合健保加入者:加入する健康保険組合へ(会社経由が多い)
  • 支給までの期間:申請から支給決定まで2週間〜1ヶ月程度が目安

注意

申請は原則として1ヶ月単位でまとめて行います。療養開始後すぐに申請できるわけではなく、月ごとに「この1ヶ月は労務不能でした」という事実確定を経て申請するのが一般的な流れです。

退職後も受け取れる条件

次の条件を満たせば、退職後も残りの支給期間について傷病手当金を受給できます(「資格喪失後継続給付」)。

  1. 退職日まで継続して1年以上の健康保険被保険者期間があること
  2. 退職日にすでに傷病手当金を受給しているか、受給できる状態(労務不能)であること
  3. 退職日に出勤していないこと(退職日にあいさつ等で出社すると受給資格を失う)

よくある落とし穴

「せめて退職日くらいは挨拶に行こう」と出社してしまうと、労務可能と見なされ資格喪失後継続給付の受給資格がなくなります。人事・上司の事前了解のもと、退職日は欠勤で通すのが鉄則です。

民間の所得補償保険との違い

自営業・フリーランスの方や、会社員でも「1年6ヶ月では不安」という方が検討するのが、民間の所得補償保険・就業不能保険です。

傷病手当金所得補償/就業不能保険
対象者健康保険被保険者(会社員・公務員)加入者(自営業可)
支給額給与の約3分の2契約で設定(月5〜30万円程度)
支給期間通算1年6ヶ月契約で設定(60歳・65歳まで等)
待機期間3日間60〜180日が一般的
対象となる状態労務不能就業不能(商品により定義が異なる)
精神疾患対象(医師意見で判定)商品により対象外・制限あり

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FAQ

Q. うつ病でも傷病手当金を受け取れますか?
A. 受け取れます。医師が「労務不能」と判断すれば傷病の種類を問いません。実際、傷病手当金の支給事由で精神疾患はトップクラスの割合を占めます。
Q. 複数の傷病で連続して受給できますか?
A. 同一の傷病では通算1年6ヶ月までですが、別の独立した傷病で新たに労務不能になった場合は、新たな受給期間として再度1年6ヶ月を受給できます。
Q. 傷病手当金と障害年金は同時受給できますか?
A. 同一の傷病に対して傷病手当金と障害厚生年金が両方支給される場合は、原則として傷病手当金が減額調整されます。
Q. 会社に内緒で申請できますか?
A. 原則として事業主記入欄があるため、会社の協力が必要です。ただし事業主欄がない前提で申請する特例的な運用もあります。退職後の継続給付であれば会社を介さずに申請できます。
Q. 申請期限はありますか?
A. 労務不能だった日ごとに翌日から2年で時効となります。後からまとめて申請する場合は、古い期間から順に時効消滅するので注意してください。

まとめ

  • 傷病手当金は健保加入者が業務外の病気・ケガで働けないときの公的所得保障
  • 支給額は給与の約3分の2、支給期間は通算1年6ヶ月
  • 2022年改正で復職期間を除く通算方式に(断続的療養に優しい制度へ)
  • 退職後も継続1年以上+退職日無出勤で継続給付を受けられる
  • 国民健康保険には傷病手当金がないため、自営業者は民間の就業不能保険を検討
※ 本記事は2026年4月時点の一般的な情報をもとに作成しています。実際の請求にあたっては全国健康保険協会(協会けんぽ)の傷病手当金ページまたは加入先の健康保険組合にご確認ください。