── 課税割合は10.4%で、財務省が公表する昭和58年以降の系列で最高。ただし国の税収の伸びに占める相続税は3.4%にとどまり、税収シェアは2年連続で低下している
ライフプランメディア「IKIGAI TOWN」(運営:スペシャリスト・ドクターズ株式会社)編集部は、国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月公表)と財務省「租税及び印紙収入、収入額調」を突き合わせ、相続税の広がりと、国の財政における位置づけを集計しました。相続税の課税割合(申告書の提出に係る被相続人数 ÷ 死亡者数)は令和6年分で10.4%となり、財務省が公表する昭和58年以降の長期系列で初めて10%を超えました(それ以前の最高は昭和63年の7.9%)。基礎控除が引き下げられる前の平成26年分は4.4%です。一方で、令和6年度から令和7年度にかけての一般会計税収の増加89,905億円のうち相続税は+3,069億円で、寄与は3.4%。税収に占める相続税の構成比は4.95% → 4.72% → 4.58%と2年連続で下がっています。集計値はCSVで公開し、出典明記のうえCC BY 4.0で自由に引用・転載できます。
課税割合=相続税の申告書の提出に係る被相続人数 ÷ 死亡者数。出典:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」および「令和5年分」の課税割合の推移
平成27年(2015年)に相続税の基礎控除が「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」から「3,000万円+600万円×法定相続人数」へ引き下げられ、課税割合は4.4%から8.0%へ一気に倍増しました。その後は令和元年分に一度下がったものの再び上昇し、9年後の令和6年分に10.4%へ達しました。
| 年分 | 課税割合 | 備考 |
|---|---|---|
| H26(2014年) | 4.4% | 引下げ前 |
| H27(2015年) | 8.0% | 引下げ後 |
| H28(2016年) | 8.1% | |
| H29(2017年) | 8.3% | |
| H30(2018年) | 8.5% | |
| R元(2019年) | 8.3% | |
| R2(2020年) | 8.8% | |
| R3(2021年) | 9.3% | |
| R4(2022年) | 9.6% | |
| R5(2023年) | 9.9% | |
| R6(2024年) | 10.4% | 初の10%台 |
国税庁は令和6年分について、被相続人数・課税価格・申告税額が「いずれも基礎控除額の引下げがあった平成27年分以降で最高となりました」としています。
| 項目 | 令和5年分 | 令和6年分 | 対前年比 |
|---|---|---|---|
| 被相続人数(死亡者数) | 1,576,016人 | 1,605,378人 | 101.9% |
| 相続税の申告書の提出に係る被相続人数 | 155,740人 | 166,730人 | 107.1% |
| 課税割合 | 9.9% | 10.4% | +0.5ポイント |
| 課税価格 | 216,335億円 | 233,846億円 | 108.1% |
| 申告税額 | 30,053億円 | 32,446億円 | 108.0% |
| 被相続人1人当たり課税価格 | 13,891万円 | 14,025万円 | 101.0% |
| 被相続人1人当たり税額 | 1,930万円 | 1,946万円 | 100.8% |
出典:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」。令和6年分は令和7年10月31日までに提出された申告書(修正申告書を除く)に基づく。
赤=相続税。年度ベース。出典:財務省「租税及び印紙収入、収入額調」の前年度決算額(概数)
税収の伸びを作っているのは法人税・源泉所得税・消費税で、この3税目だけで増加額の96.3%を占めます。相続税は+3,069億円・寄与3.4%にとどまりました。
| 税目 | 令和6年度→令和7年度の増減 | 増加額への寄与 |
|---|---|---|
| 法人税 | +38,348億円 | 42.7% |
| 源泉所得税 | +38,204億円 | 42.5% |
| 消費税 | +10,065億円 | 11.2% |
| 相続税 | +3,069億円 | 3.4% |
| 申告所得税 | +2,275億円 | 2.5% |
| その他の税目 | △2,057億円 | -2.3% |
| 一般会計税収 計 | +89,905億円 | 100.0% |
さらにその前年、令和5年度から令和6年度にかけては、一般会計税収が31,559億円伸びたのに対し、相続税だけは△140億円と減っています。2年を通算すると、税収増121,465億円のうち相続税は+2,929億円=2.4%です。
| 年度 | 相続税(決算額・概数) | 一般会計税収 計 | 相続税の構成比 |
|---|---|---|---|
| 令和5年度 | 35,663億円 | 720,761億円 | 4.95% |
| 令和6年度 | 35,523億円 | 752,321億円 | 4.72% |
| 令和7年度 | 38,593億円 | 842,226億円 | 4.58% |
※財務省「租税及び印紙収入、収入額調」の相続税収には、同省の注記のとおり贈与税収が含まれます(同「相続税の税収、課税件数割合及び負担割合の推移」注1)。第1章・第2章の国税庁の申告事績(相続税のみ)とは範囲が異なります。
対象となる人は増え、申告税額も平成27年分以降で最高を更新しているのに、国の税収に占める割合はむしろ縮んでいます。相続税が減ったからではなく、賃金・企業収益・物価に連動する所得税・法人税・消費税の伸びが、それを上回る速さだったためとみられます。
相続財産の金額(相続税額のある申告書ベース)を、基礎控除引下げの初年である平成27年分と令和6年分で比べると、伸び率が最も低いのは土地でした。
| 財産の種類 | 平成27年分 | 令和6年分 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 土地 | 59,400億円 | 74,074億円 | 1.25倍 |
| 家屋 | 8,343億円 | 11,901億円 | 1.43倍 |
| 有価証券 | 23,368億円 | 43,676億円 | 1.87倍 |
| 現金・預貯金等 | 47,996億円 | 85,602億円 | 1.78倍 |
| その他 | 17,256億円 | 30,162億円 | 1.75倍 |
| 合計 | 156,362億円 | 245,415億円 | 1.57倍 |
「相続税は土地を持つ人の話」という受け止め方に対して、実際に伸びているのは有価証券(1.87倍)と現金・預貯金等(1.78倍)で、土地(1.25倍)はそのいずれをも下回ります。課税対象の広がりが、地価だけでは説明できないことを示す数字です。
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SNS・タイトル用(48字):相続税がかかった人が初めて10人に1人を超えた ── なのに国の税収の伸びに占める割合は3.4%
短尺(全角11字):課税割合、初の10%台
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数値のみを引用される場合も、次の点を必ず併記してください。課税割合は「亡くなった方に占める割合」であり資産分布を示すものではないこと/国税庁の申告事績は「年分」、財務省の税収は「年度」ベースで期ズレがあること/令和7年度の決算額は概数であること。
本リリースは公表統計を調査時点で確認し整理したものであり、報道関係者向けの情報提供資料です。個別の税額計算・控除の適用判定・税務相談・申告書作成に関する助言は含みません。これらは税理士の独占業務です(税理士法第2条・第52条)。具体的な税額や手続については税理士または所轄の税務署にご確認ください。
編集部より
調べ始めたきっかけは「相続税の対象が広がっている」という実感でした。課税割合が初めて10%を超えたことは、その実感を裏づけています。ただ、そこで止めずに国の税収の側から同じ相続税を見ると、話がひっくり返りました。
令和7年度の税収の伸び8兆9,905億円のうち、相続税は3.4%。前年に至っては減っています。対象は広がっているのに、財政上の存在感はむしろ縮んでいる ── この2つは矛盾しません。賃金・企業収益・物価に連動する税目の伸びが、それを上回っただけです。
相続税は「増税されている」とも「取りやすいところから取っている」とも語られがちですが、公表されている数字が示しているのはそのどちらとも違う姿でした。個別の税額や対策の要否については、本リリースは一切触れていません。それは税理士の領域です。
IKIGAI TOWN 編集長/塩飽 哲生