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スペシャリスト・ドクターズ株式会社

最低賃金の「引き上げ額」の順位は、その年度に実際に増える賃金の順位と一致しない

── 発効日が県で約6か月ずれるため。引き上げ額と年度内に効く月数の相関は-0.698

地域別最低賃金は毎年10月から順次発効しますが、発効日は都道府県ごとに違います。厚生労働省「令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧」によると、発効日は2025年10月1日(栃木)から2026年3月31日(秋田)まで約6か月ずれていました。週20時間(月86.7時間)で計算すると、その年度内に実際に増える賃金は鳥取の37,960円から群馬の6,760円まで5.6倍の開きがあり、引き上げ額の順位と一致したのは47県中1県だけでした。

図1:引き上げ額が大きい県ほど、発効が遅い

厚生労働省「令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧」より編集部作成

引き上げ額の多い5県と少ない5県について、引き上げ額と年度内に実際に増える賃金を並べた横棒グラフ。引き上げ額が大きい県ほど発効が遅く、年度内に増える賃金は小さい。

本リリースのポイント

  1. 発効日は県ごとに約6か月ずれる。令和7年度の地域別最低賃金の発効日は、最も早い栃木が2025年10月1日、最も遅い秋田が2026年3月31日。発効月の内訳は2025年10月20県、2025年11月13県、2025年12月8県、2026年1月4県、2026年3月2県。
  2. 引き上げ額が大きい県ほど、発効が遅い。引き上げ額と、その年度内に新しい最低賃金が効く月数の相関は-0.698。
  3. 2つの順位はほとんど一致しない。引き上げ額の順位と、年度内に実際に増える賃金の順位が一致したのは47県中1県だけ。
  4. 週20時間で計算すると5.6倍差。年度内に実際に増える賃金は、最も多い鳥取が37,960円(+73円×6か月)、最も少ない群馬が6,760円(+78円×1か月)で、差は31,200円。
  5. 秋田と東京で逆転する。秋田は引き上げ額80円で全国3位だが、発効が2026年3月31日のため年度内は6,933円。東京は引き上げ額63円で43位だが、発効が2025年10月3日のため32,760円と、東京が秋田の4.7倍になる。

何を計算したか

地域別最低賃金は、中央最低賃金審議会が示す目安を参考に、各都道府県の地方最低賃金審議会が審議して決まります。金額だけでなく発効日も都道府県ごとに決まるため、同じ年度の改定でも実際に適用が始まる時期は揃いません。

そこで、公表されている引き上げ額と発効日から、次の式でその年度内に実際に増える賃金を計算しました。追加のデータは使っていません。

編集部の計算式

年度内に実際に増える賃金 = 引き上げ額 × 月の労働時間 × 発効から年度末までの月数

月の労働時間は、週20時間 × 52週 ÷ 12か月 = 86.6667時間としました。年度末は2026年3月31日です。

週20時間は、計算を成り立たせるための仮定です

実際の労働時間は人によって違います。この数字は「全員がこの額だけ増える」という意味ではなく、同じ働き方をした場合に県によって差がどれだけ出るかを比べるためのものです。時間数を変えれば金額は比例して変わりますが、県ごとの倍率は変わりません。

年度内に実際に増える賃金

年度内に実際に増える賃金 上位5県(週20時間で計算)
都道府県引き上げ額引き上げ額の順位発効日年度内に効く月数年度内に増える賃金
鳥取+73円12位2025年10月4日6か月37,960円
石川+70円18位2025年10月8日6か月36,400円
福井+69円19位2025年10月8日6か月35,880円
茨城+69円20位2025年10月12日6か月35,880円
香川+66円22位2025年10月18日6か月34,320円
年度内に実際に増える賃金 下位5県(週20時間で計算)
都道府県引き上げ額引き上げ額の順位発効日年度内に効く月数年度内に増える賃金
大分+81円2位2026年1月1日3か月21,060円
福島+78円5位2026年1月1日3か月20,280円
徳島+66円21位2026年1月1日3か月17,160円
秋田+80円3位2026年3月31日1か月6,933円
群馬+78円6位2026年3月1日1か月6,760円

出典:厚生労働省「令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧」。引き上げ額と発効日は公表値。年度内に効く月数と増える賃金は編集部の計算。

図2:同じ年度の改定でも、発効日は約6か月ずれる

厚生労働省「令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧」より編集部作成

令和7年度の地域別最低賃金の発効月ごとの都道府県数を示した棒グラフ。2025年10月が20県で最も多く、2026年3月は2県。

令和8年度も、これから順次発効する

中央最低賃金審議会は2026年7月28日、令和8年度の目安について答申しました。ただし答申本体には、次のように書かれています。

中央最低賃金審議会「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」2026年7月28日

令和8年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。

金額の目安は、答申に添えられた公益委員見解に示されています。Aランク(6都府県)54円、Bランク(28道府県)56円、Cランク(13県)56円で、Aランクは埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪です。厚生労働省は、目安どおりに改定された場合の全国加重平均を1,176円と示しています(令和7年度は1,121円)。

実際の金額と発効日は、これから各都道府県の地方最低賃金審議会の審議を経て決まります。令和7年度と同じように発効日がずれれば、令和8年度も「引き上げ額の順位」と「その年度に実際に増える賃金の順位」は一致しません。

この数字で言えないこと

発効が遅い県が「損をしている」という話ではありません

改定額そのものは県によって決められた額であり、発効の翌年度以降は12か月フルに効きます。ここで見ているのは、その年度に限った効き方の違いです。年度をまたいで見れば差は縮みます。

また、発効日が遅い理由を本リリースは説明していません。発効日は各都道府県の地方最低賃金審議会の審議を経て決まるもので、参照した資料に個別の理由は書かれていないためです。

最低賃金の改定は、最低賃金で働く人だけでなくその近くの賃金にも影響しますが、その波及がどれだけの人に及ぶかは、この資料からは分かりません

編集部コメント

この記事で新しく計算したのは、掛け算と足し算だけです。引き上げ額も発効日も、厚生労働省が一覧で公表しているものをそのまま使っています。それでも並べてみると、報道でよく見る「引き上げ額ランキング」は、その年度に手元に入る金額の順位とは別物だと分かります。一致したのは47県中1県でした。

これは制度の欠陥という話ではありません。発効日が県ごとに決まるのは、地域の実情に応じて審議する仕組みだからです。ただ、家計の側から見ると、「今年いくら増えるか」を知るには金額だけでなく発効日を見る必要がある、ということになります。

私たちがFP相談の現場で受ける質問は、たいてい「制度がどうなったか」ではなく「自分の場合はいくらか」です。最低賃金の改定も同じで、時給がいくら上がるかより、いつから上がって年間でいくらになるかのほうが、家計の計画には効きます。お住まいの都道府県の発効日は、各都道府県労働局が公表しています。(IKIGAI TOWN 編集長 

調査概要

分析主体
IKIGAI TOWN 編集部(スペシャリスト・ドクターズ株式会社)
調査テーマ
地域別最低賃金の発効日の違いが、その年度に実際に増える賃金に与える差
出典
厚生労働省「令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧」/中央最低賃金審議会「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」2026年7月28日および同 公益委員見解
編集部の計算
公表値の掛け算と足し算のみ。推計は行っていない。年度内に効く月数は発効日から2026年3月31日まで。月の労働時間は週20時間×52週÷12か月=86.6667時間
検算
47都道府県すべてについて、引き上げ額=改定後−改定前、引き上げ率=引き上げ額÷改定前(公表の小数1位と±0.05以内)が成り立つことを機械的に確認した。引用は出典PDFの抽出テキストと機械照合している
確認日
2026年8月31日
初出発表日
2026年8月31日(https://ikigai.town/ja/press/2026-08-31/)

ご利用にあたっての注意

本リリースは情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘・推奨を目的としたものではありません。週20時間(月86.6667時間)は計算のための仮定であり、実際の労働時間は人によって異なります。年度内に増える賃金は、発効日から2026年3月31日までの月数で計算した概算です。改定額そのものは翌年度以降12か月フルに適用されます。発効日が遅い理由は各都道府県の地方最低賃金審議会の審議によるもので、本リリースは説明していません。令和8年度の各都道府県の金額と発効日は、本リリース作成時点では確定していません。最低賃金の適用や個別の労働条件については、各都道府県労働局にご確認ください。