── 分母は「納付対象月数」か「人数」か。分子は「未納の月」か「24か月すべて未納の人」か。取り方で14.8%にも1.0%にもなる。
厚生労働省は2026年8月28日、国民年金保険料の月次納付率を公表しました。最終的な納付率にあたる3年経過納付率は85.2%。この数字はしばしば「15%が年金を払っていない」と読まれますが、納付率の分母は「納付対象月数」で、全額免除・猶予を受けている方(令和7年度末で595万人)は最初から分母に入っていません。人数で見ると、未納者は67万人(24か月すべてが未納の方)。公的年金加入者6,759万人に対して1.0%です。
厚生労働省の公表値より編集部作成。①は月数の割合、②③は人数の割合で、単位が異なります。
厚生労働省は2026年8月28日、「国民年金保険料の月次納付率(令和8年6月末現在)」を公表しました。各月の保険料が1年後・2年後・3年後にどれだけ納められたかを示すもので、同省は3年経過納付率が最終的な納付状況を表す指標としています。
| 指標 | 対象 | 納付月数 | 納付対象月数 | 納付率 |
|---|---|---|---|---|
| 3年経過(最終) | 令和5年6月分保険料 | 629万月 | 739万月 | 85.2% |
| 2年経過 | 令和6年6月分保険料 | 630万月 | 734万月 | 85.8% |
| 1年経過 | 令和7年6月分保険料 | 605万月 | 724万月 | 83.5% |
出典:厚生労働省「国民年金保険料の月次納付率(令和8年6月末現在)」。単位が「万月」であることに注目してください。納付率は人数ではなく、月数の割合として算出されています。なお同資料は「数値は、それぞれ四捨五入しているため、下一桁の計算が合わない場合がある。」と注記しており、納付月数÷納付対象月数は公表値と下一桁がずれる場合があります(例:629÷739=85.1)。
納付率の分母は納付対象月数です。ここには、保険料の全額免除や納付猶予を受けている期間は含まれません。所得が一定以下の方や学生納付特例を利用している方は、法律上、その期間の保険料を納める必要がないためです。
厚生労働省年金局「令和7年度の国民年金の加入・保険料納付状況」(2026年7月)によれば、令和7年度末の国民年金第1号被保険者1,357万人の内訳は次のとおりです。
| 区分 | 人数 | 構成比 | 納付率の分母に入るか |
|---|---|---|---|
| 納付者等 | 695万人 | 51.2% | 入る |
| 全額免除・猶予者 | 595万人 | 43.8% | 入らない |
| 未納者 | 67万人 | 4.9% | 入る(納めていない側) |
| 合計(第1号被保険者) | 1,357万人 | 100% | ― |
出典:厚生労働省年金局「令和7年度の国民年金の加入・保険料納付状況」。任意加入被保険者を含みます。四捨五入のため合計が一致しない場合があります。未納者の定義は同資料の注記のとおり「未納者とは、国民年金第1号被保険者であって 24 か月(令和6年4月~令和8年3月)の保険料が未納となっている者。」
※ 同資料の表紙にある「最終納付率85.6%」は令和5年度分保険料についての年度単位の指標で、本リリースが扱う85.2%(令和5年6月分保険料の3年経過納付率・令和8年6月末現在)とは集計単位も基準時点も異なります。
全額免除・猶予を受けた期間は、年金を受け取るために必要な期間(受給資格期間)に算入されます。ただし受け取る年金額は、保険料を納めた場合より少なくなります(追納の制度があります)。一方、未納の期間は受給資格期間にも算入されません。同じ「納めていない」でも、制度上の扱いは大きく異なります。ご自身の記録は、ねんきん定期便または日本年金機構でご確認ください。
同じ資料には、公的年金全体の数字も示されています。
厚生労働省年金局「令和7年度の国民年金の加入・保険料納付状況」Ⅰ 令和7年度の被保険者の状況
国民年金第1号被保険者数(任意加入被保険者数を含む。)は、令和7年度末で 1,357万人と、前年度末と比べ 11 万人減少している。
令和7年度末の公的年金加入者数は 6,759万人となっている。このうち、未納者数は 67万人となっている。
※ 同資料の図1・表1では 6,759万人 に括弧が付されており、「第2〜4号厚生年金被保険者数を令和6年度末の実績とした場合の暫定値」と注記されています。
公的年金加入者6,759万人には、厚生年金に加入する会社員・公務員(第2〜4号被保険者)と、その被扶養配偶者(第3号被保険者)が含まれます。第2〜4号被保険者は給与天引きで、第3号被保険者は配偶者が加入する厚生年金制度が一括して負担するため個別の納付がありません。結果として国民年金第1号被保険者は全加入者の約20%にとどまります。
したがって、未納者67万人が占める割合は、第1号被保険者で見れば4.9%、公的年金加入者全体で見れば1.0%となります。
「未納者67万人」の定義は、資料の注記で次のように限定されています。
未納者とは、国民年金第1号被保険者であって 24 か月(令和6年4月~令和8年3月)の保険料が未納となっている者。
24か月すべてが未納の方だけが、この67万人に数えられます。1か月でも納めた方(部分的な未納)は含まれません。一方、納付率の14.8%は「未納の月」の割合なので、部分的な未納もすべて拾います。
つまり14.8%と1.0%の差は、分母の違いと、分子の定義の違いの両方から生まれています。どちらか一方だけで説明できる差ではありません。
3年経過納付率を都道府県別に見ると、最高は島根の92.7%、最低は大阪の80.2%で、12.5ポイントの幅があります。
公表資料の「前年度からの伸び」列は、同じ保険料月を1年後に測り直した増分です。前年の納付率と比べたものではありません。同資料の注記は次のとおりです。
「令和5年6月分保険料の3年経過納付率」及び「令和6年6月分保険料の2年経過納付率」の前年度からの伸びは、それぞれ「令和5年6月分保険料の2年経過納付率」及び「令和6年6月分保険料の1年経過納付率」と比較したものである。
つまり全国の「+0.3ポイント」は、令和5年6月分保険料の納付率が2年経過時点から3年経過時点までに追加で納付された分です。「納付率が前年より0.3ポイント改善した」という意味ではありません。同じく2年経過の「+3.1ポイント」も、令和6年6月分保険料が1年経過時点から2年経過時点までに積み上がった分です。
この基準で見ると、3年目に数値が伸びなかったのは東京(-0.2ポイント)だけです。これも「東京だけ納付率が悪化した」という意味ではなく、2年経過時点の値から3年経過時点の値がわずかに下がったことを示しています。
厚生労働省「国民年金保険料の月次納付率(令和8年6月末現在)」都道府県別納付状況より編集部作成
| 順位 | 都道府県 | 3年経過納付率 | 前年度からの伸び |
|---|---|---|---|
| 上位1 | 島根 | 92.7% | +0.3pt |
| 上位2 | 新潟 | 92.6% | +0.2pt |
| 上位3 | 富山 | 92.2% | +0.2pt |
| 上位4 | 山形 | 91.5% | +0.3pt |
| 上位5 | 岩手 | 91.4% | +0.5pt |
| 全国 85.2%(3年目の伸び +0.3pt) | |||
| 下位5 | 大阪 | 80.2% | +0.5pt |
| 下位4 | 東京 | 82.0% | -0.2pt |
| 下位3 | 福岡 | 82.6% | +0.3pt |
| 下位2 | 埼玉 | 83.0% | +0.3pt |
| 下位1 | 茨城 | 83.3% | +0.4pt |
出典:厚生労働省「国民年金保険料の月次納付率(令和8年6月末現在)」。都道府県別の数値も納付対象月数を分母とする月数ベースです。「伸び」は同じ保険料月を1年後に測り直した増分であり、前年の納付率との比較ではありません。
| 分析主体 | IKIGAI TOWN 編集部(スペシャリスト・ドクターズ株式会社) |
|---|---|
| 調査テーマ | 国民年金保険料の納付率と、未納者数の割合の関係(分母の違いによる見え方) |
| 主な出典 | 厚生労働省「国民年金保険料の月次納付率(令和8年6月末現在)」(2026年8月28日公表) |
| 人数データ | 厚生労働省年金局「令和7年度の国民年金の加入・保険料納付状況」(2026年7月) |
| 編集部の計算 | 公表された人数どうしの割り算のみ(67÷1,357、67÷6,759)。推計は行っていない |
| 検算 | 公表の納付月数÷納付対象月数が、四捨五入の範囲で公表の納付率と整合すること(出典資料の注記のとおり下一桁はずれる)、第1号被保険者の内訳(未納67+免除猶予595+納付者等695)が合計と整合することを機械的に確認した。引用は出典PDFの抽出テキストと機械照合している |
| 確認日 |
数字が間違っているのではなく、分母が共有されていない
この記事で扱った数字は、どれも厚生労働省が公表しているものです。新しく計算したのは割り算だけで、推計は一つもありません。それでも並べてみると、同じ「未納」が14.8%にも1.0%にもなります。
どれかが間違っているわけではありません。納付率は「納付義務がどれだけ果たされているか」を見る指標で、義務のない免除・猶予期間を分母から外すのは、指標の設計として筋が通っています。問題は、その分母が数字と一緒に伝わらないことです。
私たちがFP相談の現場で見てきたのは、この混乱が個人の判断を歪めることでした。「みんな払っていないなら」と納付を止めてしまう方がいます。しかし未納の期間は、受給資格期間に算入されません。免除や猶予なら算入されます。払えないときに取るべき行動は「止める」ではなく「免除・猶予を申請する」です。
とくに見落とされやすいのが保障の側です。障害年金や遺族年金には、それぞれ保険料の納付要件があります。未納が続くと、老後の受取額だけでなく、働けなくなったとき・万一のときの公的な備えにも影響します。その分をどう埋めるかは、世帯の状況によって答えが変わります。
IKIGAI TOWN 編集長 塩飽哲生