補助金と助成金の違い【2026】
どっちを使うべきかの判断と併給ルール
「補助金」と「助成金」は名前は似ているが、原資・採択方式・対象が異なる別物。経産省系(補助金)と厚労省系(助成金)の使い分け、併給可否、税務上の取扱いまで実務目線で整理します。
目次(13セクション)
補助金と助成金の定義 — そもそも何が違うのか
「補助金」と「助成金」はどちらも国や自治体から事業者に支給されるお金ですが、法律上の定義や性格が異なります。
補助金とは
補助金は、国や自治体が特定の政策目標を達成するために、事業者の取り組みに対して経費の一部を支援する制度です。主に経済産業省・中小企業庁が所管し、原資は国の一般会計(税金)です。公募制で審査があり、申請しても採択されない場合があります。
助成金とは
助成金は、雇用の安定や人材育成など労働政策の目的で、要件を満たした事業者に支給される制度です。主に厚生労働省・都道府県労働局が所管し、原資は雇用保険料です。要件を満たせば原則として支給されるため、補助金に比べて受給の確実性が高い点が特徴です。
ポイント
「補助金=審査に通る必要がある」「助成金=要件を満たせばもらえる」。この違いを押さえるだけで、自社がどちらを優先して申請すべきか判断しやすくなります。
5つの違い比較表 — 原資・所管・採択・対象・返済
補助金と助成金の主な違いを5つの軸で整理します。
| 比較軸 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| ①原資 | 税金(一般会計・補正予算) | 雇用保険料 |
| ②所管省庁 | 経産省・中小企業庁・自治体 | 厚労省・都道府県労働局 |
| ③採択方式 | 公募・審査制(落選あり) | 要件適合制(要件を満たせば原則支給) |
| ④主な対象 | 設備投資・販路開拓・DX・研究開発 | 雇用維持・人材育成・労働環境改善 |
| ⑤返済義務 | 原則なし(収益納付の規定あり) | 原則なし |
どちらも融資と異なり返済不要ですが、補助金には「収益納付」という仕組みがあり、補助事業で大きな利益が出た場合に一部返納を求められることがあります。
補助金の代表例 — ものづくり・持続化・IT導入・事業再構築
中小企業・小規模事業者が活用できる主な補助金を紹介します。
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
革新的な製品・サービス開発や、生産プロセスの改善に必要な設備投資を支援します。補助上限は一般型で最大1,250万円(従業員規模による)、補助率は1/2〜2/3です。
小規模事業者持続化補助金
従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の小規模事業者が対象。販路開拓に要する経費(チラシ作成・Web広告・店舗改装など)を支援します。補助上限は通常枠で50万円、特別枠で最大200万円です。
IT導入補助金
中小企業のITツール(会計ソフト・受発注システム・ECサイト構築など)の導入費用を支援します。通常枠は補助額5万〜450万円、インボイス枠はレジ・決済端末も対象です。
事業再構築補助金
新分野展開・事業転換・業種転換など、思い切った事業再構築に取り組む中小企業を支援する大型補助金です。補助上限は最大1億円(成長枠)。2024年度以降は公募が縮小されていますが、後継制度への移行が進んでいます。
助成金の代表例 — キャリアアップ・業務改善・両立支援
雇用保険に加入している事業主であれば申請できる主な助成金を紹介します。
キャリアアップ助成金
非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に取り組む事業主を支援します。正社員化コースでは、有期契約社員を正社員に転換した場合に1人あたり最大80万円(中小企業の場合)が支給されます。
業務改善助成金
事業場内の最低賃金を引き上げ、生産性向上のための設備投資を行った事業主に支給されます。引き上げ額と対象人数に応じて最大600万円が支給されます。
両立支援等助成金
育児休業や介護休業の取得促進、復帰支援に取り組む事業主を支援します。出生時両立支援コース(男性の育休取得促進)では、1人目の取得で最大20万円が支給されます。
人材開発支援助成金
従業員のスキルアップのための職業訓練にかかる費用を助成します。人材育成支援コースでは、Off-JT訓練の経費の最大75%(中小企業)と訓練中の賃金が助成されます。
給付金・交付金との違い — 4つの制度を整理
「補助金」「助成金」に加えて「給付金」「交付金」という似た用語もあります。それぞれの違いを整理します。
| 名称 | 性格 | 審査 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 補助金 | 事業の経費を一部負担 | 公募・審査あり | ものづくり補助金、IT導入補助金 |
| 助成金 | 雇用・労働関連の政策支援 | 要件適合で支給 | キャリアアップ助成金、業務改善助成金 |
| 給付金 | 個人・事業者への直接支給 | 要件確認のみ | 持続化給付金、住民税非課税世帯給付金 |
| 交付金 | 自治体への財源移転 | 配分基準による | 地方創生臨時交付金、デジタル田園都市交付金 |
事業者が直接申請できるのは主に補助金・助成金・給付金の3つです。交付金は自治体を通じて間接的に事業者に届くケースが多く、自治体の独自制度として募集されます。
申請の流れ(補助金) — 公募から実績報告まで
補助金は「先に自己負担で事業を行い、後から精算払い」が基本です。流れを6ステップで整理します。
- 公募情報の確認 — jGrants・ミラサポplus・各省庁サイトで公募要領を確認
- gBizIDの取得 — 電子申請に必要な法人共通ID。取得に2〜3週間かかるため早めに準備
- 事業計画書の作成 — 「なぜ必要か」「どう成果を出すか」を定量的に記述。ここが採否を分ける
- 申請・審査 — 締切までに電子申請。書面審査・面接審査(制度による)を経て採択通知
- 交付申請・事業実施 — 採択後に正式な交付申請。交付決定後に事業を実施し、経費を支出
- 実績報告・精算払い — 事業完了後に実績報告書・経費証拠書類を提出。検査を経て補助金が振り込まれる
注意
交付決定前に発注・契約した経費は補助対象外になります。採択通知と交付決定は別物なので、交付決定通知を受け取ってから発注してください。
申請の流れ(助成金) — 計画届出から支給決定まで
助成金は補助金と異なり、「先に計画を届け出て、取り組みを実施した後に申請」する流れです。
- 制度の確認 — 厚労省サイト・労働局で最新の支給要件を確認
- 計画書の届出 — 取り組みを始める前に、管轄の労働局またはハローワークに計画書を提出
- 取り組みの実施 — 計画どおりに正社員化・賃金引き上げ・研修などを実施
- 支給申請 — 取り組み完了後、支給申請期間内に申請書と証拠書類を提出
- 審査・支給決定 — 労働局が書類を審査し、要件を満たしていれば支給決定・振込
注意
助成金も計画届出の前に取り組みを開始すると対象外になります。また、支給申請には期限があり、期限を過ぎると受給できません。就業規則の整備や賃金台帳の管理など、日頃の労務管理が申請のスムーズさを左右します。
採択率と審査のポイント
補助金と助成金では「受給できる確率」に大きな差があります。
補助金の採択率
主要な補助金の採択率は制度・回次によって異なりますが、おおむね以下の水準です。
| 補助金名 | 採択率の目安 |
|---|---|
| ものづくり補助金 | 40〜60%(回次による変動大) |
| 小規模事業者持続化補助金 | 50〜70% |
| IT導入補助金 | 60〜80%(比較的高め) |
| 事業再構築補助金 | 30〜50%(初期は高く、後期は低下傾向) |
審査で重視されるポイント
- 革新性 — 自社にとって新しい取り組みであること(業界初である必要はない)
- 実現可能性 — 計画が絵に描いた餅でなく、具体的に実行できること
- 事業効果 — 売上・利益・生産性にどう貢献するか、数値で説明できること
- 政策との合致 — デジタル化・グリーン・賃上げなど、国の重点政策との関連
助成金の「採択率」
助成金は審査制ではないため「採択率」という概念はありません。要件を満たし、書類に不備がなければ原則支給されます。ただし、予算上限に達した場合は早期に受付終了するため、公募開始後の早期申請が重要です。
経理処理・税務上の取扱い
補助金・助成金を受給した場合の経理処理と税務上の注意点を整理します。
仕訳と勘定科目
補助金・助成金は原則として「雑収入」(営業外収益)として計上します。受給が確定した事業年度の益金に算入するため、交付決定通知書の日付が属する事業年度に計上してください。
法人税・所得税の課税
補助金・助成金は課税対象です。法人であれば法人税、個人事業主であれば所得税がかかります。受給額がそのまま手元に残るわけではない点に注意が必要です。
圧縮記帳の特例
固定資産の取得に充てた補助金については、圧縮記帳が認められています。取得した資産の帳簿価額から補助金相当額を減額することで、受給年度の課税を繰り延べることができます。ものづくり補助金やIT導入補助金で設備を購入した場合に活用できます。
消費税の取扱い
補助金・助成金自体は消費税の不課税取引です。ただし、補助金で購入した設備の消費税を仕入税額控除している場合、補助金の返還が求められることがあります(消費税の減額返還)。免税事業者・簡易課税事業者は対象外です。
併用(併給)の可否とルール
補助金と助成金は、一定の条件下で併用(併給)が可能です。ただし、ルールを理解していないと不正受給になるリスクがあります。
併用できるケース
- 経費の対象が異なる場合 — ものづくり補助金(設備投資)+キャリアアップ助成金(人件費)のように、補助対象の経費区分が重ならなければ併用可能
- 省庁が異なる制度間 — 経産省系の補助金と厚労省系の助成金は、同一事業でも経費が重複しなければ原則併用可能
- 国と自治体の制度 — 国の補助金と都道府県・市区町村の独自助成金は、制度ごとに併用可否が異なるため個別確認が必要
併用できないケース
- 同一経費への重複受給 — 同じ設備・同じ人件費に複数の制度から受給するのは不正受給
- 制度要綱で併用禁止の場合 — 公募要領に「他の補助金との併用不可」と明記されている場合がある
- 補填超過 — 受給額の合計が実際の経費を上回る場合は返還義務が生じる
実務のヒント
併用を検討する場合は、申請前に各制度の事務局に「この組み合わせで併給可能か」を書面で確認しておくと安全です。口頭回答だけでは後日問題になることがあります。
専門家の活用 — 社労士・中小企業診断士・税理士
補助金・助成金の申請を専門家に依頼するかどうかは、制度の種類と自社のリソースで判断します。
社会保険労務士(社労士)
助成金の申請代行は社労士の独占業務です。キャリアアップ助成金や両立支援助成金など、厚労省系の助成金を申請する場合は社労士に依頼するのが確実です。就業規則の整備や労務管理のアドバイスも同時に受けられます。
- 報酬の目安 — 受給額の10〜20%(成功報酬型が主流)
- メリット — 書類不備による不支給を防げる。制度改正にも対応
中小企業診断士
補助金の事業計画書作成を支援する専門家です。ものづくり補助金や事業再構築補助金など、採択率が低い補助金では、診断士のサポートで採択率が向上するケースが多く報告されています。
- 報酬の目安 — 着手金5〜15万円+成功報酬(補助額の5〜15%)
- メリット — 事業計画の論理構成・数値計画の精度が上がる
税理士
受給後の経理処理(圧縮記帳・益金計上時期)や消費税の減額返還の判断は税理士の領域です。補助金で高額な設備を購入する場合は、事前に税理士と税額シミュレーションを行っておくと、受給後の資金繰りに困りません。
商工会議所・商工会の経営指導員
小規模事業者持続化補助金の申請には、商工会議所・商工会の「事業支援計画書」(様式4)が必要です。経営指導員に相談すれば、事業計画のブラッシュアップを無料で受けられます。補助金申請が初めての場合は、まずここから相談を始めるのがおすすめです。
情報源と探し方
補助金・助成金の情報を効率的に探すための主要な情報源を紹介します。
補助金の情報源
- ミラサポplus — 中小企業庁が運営する制度検索ポータル。業種・地域・目的で絞り込み検索が可能
- jGrants(Jグランツ) — 補助金の電子申請システム。公募中の補助金を一覧で確認・申請できる
- 中小企業庁「補助金等公募案内」 — 最新の公募情報を掲載。締切日もここで確認
- 各自治体の産業振興課サイト — 都道府県・市区町村の独自補助金は自治体サイトで公募
助成金の情報源
- 厚労省「事業主の方のための雇用関係助成金」 — 全助成金の概要・要件・申請様式を掲載
- 都道府県労働局 — 地域別の助成金窓口。申請前の事前相談も受付
- ハローワーク — 雇用関連の助成金は最寄りのハローワークでも相談可能
横断検索ツール
- 補助金ポータル — 民間運営。補助金・助成金を横断検索できる。メール通知機能あり
- J-Net21(中小機構) — 支援情報ヘッドラインで最新の公募・締切をチェック
注意
「○○補助金が貰えます」と訪問営業してくる怪しい代理店は、報酬20〜30%+着手金を取るケースが多いです。商工会議所・税理士・社労士という信頼できる窓口から始めるのが安全です。
よくある質問(FAQ)
- 個人事業主でも補助金・助成金は申請できますか?
- はい、多くの制度で個人事業主も対象です。小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金は個人事業主でも申請できます。助成金は雇用保険の適用事業所であることが要件になるため、従業員を雇用している場合に申請可能です。
- 補助金と助成金は同時に申請できますか?
- 経費の対象が重複しなければ、補助金と助成金の同時申請・併給は可能です。たとえば、ものづくり補助金で設備を導入し、キャリアアップ助成金で人材を正社員化するといった組み合わせは認められています。
- 不採択だった補助金に再チャレンジできますか?
- はい。補助金は公募回ごとに独立して審査されるため、不採択でも次回以降に再申請できます。審査員のコメント(事務局に問い合わせ可能な場合あり)を参考に事業計画書を改善すると、採択率が上がります。
- 補助金・助成金をもらうと税金はかかりますか?
- はい。補助金・助成金は法人税・所得税の課税対象(益金・雑収入)です。ただし、設備取得に充てた補助金は圧縮記帳により課税を繰り延べることができます。消費税については不課税取引のため、補助金額自体に消費税はかかりません。
- 申請にかかる期間はどのくらいですか?
- 補助金は公募開始から採択まで2〜3か月、事業実施・実績報告・入金まで含めると半年〜1年程度かかります。助成金は計画届出から支給まで6か月〜1年が目安です。どちらもgBizID取得や就業規則整備など、事前準備に時間がかかるため余裕をもって着手してください。
- 自分で申請するのと専門家に頼むのではどちらがよいですか?
- 助成金は要件を満たせば支給されるため、社労士に依頼すると書類不備のリスクを減らせます。補助金は事業計画書の質が採否を左右するため、初めての申請や大型補助金では中小企業診断士の支援を受けるのが有効です。小規模事業者持続化補助金のように比較的簡易な制度は、商工会議所の無料支援を活用して自力で申請する事業者も多くいます。
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- 出典: 中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)公式サイト — 小規模企業共済・倒産防止共済の所管
- 出典: 国税庁 公式サイト — 所得税・法人税・インボイス・退職所得控除
- 出典: 日本政策金融公庫 公式サイト — 創業融資・事業承継融資
- 出典: 中小企業庁 公式サイト — 事業承継税制・補助金
- 出典: 勤労者退職金共済機構 公式サイト — 中退共・建退共
最終確認日:2026年4月25日
※本記事は2026年4月時点の一般的な情報であり、個別の税務・経営・法務相談に代わるものではありません。各制度の適用要件・税額は個人の状況により異なります。実行にあたっては、必ず公式情報および税理士・社労士・FP・弁護士など専門家にご相談ください。本記事の情報により生じたいかなる損害についても、当サイトでは責任を負いかねます。
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