受給戦略

年金 繰下げ・繰上げ
損益分岐は何歳?比較計算機【2026】

公開日: 更新日: 最終確認:2026-04-19 執筆:塩飽哲生(IKIGAI TOWN 編集長)

年金の繰下げは月+0.7%(最大75歳で+84%)、繰上げは月-0.4%(最大60歳で-24%)。損益分岐は繰下げで約12年、繰上げで約20年。ただし税金・社会保険料・加給年金・健康状態など、累積額だけでは判断できない要素があります。本記事では比較計算機と「後悔しやすいパターン」で、あなたに合う受給開始年齢を整理します。

結論(3行まとめ)

  • 70歳まで繰下げ → 累積で65歳開始を上回るのは81〜82歳
  • 60歳に繰上げ → 累積で65歳開始に追い越されるのは80〜81歳
  • 損益分岐の年齢は男女の平均寿命(男81歳・女87歳)にほぼ一致。健康状態と配偶者年齢で判断

繰下げ・繰上げ 比較計算機

65歳時点の想定年金額(月額)と受給開始年齢を入力すると、各年齢時点の累積受給額と月額を比較できます。

選択年齢の月額
想定寿命までの累積
65歳開始との差額
65歳開始を上回る年齢

※ 税・社会保険料・物価スライドを考慮しない単純累積比較。繰下げ中の加給年金停止、在職老齢年金による停止も反映していません。

仕組みと基本ルール

項目繰上げ繰下げ
開始可能年齢60〜64歳66〜75歳
月あたり調整率-0.4%(1ヶ月)+0.7%(1ヶ月)
最大調整率-24%(60歳開始)+84%(75歳開始)
変更可能性一度開始したら取り消し不可66歳以降いつでも開始可
加給年金への影響通常通り支給繰下げ中は支給停止・増額なし
障害年金・遺族年金繰上げ後は障害年金の新規裁定不可など制限遺族年金と併給調整あり

受給開始年齢別の月額と累積額

65歳時点の想定月額を16万円とした場合の比較です。

開始年齢月額年額85歳までの累積90歳までの累積
60歳12.2万円146万円3,650万円4,379万円
65歳(標準)16.0万円192万円3,840万円4,800万円
70歳22.7万円273万円4,089万円5,452万円
75歳29.4万円353万円3,534万円5,301万円

損益分岐年齢

比較損益分岐(概算)補足
60歳 vs 65歳約80歳10ヶ月81歳以上生きるなら65歳受給のほうが累積で上回る
65歳 vs 70歳約81歳10ヶ月82歳以上生きるなら70歳受給のほうが累積で上回る
65歳 vs 75歳約86歳10ヶ月87歳以上生きるなら75歳受給のほうが累積で上回る

男性の平均寿命は81.09歳、女性は87.14歳(厚労省「簡易生命表」令和5年)。男性は70歳繰下げで微妙、女性は70〜75歳繰下げが累積では有利、が目安です。

繰下げの落とし穴4つ

  • ① 加給年金が止まる:繰下げ中は加給年金が支給されず、しかも増額もしない。年齢差5歳の夫婦で配偶者加算最大(年40万)×5年=200万円の損失
  • ② 税・社会保険料が累進で増える:年金が増えると所得税・住民税・国民健康保険料・介護保険料も増える。手取りベースの増加率は表示上の増額率より低い
  • ③ 健康リスク:繰下げ待機中に亡くなると、未支給年金として遺族が5年分しか遡及請求できない
  • ④ 在職老齢年金との組み合わせ:繰下げ待機中も在職老齢年金の停止調整があり、実質増額率が目減りするケースがある

繰上げの落とし穴4つ

  • ① 一生涯減額:60歳で-24%減額した金額が一生続く。長生きすると累積で大きく損する
  • ② 障害年金の新規裁定不可:繰上げ後に病気・事故で障害状態になっても、障害基礎年金を新規で受給できない(併給調整の制約)
  • ③ 寡婦年金の受給不可:繰上げ受給者は寡婦年金の対象外になる
  • ④ 国民年金の任意加入不可:繰上げ後は480月に達していなくても任意加入で増やせない

判断のチェックリスト

繰下げを検討すべき人

✓ 65歳時点で働き続けている/他に収入がある
✓ 健康に自信があり、長寿家系
✓ 配偶者が自身より年上または同年齢
✓ 手取り減よりも将来の生活安定を重視

繰上げを検討すべき人

✓ 60歳以降、働けない・収入源がない
✓ 健康上の不安がある
✓ 60代前半に大きな支出が見込まれる
✓ 他の資産(退職金・iDeCo)で不足分を補えない

あなたの繰下げ・繰上げの最適解は?

健康状態・配偶者年齢・他資産を総合して、受給開始年齢を設計します。

老後資金|同世代10,010名との比較レポート

よくある質問

「年金は60歳からもらった方が賢い」は本当?
80歳前に亡くなる前提なら累積で有利ですが、男性の平均寿命81歳・女性87歳を考えると、大多数にとっては65歳以降の開始のほうが累積で有利です。「60歳から賢い」は健康不安や60代の収入断絶など個別事情がある場合の選択肢です。
繰下げは途中でやめられますか?
はい。66歳以降であればいつでも繰下げ待機を終了して受給開始できます。また、最大5年分を一括で遡って受給することも可能(この場合は繰下げ増額なしで通常額)。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げできますか?
可能です。たとえば基礎年金は65歳から受給、厚生年金は70歳まで繰下げ、という組み合わせもできます。加給年金の有無や税負担を考慮して個別最適化が可能です。
繰下げ中に亡くなったら?
遺族は5年以内の未支給年金を請求可能ですが、繰下げ増額は反映されません(標準の65歳からの金額で計算)。健康不安がある場合はリスクと考えるべきです。
※ 2026年度の制度。実際の手取りは税・社会保険料で変動します。日本年金機構「ねんきんネット」で個別シミュレーション可能。

IKIGAI TOWN 編集長より

塩飽 哲生

塩飽 哲生(しわく てつお)

IKIGAI TOWN 編集長

「繰下げすれば得」はメディアの単純化です。加給年金・税・社会保険料・健康状態の4要素を見ずに決めると、後悔します。必ず総合判断を。

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