── 金融資産500万円未満で38.8%、3,000万円以上で18.1%。全体では3人に1人(33.1%)が誤解。差額ベッド代や自由診療は対象外で、上限額までの自己負担は毎月発生する――40〜59歳30,015人調査
2026年8月から、高額療養費制度の自己負担限度額が全所得区分で引き上げられ、あわせて年単位の上限額(年間上限)が新設されました(厚生労働省)。この改正を受け、ライフプランメディア「IKIGAI TOWN」(運営:スペシャリスト・ドクターズ株式会社)編集部は、40〜59歳30,015人に聞いた制度理解の実態を公開します。「制度があればどのような治療でも全額カバーされる」という誤解は、金融資産500万円未満で38.8%、3,000万円以上では18.1%と、2倍以上の開きがありました。上限額の引き上げによる負担増を貯蓄で受け止めることになる層ほど、制度そのものを誤解しているという構図です。全体でも3人に1人(33.1%)が同じ誤解をしていました。実際には高額療養費は保険診療が対象で、差額ベッド代や自由診療には適用されず、上限額までの自己負担は毎月発生し続けます。その自己負担が続いたとき貯蓄が何か月もつかを試算している人は10.3%(500万円未満5.6%、3,000万円以上27.8%)にとどまります。図表・データは出典明記のうえCC BY 4.0で自由に引用・転載できます。
高額療養費制度は、医療費の自己負担が過重にならないよう、月ごとの自己負担に上限を設ける仕組みです。2026年8月から、この上限額が全所得区分で引き上げられました。同時に、長期療養者への配慮として年間上限が新設され(年間=8月から翌年7月)、多数回該当の限度額は据え置かれています。つまり今回の改正は、短期では負担増、長期療養では軽減されうるという二面性を持ちます。
制度が変わったこの時期に、そもそも制度が何をカバーし、何をカバーしないのかが正しく理解されているかを確認する意義があると考え、調査結果を公開します。本リリースは制度の一般的な解説を目的とした情報提供であり、特定の保険商品の推奨や契約の勧誘を目的とするものではありません。
今回の見直しでは、月額上限の引き上げと年間上限の新設が同時に行われました。主な区分の月額上限は次のとおりです。
| 所得区分(年収の目安) | 現行(〜2026年7月) | 2026年8月〜 | 差 | 年間上限(新設) |
|---|---|---|---|---|
| 約1,160万円〜 | 252,600円+1% | 270,300円+1% | +17,700円 | 1,680,000円 |
| 約770〜1,160万円 | 167,400円+1% | 179,100円+1% | +11,700円 | 1,110,000円 |
| 約370〜770万円 | 80,100円+1% | 85,800円+1% | +5,700円 | 530,000円 |
| 約370万円未満 | 57,600円 | 61,500円 | +3,900円 | 530,000円 |
| 住民税非課税(70歳未満) | 35,400円 | 36,900円 | +1,500円 | 290,000円 |
出典:厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」より編集部作成。多数回該当(年4回目以降)の限度額は据え置き。70歳以上の外来特例は18,000円(年14.4万円)から22,000円(年21.6万円)に見直し。2027年8月からは所得区分がさらに細分化される予定。
年間上限は、月ごとの自己負担が積み上がって年間の上限額に達した後、それ以上の自己負担分が保険者から還付される仕組みです(年間=8月から翌年7月)。長期にわたって療養する場合には、負担が軽くなるケースがあります。
高額療養費制度は保険診療が対象であり、自由診療や差額ベッド代等には適用されません。また適用後も、上限額までの自己負担は毎月発生し続けます。この点を踏まえ、家計の貯蓄でどの程度の期間を維持できるか試算しているかを尋ねました。
40〜59歳・n=30,015
最も多いのは「制度の詳細は知っているが、具体的な耐久期間までは計算していない」52.8%。次いで「制度があればどのような治療でも全額カバーされると思っていた」が33.1%でした。試算済みで十分な予備費を確保しているとした人は10.3%です。
誤解している33.1%と、知ってはいるが計算していない52.8%を合わせると85.9%。上限額が引き上げられた今、自分の家計が実際にどれだけ持ちこたえるかを把握している人は1割程度ということになります。
40〜59歳・n=30,015(資産帯別は金融資産に「わからない/答えたくない」と回答した層を除く)
| 回答 | 全体 | 500万円未満 | 500万〜1,000万円 | 1,000万円以上 | うち3,000万円以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 制度があればどのような治療でも全額カバーされると思っていた | 33.1% | 38.8% | 27.5% | 20.3% | 18.1% |
| 制度の詳細は知っているが、具体的な耐久期間までは計算していない | 52.8% | 51.2% | 61.7% | 57.6% | 52.5% |
| 試算済みであり、十分な予備費を確保している | 10.3% | 5.6% | 9.5% | 20.6% | 27.8% |
| その他 | 3.8% | 4.3% | 1.2% | 1.5% | 1.6% |
誤解の割合は、金融資産500万円未満で38.8%、3,000万円以上で18.1%と2倍以上の開きがあります。逆に試算済みの割合は5.6%対27.8%で、こちらは5倍の開きです。
今回の改正では、住民税非課税区分の引き上げ幅を抑えるなど低所得者への配慮も行われています。それでも、予備費の乏しい層ほど「制度があるから大丈夫」と考えており、上限額が上がったこと自体を織り込めていない可能性があります。
医療費の支出だけでなく、療養中は収入が減ります。会社員が病気で休職した場合の傷病手当金(給与の約2/3)について尋ねたところ、「休職中の税金や社会保険料の負担について、深く考慮していなかった」が38.8%、「給与の2/3がそのまま使える資金になると想定していた」が11.3%でした。手残り額まで含めて家計のシミュレーションを行っている人は10.0%です。
傷病手当金を受給している間も、社会保険料や住民税の負担は続きます。支出が増える一方で、手元に残る収入は想定より少なくなるという二重の圧力がかかりますが、そこまで織り込んでいる人は1割にとどまりました。
高額療養費制度は、日本の医療保険が持つ非常に強力なセーフティネットです。100万円の医療費がかかっても、年収約370〜770万円の人の自己負担は月9万円程度に収まります。この制度があるからこそ、多くの人が高額な治療を受けられています。
ただし今回の調査が示したのは、その強力さが「何もかも無料になる」という理解に置き換わっている層が3人に1人いるということです。実際には、上限額までの自己負担は毎月発生し、差額ベッド代や食事代、通院の交通費、そして減る収入は制度の外側にあります。治療が長引くほど、制度の外側の負担が積み上がっていきます。
2026年8月からの改正は、上限額を引き上げる一方で年間上限を新設しました。短期の入院では負担が増え、長期の療養では軽くなるという方向です。どちらに当たるかは病気次第で、事前には選べません。だからこそ、「制度でいくらまで抑えられ、残りいくらを自分で用意する必要があるのか」を一度数字にしておくことに意味があります。試算している人が10.3%という結果は、その一度がまだ多くの家庭で行われていないことを示しています。
調査名:FP相談モニタープログラム「IKIGAI TOWN」 事前アンケート(医療費と就業不能に関するリスク認識調査)
調査主体:スペシャリスト・ドクターズ株式会社(IKIGAI TOWN 運営)
調査方法:インターネット調査(スクリーニング全数集計)
調査時期:2026年3月期・4月期・5月期の3回分を合算。実施時期は納品データのレコード日時に基づく(2026年3月期=2026年3月23日 19時53分 記録/4月期=2026年4月6日 18時47分 記録/5月期=2026年5月17日 21時25分 記録)。
有効回答:30,015名(40〜59歳・平均50.7歳・男性64.4%)。資産帯別の集計は、金融資産の設問に「わからない/答えたくない」と回答した層(11,132名)を除く。
制度の出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」および「(参考)高額療養費制度の見直しについて」(第209回社会保障審議会医療保険部会 資料)。数値は2026年8月3日時点で確認。
留意点:回答者はFP相談モニターへの参加を検討した、お金・資産形成への関心が高い層が中心で、全国の縮図(国勢調査ベースの代表サンプル)ではありません。40〜59歳限定で全世代の縮図ではありません。設問は制度の説明文を提示したうえで回答を求める形式のため、説明を読んで初めて誤解に気づいた回答者が含まれます。構成比は小数第1位までを表示し、四捨五入のため合計が100%にならない場合があります。
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媒体記事用(40字):高額療養費の上限引き上げ 3人に1人が「全額カバーされる」と誤解
SNS・タイトル用(60字):高額療養費の上限引き上げが今月から ── 3人に1人が「全額カバーされる」と誤解、誤解は資産500万円未満で38.8%
短尺(全角13字):高額療養費 誤解が3割
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編集部より
相談の現場では、「高額療養費があるから医療保険は要らない」という声と、「不安だから手厚く入っている」という声の両方を聞きます。どちらも、制度で足りる部分と足りない部分を数字で確かめないまま、結論だけを先に決めている点では同じです。
必要なのは保険を増やすことでも減らすことでもなく、まず自分の所得区分での上限額を知り、それが何か月続いたら家計が苦しくなるかを一度だけ計算しておくことだと考えています。上限額が変わった今は、その計算をやり直す良い機会です。
IKIGAI TOWN 編集長/塩飽 哲生