退職金の税金はどう違う?
一時金と年金、受け取り方で変わる手取り【2026年版】
勤続30年超の会社員にとって、退職金は生涯でもっとも大きなまとまったお金。しかし、受け取り方の選択(一時金/年金/併用)によって、最終的な手取りが数百万円単位で変わることはあまり知られていません。本記事では、退職金にかかる税金の仕組みをわかりやすく整理し、代表的なケースでの手取り比較までご案内します。
退職金にかかる主な税金
退職金は、受け取り方によって課税区分が異なります。一時金で受け取るか、年金形式で受け取るかで、使える控除の種類と計算方法が変わるという点が最大のポイントです。
① 一時金で受け取る場合:退職所得
一括で受け取る場合は退職所得として扱われます。退職所得は退職所得控除を差し引き、さらに残額を2分の1にしてから税率をかけるという、非常に優遇された計算方式が使われます。勤続年数が長いほど控除額が大きくなり、多くの会社員では退職金の相当部分が非課税・低税率に収まります。
② 年金形式で受け取る場合:雑所得(公的年金等)
退職金を年金形式で受け取ると、毎年の受取額は公的年金等に係る雑所得として課税されます。公的年金等控除の対象になりますが、公的年金と合算して控除枠を計算するため、年金額が大きい方ほど課税される部分が増えやすい傾向があります。
Point
ざっくり言うと、一時金は「大きな退職所得控除 + 1/2課税」という超優遇、年金形式は「毎年の公的年金等控除」という普通の課税。一般論としては、退職所得控除の範囲内なら一時金受取の税負担がかなり軽くなります。
退職所得控除 × 勤続年数 早見表
退職所得控除の計算式は次のとおりです。
- 勤続年数20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
勤続年数は1年未満の端数を切り上げる点にも注意しましょう。以下に、代表的な勤続年数ごとの控除額をまとめました。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 10年 | 400万円 |
| 15年 | 600万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 25年 | 1,150万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 35年 | 1,850万円 |
| 38年 | 2,060万円 |
| 40年 | 2,200万円 |
たとえば勤続38年で退職金2,000万円の方は、退職所得控除2,060万円が丸々使える計算になるため、退職所得は0円=所得税・住民税もほぼかからない、ということになります。
一時金 vs 年金 手取り比較のイメージ
同じ退職金2,000万円を、「一時金で受け取る」ケースと「10年間の年金形式で受け取る」ケースで、ざっくりと比較してみましょう(勤続30年、退職時60歳、他の所得なしを想定した概算)。
| 受け取り方 | 課税方式 | 税負担のイメージ |
|---|---|---|
| 一時金 | 退職所得(退職所得控除 + 1/2課税) | 控除1,500万円 → 退職所得250万円 → 税率適用後は所得税・住民税合わせて数十万円規模 |
| 年金形式 | 毎年の雑所得(公的年金等) | 公的年金と合算して毎年課税。公的年金の受給開始後は控除枠が埋まり、課税対象が広がる |
| 併用 | 一部一時金+一部年金 | 退職所得控除を使い切りつつ、残りを年金化。流動性と税の最適化の折衷案 |
※上記はあくまで概念的な比較イメージです。実際の税額は、他の所得、社会保険料、健康保険料への影響などを含めて詳細に試算する必要があります。
注意
年金形式を選ぶ場合、受取期間中は「所得」としてカウントされるため、国民健康保険料・介護保険料が上がるケースがあります。一時金との比較では、この社会保険料の差まで含めて検討することが大切です。
iDeCo・企業年金との関係
iDeCoや企業年金(DC・DB)も、一時金で受け取る場合は退職所得として扱われます。問題は、退職所得控除の計算が合算されることです。同じ年(もしくは近い年)に会社の退職金とiDeCoを一時金で受け取ると、勤続年数の重複分は一度しかカウントできず、控除枠を最大化できないことがあります。
一方で、受け取りの間隔を一定年数空けると、再度フルに退職所得控除を使える可能性があります(いわゆる「5年ルール」「19年ルール」などと呼ばれる運用上のポイント)。タイミングの調整だけで手取りが数百万円変わることもあるため、事前のシミュレーションを強くおすすめします。
受け取り方を決める前にチェックしたいこと
- 勤続年数と退職所得控除の枠は?(余っているか、使い切るか)
- iDeCo・企業年金の残高と受取予定時期は?
- 退職後の生活費と老後キャッシュフローの見通しは?
- 健康保険・介護保険料への影響は?
- 配偶者の所得・遺族年金など世帯全体の状況は?
これらの情報を整理したうえで、勤務先の人事担当や税理士、FPに相談するのが理想的です。会社から提示される「受取方法の申込書」には期限があるため、退職の1〜2年前から準備を始めることをおすすめします。