源泉所得税とは
給与・賞与・退職金の天引きの仕組み【2026】
源泉所得税は「所得税の前払い」。最終税額は年末調整か確定申告で確定する。
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目次(14セクション)
源泉所得税とは
所得税は本来、1年間の所得が確定してから1回でまとめて納めるものですが、それでは納税者の手元に大金が必要になり、国も年1回しか税収が入らなくなります。そこで、給与・報酬の支払者が支払時に天引きして先に国に納める仕組み――源泉徴収――が採用されています。
この天引き分が源泉所得税。あくまで「概算の前払い」なので、年末調整や確定申告で最終的な所得税額と比較し、足りなければ追加徴収、払いすぎていれば還付されます。
給与明細での位置づけ
給与明細で源泉所得税がどこに出てくるかを見てみましょう。
「所得税」と書かれている6,750円が源泉所得税です。社会保険料を引いたあとの課税対象額と扶養人数から、源泉徴収税額表を使って会社が機械的に算出しています。
給与の源泉所得税の計算
月々の給与に対する源泉所得税は、国税庁が公表する「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」で求めます。計算手順は次の通りです。
- 社会保険料控除後の給与額を計算する(支給合計 − 健康保険・厚生年金・雇用保険)
- 扶養控除等申告書の「扶養親族等の数」を確認する
- 月額表の該当行(課税対象額)と該当列(扶養人数)の交点を読む
扶養人数が1人増えるごとに、月の源泉所得税は数千円ずつ下がります。扶養控除等申告書を提出していない場合は乙欄が適用され、甲欄(提出済み)より高い税額が徴収されます。副業先での給与が乙欄になるのはこのためです。
賞与の源泉所得税
賞与は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。前月の社会保険料控除後の給与額と扶養人数から算出率(0〜45.945%)を決め、これを賞与額(社会保険料控除後)に掛けて源泉所得税額を出します。
例:前月給与の課税対象額30万円・扶養1人・賞与60万円の場合
算出率は2.042%。賞与の社会保険料控除後を約51万円とすると、源泉所得税は約10,410円。
賞与の源泉徴収は「年収の12分の1を基準に年税率を一気に掛ける」形なので、控除が反映しきれず高く感じることがあります。違和感があっても、年末調整で最終的には平準化されるので問題ありません。
退職金の源泉所得税
退職金は分離課税で、他の所得とは別に所得税を計算します。計算式は次の通り。
課税退職所得 =(退職金 − 退職所得控除)× 1/2
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万) |
| 20年超 | 800万 + 70万 ×(勤続年数 − 20) |
勤続30年・退職金2,000万円なら、退職所得控除は800万+70万×10年=1,500万円。課税退職所得は(2,000万 − 1,500万)×1/2 = 250万円。ここに所得税率10%を掛けて252,500円 − 速算控除97,500円=155,000円。復興特別所得税込みで約158,255円の源泉所得税となります。退職所得の受給に関する申告書を会社に提出していれば、この計算が会社側で行われ、確定申告は不要になります(提出漏れの場合は20.42%の高い税率がかかります)。
フリーランス報酬の源泉徴収
フリーランスへの報酬でも、特定の業務(原稿料・講演料・デザイン料・弁護士/税理士報酬など)は支払者が源泉徴収します。
| 報酬額 | 源泉徴収税率 |
|---|---|
| 100万円以下の部分 | 10.21% |
| 100万円超の部分 | 20.42% |
源泉徴収票の読み方
源泉徴収票は、1年間の給与支払いと税金の「精算証明書」です。会社員は毎年1月末までに勤務先から受け取り、確定申告・住宅ローン審査・保育料算定など多くの場面で提出を求められます。主要な記載欄を以下の表で確認しましょう。
| 欄名 | 意味・見方 |
|---|---|
| 支払金額 | 1年間の額面給与合計(通勤手当など非課税分は除く) |
| 給与所得控除後の金額 | 支払金額から給与所得控除を引いた「給与所得」の金額 |
| 所得控除の額の合計額 | 基礎控除・配偶者控除・扶養控除・社会保険料控除・生命保険料控除など合算値 |
| 源泉徴収税額 | 年末調整後の最終的な所得税額(復興特別所得税込み) |
| 社会保険料等の金額 | 健康保険・厚生年金・雇用保険の年間合計 |
| 生命保険料の控除額 | 一般・介護医療・個人年金の各上限額の合計(最大12万円) |
「源泉徴収税額」が0円の場合は、所得控除の合計が課税所得を超えており納税額ゼロを意味します。このとき年末調整で天引き分が全額還付されているはずです。逆に源泉徴収税額が支払金額の10%を超えている場合は、扶養控除等申告書の未提出(乙欄適用)や控除申告漏れの疑いがあります。
住宅ローン控除(2年目以降)は「住宅借入金等特別控除の額」欄に記載されます。この欄に金額があれば、ローン控除が年末調整で反映済みであることを示します。確定申告が不要になる条件の一つです。
源泉徴収票を紛失した場合は会社の経理・人事部門に再発行を依頼してください。退職後は元勤務先に連絡するか、税務署で「源泉徴収票不交付の届出」を行う手段もあります。
年末調整と確定申告の違い
源泉所得税の「精算」には二つのルートがあります。会社員の大多数が使う年末調整と、フリーランス・副業収入者などが行う確定申告です。両者の主な違いは次の通りです。
| 項目 | 年末調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 実施者 | 会社(雇用者) | 納税者本人 |
| 対象期間 | 1月〜12月(その年) | 翌年2月16日〜3月15日 |
| 対応できる控除 | 基礎・配偶者・扶養・社会保険・生命保険・地震保険・住宅ローン(2年目以降)など | 年末調整の全項目+医療費・雑損・寄附金(ふるさと納税)・住宅ローン初年度など |
| 必要書類 | 扶養控除等申告書・保険料控除申告書など(会社から配布) | 確定申告書・源泉徴収票・領収書・医療費明細など |
| 還付タイミング | 12月または1月の給与に上乗せ | 申告から約3週間で口座振込 |
年末調整で対応できない控除(医療費・ふるさと納税ワンストップ漏れ・住宅ローン初年度・雑損控除など)は、翌年の確定申告期間(2月16日〜3月15日)か還付申告(翌年1月1日〜5年間)で申告します。
会社員でも給与収入が2,000万円超・副業収入が20万円超・2か所以上から給与を受ける・医療費控除を申請したい、などの条件に当てはまると確定申告が必要または有利になります。「年末調整で終わり」と思い込んで控除を見落とすケースが非常に多いため、源泉徴収票を受け取ったら一度内容を確認する習慣をつけましょう。
なお、確定申告をe-Taxで行うと還付金の振込が最短3週間程度に短縮されます。マイナンバーカードがあればスマートフォン1台で完結するため、書類を郵送する手間もかかりません。
副業・ダブルワークの源泉徴収
副業や2か所以上でのアルバイト(ダブルワーク)では、源泉徴収の仕組みが主な勤務先と異なります。理解しておかないと、税額の不足や確定申告の漏れが生じます。
所得税法では、扶養控除等申告書を提出できるのは1社のみ(主たる勤務先)と定められています。副業先や2か所目のアルバイト先では申告書を提出できないため、自動的に乙欄が適用されます。乙欄の税率は甲欄より高く設定されており、同じ給与額でも天引き額が多くなります。
| 給与収入(月額課税対象額) | 甲欄(扶養0人) | 乙欄 |
|---|---|---|
| 88,000円未満 | 0円 | 3.063% |
| 88,000〜89,999円 | 130円 | 約2,700円 |
| 200,000〜209,999円 | 4,770円 | 約20,000円超 |
副業収入が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。20万円以下でも住民税申告は必要なため、市区町村への申告を忘れないようにしましょう。確定申告では主な勤務先と副業先の両方の源泉徴収票を合算して最終税額を計算し、乙欄で取られすぎた分が還付、あるいは合算後の税率が上がった分が追加徴収されます。
フリーランス(個人事業主)として事業所得がある場合は「報酬・料金等の源泉徴収」(10.21%ルール)も同時に適用されるため、給与系と事業系の両方の源泉徴収票・支払調書を揃えて確定申告することが重要です。
還付申告の手続き
源泉所得税を払いすぎている場合、確定申告(還付申告)を行うことで税金が戻ってきます。還付申告は申告対象年の翌年1月1日から5年間受け付けており、通常の確定申告期間(2〜3月)を外れても手続きできます。
主な還付申告の対象ケースは以下の通りです。
- 医療費控除:年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合
- 住宅ローン控除(初年度):年末調整で処理できず、初年度のみ確定申告が必要
- ふるさと納税(ワンストップ特例漏れ):6自治体以上に寄附・確定申告義務者は確定申告で寄附金控除を申請
- 年の途中で退職した場合:年末調整を受けられず、払いすぎた源泉所得税を取り戻せる
- 災害・盗難による雑損控除:被害額が大きい場合に対象
還付申告の手順は次の通りです。①国税庁の「確定申告書等作成コーナー」またはe-Taxにアクセス、②申告書を作成(源泉徴収票・医療費明細・領収書等を手元に用意)、③e-Taxで電子送信または税務署に郵送・持参、④指定口座に還付金が振り込まれる(e-Tax経由で約3週間、書面で約2か月が目安)。
過去5年分まで遡って申告できます。例えば2021年分の医療費控除を2026年に申告することも可能です。ただし還付金には利子(還付加算金)がつく場合がありますが、金額は少額なため早めに申告する方が資金効率は上がります。
源泉所得税の納付期限と特例
源泉所得税は、天引きした事業者(給与支払者)が国に納める義務を負います。原則として、給与などを支払った月の翌月10日が納付期限です。期限を1日でも過ぎると不納付加算税(10%、自主申告なら5%)と延滞税(年8.7%程度)が発生するため、経理担当者は厳格に管理する必要があります。
| 区分 | 対象事業者 | 納付回数 | 納付期限 |
|---|---|---|---|
| 原則(毎月納付) | 常時雇用10人以上 | 毎月 | 支払月の翌月10日 |
| 納期の特例 | 常時雇用9人以下 | 年2回 | 1〜6月分:7月10日/7〜12月分:翌年1月20日 |
納期の特例は、常時使用する従業員が9人以下の小規模事業者が税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで適用されます。承認は申請書を提出した月の翌月末日以後に支払う給与から有効になります。年2回の納付にまとめることで資金繰りが安定し、毎月の振込手続きの手間も大幅に削減できます。
ただし、特例対象は給与・退職所得のみです。弁護士・税理士・社会保険労務士などへの報酬や、原稿料・講演料などの報酬・料金については特例の対象外となり、支払い翌月10日の原則期限が適用されます。
また、納期の特例を受けている事業者が中途で従業員数が10人以上になった場合は、速やかに「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を税務署に提出し、翌月から毎月納付に戻す必要があります。怠ると要件外適用として遡及的に加算税が課される場合があります。
よくある質問(FAQ)
- 給与明細の所得税欄と源泉所得税は同じですか?
- はい、同じです。会社が「源泉徴収税額表(月額表)」を使って、給与額と扶養人数から算出した概算の所得税を毎月天引きしています。11〜12月の年末調整で実際の税額と精算され、払いすぎた分が12月または1月の給与に上乗せされて戻ってきます。
- 賞与の源泉所得税はなぜ高く感じるのですか?
- 賞与は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使い、前月の社会保険料控除後の給与をベースにした税率(0〜45.945%)をそのまま賞与額に掛けて計算します。所得控除が一度に反映されないため手取りが少なく感じますが、年末調整で最終精算されるため、年間を通じた税負担は変わりません。
- 退職金の源泉所得税はどれくらいかかりますか?
- 退職金は分離課税で、退職所得控除(勤続20年以下:40万円×勤続年数、20年超:800万円+70万円×超過年数)を差し引いた残額の1/2が課税退職所得となります。勤続30年・退職金2,000万円の例では実際の所得税は約16万円程度です。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば、会社が適正に源泉徴収して確定申告は原則不要です。
- フリーランスへの報酬でも源泉徴収されますか?
- 原稿料・講演料・デザイン料・弁護士・税理士・社会保険労務士への報酬など特定の報酬は、支払者が10.21%(100万円超部分は20.42%)を源泉徴収します。確定申告で年間の所得税額と精算するため、控除が多い年は還付、収入が多い年は追加納税になることがあります。
- 源泉徴収票はいつ、どこで受け取れますか?
- 会社員の場合、勤務先が翌年1月末までに交付する義務があります(通常は12月末〜1月中旬の給与支払い時)。退職者には退職後1か月以内に交付されます。電子交付の場合はマイポータルやWEB給与明細サービスから取得できます。紛失した場合は会社の経理・人事部門に再発行を依頼してください。
- 源泉所得税の「納期の特例」を受けるにはどうすればいいですか?
- 常時雇用する従業員が9人以下の事業者が対象です。税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで申請できます。承認後は1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日の年2回納付にまとめられ、資金繰りと経理事務の効率が大きく改善します。従業員数が10人以上になった場合は速やかに届出が必要です。
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- 出典: 国税庁 公式サイト — 所得税法・税率表・給与所得控除・基礎控除の所管
- 出典: 財務省 公式サイト — 税制改正・復興特別所得税
- 出典: 総務省 公式サイト — 住民税・個人住民税の所管
最終確認日:2026年5月15日
※本記事は2026年4月時点の一般的な情報であり、個別の税務・経営・法務相談に代わるものではありません。各制度の適用要件・税額は個人の状況により異なります。実行にあたっては、必ず公式情報および税理士・社労士・FP・弁護士など専門家にご相談ください。本記事の情報により生じたいかなる損害についても、当サイトでは責任を負いかねます。
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