働き方・扶養・在職老齢年金

在職老齢年金制度とは
2026年改正で基準額65万円に

老後資金と使ってよいお金を逆算して家計を整える場面
年金額だけでなく、医療費、楽しみ、使ってよいお金の余白まで確認します。

在職老齢年金は65歳以上で働きながら年金を受給する場合、給与+年金月額が65万円を超えると年金が一部停止される制度

記事の答えを確認した次に

働き方を変えたら、年金と手取りはどう動く?

決めるタイミング: 転職、退職、再雇用、扶養の変更、独立を決める前後。

相談で繰り返される本音

  • 収入を増やしても手取りが減る境目が分からない
  • 勤務先と自分、どちらが手続きするのか迷う
  • 今の働き方を何年続けるか決めきれない

初回で口頭整理できること

初回は、今の働き方、変更候補、給与と年金の確認項目を並べ、判断順を口頭で整理します。

その次に分けること

勤務先や公式窓口の回答がそろった後、手取りと生活費への影響を確認します。

初回の範囲: 社会保険の適用判定、勤務先手続きの代行、手取り額の保証、金融商品の申込みは初回に行いません。

初回で働き方と年金の順番を聞く

初回は口頭で整理します。資料がなくても、分かる範囲から始められます

相談前のFAQ

資料がそろっていなくても相談できますか?

はい。初回は、いま分かる範囲から迷いと確認順を整理します。通知書、通帳、財産や家計のメモなどが手元にあれば、分かる範囲だけご用意ください。

初回で何を持ち帰れますか?

いま決めること、まだ決めなくてよいこと、次に確認する数字や窓口を口頭で整理して持ち帰れます。初回当日の資料完成は約束していません。

初回に商品や契約の話がありますか?

初回は迷いと数字の整理に使います。金融商品の見積り、申込み、契約変更は初回の範囲に含みません。

目次(13セクション)
  1. 在職老齢年金とは|働きながら年金をもらう制度
  2. 減額の計算式|具体的な試算例つき
  3. 2022年改正で何が変わった?
  4. 2026年改正の見通し|基準額65万円への引き上げ
  5. 在職老齢年金と繰下げ受給の関係
  6. 在職定時改定(2022年新設)
  7. 対象者と対象外の人|厚生年金加入がカギ
  8. 年金が減額されないための働き方シミュレーション
  9. 在職老齢年金と税金・社会保険料の関係
  10. 在職老齢年金の手続き・届出
  11. 改正前後の影響を受ける人チェックリスト
  12. 在職老齢年金と他の年金制度の比較
  13. よくある質問

在職老齢年金とは|働きながら年金をもらう制度

在職老齢年金とは、60歳以降も厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受給する場合に適用される制度です。給与(報酬)と年金の合計が一定額を超えると、超えた分の年金が一部または全額停止されます。

厚生労働省の統計では、65歳以上の就業者数は約912万人(2024年時点)に達し、年金を受給しながら働く人は増え続けています。在職老齢年金の仕組みを正しく理解しておくことは、老後の収入設計において欠かせません。

在職老齢年金の基本ポイント

  • 対象は厚生年金に加入して働く60歳以上の方
  • 「基本月額(年金の月額)+ 総報酬月額相当額(給与等)」が基準額を超えた場合に年金が減額
  • 減額されるのは老齢厚生年金のみ。老齢基礎年金(国民年金部分)は減額対象外
  • 自営業・フリーランスなど厚生年金に加入しない働き方には適用されない

減額の計算式|具体的な試算例つき

在職老齢年金の停止額は以下の計算式で求めます。

計算式(2022年4月以降)

  • 支給停止額(月額)=(基本月額 + 総報酬月額相当額 − 50万円)÷ 2
  • 実際の受給月額= 基本月額 − 支給停止額
  • 支給停止額が基本月額以上になると全額停止

ここで「総報酬月額相当額」とは、標準報酬月額+(直近1年間の標準賞与額 ÷ 12)で計算される額です。賞与がある場合は月換算して合算される点に注意してください。

試算例4パターン

パターン年金月額給与月額合計停止額実受給額
減額なし15万円30万円45万円0円15万円
一部停止15万円40万円55万円2.5万円12.5万円
一部停止(高給与)15万円60万円75万円12.5万円2.5万円
全額停止15万円80万円以上95万円〜15万円0円

賞与ありの試算例

年2回・各60万円の賞与がある場合、総報酬月額相当額の計算は次のようになります。

項目金額計算
標準報酬月額30万円毎月の給与から決定
賞与の月額換算10万円120万円 ÷ 12ヶ月
総報酬月額相当額40万円30万円 + 10万円
基本月額(年金)15万円
合計55万円50万円超 → 一部停止
停止額2.5万円(55万 − 50万)÷ 2
実受給年金額12.5万円15万 − 2.5万

賞与が多い方は、月給だけで判断すると想定外の減額を受ける場合があります。

2022年改正で何が変わった?

2022年4月の年金制度改正は、在職老齢年金の仕組みに大きな変化をもたらしました。

比較項目改正前(〜2022年3月)改正後(2022年4月〜)
60〜64歳の基準額月28万円月50万円
65歳以上の基準額月47万円月50万円
両者の統一年齢で異なる2段階年齢問わず月50万円に統一
在職定時改定なし(退職・70歳到達時のみ改定)新設(毎年10月に年金額を改定)
繰下げ上限年齢70歳まで(最大42%増)75歳まで(最大84%増)

改正前は60〜64歳の基準額が月28万円と低く、再雇用後に大幅な減額が発生するケースが多数ありました。改正後は月50万円に引き上げられたことで、大多数の再雇用者は減額なしで年金を受け取れるようになっています。

また、在職定時改定の新設により、退職を待たずに毎年の加入実績が年金額に反映されるようになった点も大きなメリットです。

2026年改正の見通し|基準額65万円への引き上げ

2025年に成立した年金制度改正法により、在職老齢年金の基準額は2026年4月から月62万円に引き上げられ、その後段階的に月65万円まで引き上げられる見通しです。

時期基準額(月額)備考
〜2022年3月28万円 / 47万円60〜64歳と65歳以上で異なる
2022年4月〜50万円年齢統一
2026年4月〜62万円段階的引き上げ開始
将来(予定)65万円最終的な引き上げ目標

この改正により、年金月額15万円+給与月額45万円=合計60万円というケースは減額なしとなり、これまで一部停止されていた層の多くが満額受給できるようになります。

改正のインパクト

  • 基準額が50万円→62万円に上がることで、月12万円分の余裕が生まれる
  • 平均的な再雇用者(給与月額25〜35万円 + 年金月額10〜15万円)はほぼ影響なし
  • 役員報酬が高い方や、賞与が大きい方は引き続き減額の可能性あり
  • 将来的な基準額65万円到達で「在職老齢年金の実質廃止に近づく」との見方もある

在職老齢年金と繰下げ受給の関係

在職老齢年金と繰下げ受給は密接に関連する制度ですが、組み合わせには注意が必要です。

繰下げ受給の基本

老齢厚生年金・老齢基礎年金は、65歳で受給開始せずに最大75歳まで繰り下げることで、1ヶ月あたり0.7%ずつ増額されます。75歳まで繰り下げた場合の増額率は最大84%です。

繰下げ年齢繰下げ月数増額率年金月額15万円の場合
66歳12ヶ月8.4%約16.3万円
67歳24ヶ月16.8%約17.5万円
68歳36ヶ月25.2%約18.8万円
70歳60ヶ月42.0%約21.3万円
75歳120ヶ月84.0%約27.6万円

在職老齢年金との併用時の注意点

在職中に年金が停止されている場合でも繰下げ申請は可能ですが、停止されていた部分は増額の計算対象外となります。

繰下げ × 在職老齢年金の落とし穴

  • 年金月額15万円のうち5万円が停止されている場合、繰下げで増額されるのは10万円部分のみ
  • 停止額が大きい方ほど、繰下げのメリットは小さくなる
  • 老齢基礎年金は在職老齢年金の対象外なので、基礎年金だけ繰下げる選択肢もある

繰下げの判断は健康状態・貯蓄額・他の収入源を総合的に検討する必要があります。詳しくは繰上げ・繰下げ受給をご覧ください。

在職定時改定(2022年新設)

2022年4月より、65歳以上で厚生年金に加入しながら働いている方は毎年10月に年金額が改定されるようになりました。これまでは退職または70歳到達まで年金額が改定されませんでしたが、在職定時改定により就労中でも加入実績に応じて年金が増え続けます

在職定時改定の仕組み

  • 毎年9月1日時点の被保険者を対象に、前年10月〜当年9月の加入実績を反映
  • 10月分の年金(12月支払い)から増額された年金が適用
  • 65歳以上で厚生年金に加入している方全員が対象(在職老齢年金で停止中の方も含む)

在職定時改定で年金はいくら増える?

増額の目安は、標準報酬月額に応じて年間おおよそ以下の通りです。

標準報酬月額1年分の増額(目安)5年間の累計増額
20万円約13,000円/年約65,000円/年
30万円約20,000円/年約100,000円/年
40万円約26,000円/年約130,000円/年

増額分は生涯にわたって受け取れるため、長く働くほどメリットは大きくなります。

対象者と対象外の人|厚生年金加入がカギ

在職老齢年金は全ての働くシニアに適用されるわけではありません。厚生年金に加入しているかどうかが分かれ目です。

働き方厚生年金加入在職老齢年金の対象
正社員・契約社員(フルタイム)加入対象
パート(週20時間以上・月8.8万円以上等)加入(社保適用拡大)対象
パート(週20時間未満)非加入対象外
自営業・フリーランス非加入対象外
役員(法人の代表取締役等)加入対象
不動産賃貸収入のみ非加入対象外

ポイント

  • 老齢基礎年金(国民年金)は在職老齢年金で減額されない。減額対象は老齢厚生年金のみ
  • 厚生年金に加入しない働き方(自営・業務委託・短時間パート)を選べば、給与額に関わらず年金は満額受給可能
  • ただし、厚生年金に加入しないことで将来の年金額が増えない(在職定時改定の恩恵も受けられない)デメリットもある

年金が減額されないための働き方シミュレーション

在職老齢年金で年金を減額されないために、どの程度の給与であれば「基準額以内」に収まるのかをシミュレーションします。

年金月額別の「減額ゼロ」上限給与

年金月額(基本月額)減額なしの給与上限(2024年度)減額なしの給与上限(2026年度予定)
8万円月42万円まで月54万円まで
10万円月40万円まで月52万円まで
12万円月38万円まで月50万円まで
15万円月35万円まで月47万円まで
20万円月30万円まで月42万円まで

2026年度の基準額引き上げにより、いずれの年金月額でも給与の許容範囲が月12万円拡大します。

給与と手取り総額の比較

「給与を下げて年金を満額もらう」と「給与を上げて年金が減額される」のどちらが手取り総額で有利かは、個別の試算が必要です。

注意:給与を下げれば得とは限らない

  • 年金が2.5万円減額されても、給与が10万円増えれば手取り総額は増える
  • ただし給与が増えると所得税・住民税・社会保険料も増える
  • 75歳以上の後期高齢者医療保険料や介護保険料にも影響する
  • 手取り最適化にはFPや税理士への相談が有効

在職老齢年金と税金・社会保険料の関係

在職老齢年金の判断で見落とされがちなのが、税金と社会保険料の負担です。給与と年金の両方に課税・保険料がかかるため、額面と手取りは大きく異なります。

給与にかかる税金・保険料

  • 所得税・住民税:給与所得控除後の課税所得に応じて課税
  • 厚生年金保険料:70歳未満は労使折半で天引き(70歳以上は被保険者資格喪失で不要)
  • 健康保険料:75歳未満は被用者保険で天引き
  • 雇用保険料:65歳以上も対象(2017年〜)

年金にかかる税金

  • 老齢年金は雑所得として所得税・住民税の対象
  • 公的年金等控除が適用される(65歳以上は110万円まで非課税)
  • 給与と年金を合算した合計所得で税率が決まるため、両方の収入がある方は税率が上がりやすい

医療費・介護保険料への波及

  • 後期高齢者医療保険料(75歳以上)は所得に連動して増える
  • 介護保険料(65歳以上の第1号被保険者)も所得段階で決まる
  • 医療費の窓口負担(1割・2割・3割)も所得で判定される
  • 在職老齢年金で年金が停止されても、「収入がある」ことで保険料・医療費負担が増えるケースがある

在職老齢年金の手続き・届出

在職老齢年金を受給するための手続きと、就労開始・退職時に必要な届出を整理します。

65歳到達時(受給開始)

  • 65歳の誕生月の約3ヶ月前に日本年金機構から「年金請求書」が届く
  • 必要事項を記入し、添付書類とともに年金事務所または街角の年金相談センターに提出
  • 提出後、約1〜2ヶ月で「年金証書・年金決定通知書」が届き、受給が開始される

退職した場合

  • 退職月の翌月分から在職老齢年金の停止が解除され、本来の年金額を受給できる
  • 退職の届出は事業主が行う(被保険者資格喪失届)
  • 退職時には在職定時改定とは別に、退職時改定で年金額が見直される

70歳到達時

  • 70歳で厚生年金の被保険者資格を喪失する(保険料の負担はなくなる)
  • ただし70歳以降も厚生年金適用事業所で働く場合は、在職老齢年金の仕組みは引き続き適用される(年金の停止判定は続く)
  • 70歳到達時に退職改定が行われ、70歳までの加入実績が年金額に反映される

改正前後の影響を受ける人チェックリスト

2026年の基準額引き上げにより、これまで年金が減額されていた方の一部が満額受給できるようになります。以下のチェックリストで該当するか確認してください。

チェックリスト:改正でメリットがある人

  • ☑ 65歳以上で厚生年金に加入して働いている
  • ☑ 給与+年金の月額合計が50万円〜62万円の範囲にある
  • ☑ 現在、年金の一部が停止されている
  • ☑ 再雇用・嘱託で月額給与25〜40万円程度を得ている

チェックリスト:引き続き減額の可能性がある人

  • ☑ 役員報酬が月60万円を超える
  • ☑ 年間賞与が100万円以上ある
  • ☑ 厚生年金の加入期間が長く、年金月額が20万円を超える
  • ☑ 合計(給与+年金)が月62万円を超える見込み

該当する方は、給与の調整・繰下げ受給・厚生年金に加入しない働き方への切り替えなど、複数の選択肢を比較検討することをお勧めします。

在職老齢年金と他の年金制度の比較

在職老齢年金と混同されやすい制度、併用できる制度を整理します。

制度名内容在職老齢年金との関係
老齢基礎年金(国民年金)20〜60歳の加入実績に基づく年金在職老齢年金で減額されない
老齢厚生年金厚生年金の加入実績に基づく年金在職老齢年金で減額の対象
加給年金配偶者が65歳未満の場合に加算本体の老齢厚生年金が全額停止の場合、加給年金も不支給
振替加算配偶者が65歳以上で老齢基礎年金に加算在職老齢年金の影響なし
遺族厚生年金配偶者の死亡後に受給老齢厚生年金と併給調整あり(在職老齢年金とは別の仕組み)
障害年金障害等級に応じた年金65歳以降は老齢年金との併給可能(選択)
高年齢雇用継続給付60〜65歳で給与低下時の給付在職老齢年金とは別に最大6%の停止あり

特に加給年金は、老齢厚生年金が全額停止されると同時に不支給になるため、年額約40万円の損失につながる可能性があります。配偶者の年齢も考慮に入れて総合判断が必要です。

よくある質問

在職老齢年金で停止された年金は後でもらえますか?
停止された年金は失われ、後から受け取ることはできません。ただし、在職定時改定により就労中の加入実績が年金額に加算されるため、長く働くほど老齢厚生年金の金額自体は増えていきます。
パートタイムで働いても在職老齢年金の対象になりますか?
在職老齢年金は厚生年金に加入している方が対象です。週20時間未満など厚生年金に加入しない働き方であれば、給与の多寡に関わらず年金は減額されません。ただし106万円の壁を超えると社会保険加入義務が生じる場合があります。
給与を下げれば年金を満額もらえますか?
はい。総報酬月額相当額と基本月額の合計が基準額以下であれば、年金は全額受け取れます。再雇用の給与水準を調整することで減額を回避できる場合がありますが、手取り全体(給与+年金+税金・社会保険料)で最適化することが重要です。
自営業やフリーランスに転向すれば年金は減額されませんか?
自営業・フリーランスは厚生年金に加入しないため、在職老齢年金の対象にはなりません。収入額にかかわらず年金は全額受給できます。ただし厚生年金の加入実績が増えない(在職定時改定の恩恵を受けられない)点や、健康保険が国民健康保険になる点など、トータルで比較検討が必要です。
70歳以降も働いた場合、在職老齢年金はどうなりますか?
70歳で厚生年金の被保険者資格は喪失しますが、厚生年金適用事業所に勤務する限り、在職老齢年金の停止の仕組みは70歳以降も適用されます。ただし70歳以上は厚生年金保険料の天引きはなくなります。
在職老齢年金の基準額は毎年変わりますか?
基準額は法改正がない限り固定です(2022年改正で月50万円に統一)。ただし、2026年の制度改正で段階的に引き上げが予定されています。物価スライドや賃金スライドによって年金額自体が毎年微調整されるため、具体的な停止額は毎年変動する可能性があります。

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本ページの制度概要・要件・税率は、以下の公式情報を編集部が確認のうえ整理しています(執筆時点)。最新かつ正確な情報は必ず各公式サイトでご確認ください。FPは記事を直接監修してはおらず、関連テーマでご相談を受けるFPとしてご紹介しています。

最終確認日:2026-05-15

※本記事は2026年5月時点の一般的な情報であり、個別の税務・法務相談に代わるものではありません。各制度の適用要件・金額は個人の状況により異なります。実行にあたっては、必ず公式情報および専門家にご相談ください。本記事の情報により生じたいかなる損害についても、当サイトでは責任を負いかねます。

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