生前贈与で土地の名義変更
費用・税金・手順と「相続のほうが安い」落とし穴【2026】
結論:生前贈与で土地の名義を変えると、登録免許税2%・不動産取得税3%・贈与税(または精算課税の20%)の3本立てで税コストが発生し、相続で取得した場合より高くなるケースが大半です。相続時精算課税を選ぶと小規模宅地等の特例(80%減)が使えなくなる落とし穴もあり、安易な生前名義変更は損失の元。本記事では実額シミュレーションで比較し、推奨ケースを整理します。
このページの要点
- 登録免許税は 贈与2.0% vs 相続0.4%(5倍)
- 不動産取得税は 贈与3.0% vs 相続0%(相続は非課税)
- 相続時精算課税で贈与した土地は 小規模宅地特例(80%減)が使えない
- 司法書士への依頼費用は 土地1筆で5〜10万円 が相場
生前贈与 vs 相続|税コスト比較
固定資産税評価額 2,000万円の土地 を親から子へ移すケースで、生前贈与と相続のコストを比較します。
| 税目 | 生前贈与 | 相続 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 40万円(評価額×2.0%) | 8万円(評価額×0.4%) |
| 不動産取得税 | 60万円(評価額×3.0%) | 0円(非課税) |
| 贈与税/相続税 | 585.5万円(暦年・特例税率) | 基礎控除内で0円の可能性大 |
| 小規模宅地特例 | 使えないケース多(精算課税時) | 自宅は80%減で評価 |
| 合計コスト目安 | 685.5万円 | 8万円(基礎控除内) |
一般的には 相続で取得したほうが圧倒的に税コストが安い ため、「認知症対策で確実に渡したい」「将来大きく値上がりしそう」「収益物件の収入を早く子に回したい」など明確な目的がなければ、生前の名義変更は慎重に検討してください。
登録免許税:贈与は相続の5倍
法務局で所有権移転登記をする時にかかる国税。
- 贈与:固定資産税評価額 × 2.0%
- 相続:固定資産税評価額 × 0.4%(5分の1)
2,000万円の土地なら贈与40万 vs 相続8万。この差額32万円は、贈与を選ぶだけで確実に発生する固定費です。
不動産取得税:贈与3%・相続ゼロ
不動産を取得した人に都道府県が課す地方税。
- 贈与:土地・住宅は 評価額 × 3.0%(宅地は評価額×1/2が課税標準)
- 相続:非課税(形式的な取得のため)
相続発生時に自動で課されないため、不動産取得税は贈与特有の重いコストです。
贈与税:暦年課税と相続時精算課税
土地のような高額資産は、年110万円の暦年課税では到底移しきれません。主な2選択肢は以下。
| 方式 | 税負担 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 暦年課税 | 最大55%の累進 | 分割して贈与しやすい | 土地は分筆しないと分割しづらい |
| 相続時精算課税 | 2,500万まで0円 超過分一律20% | 土地一発で移せる | 小規模宅地特例が使えない・戻せない |
土地の生前贈与では 相続時精算課税を選ぶ ケースが多いですが、次章の落とし穴に要注意。詳細は 相続時精算課税とは?、税額の試算は 贈与税シミュレーター で確認できます。
落とし穴:小規模宅地特例が使えなくなる
被相続人の自宅土地は、相続時に 330㎡まで評価額を80%減額 できる小規模宅地等の特例の対象です。しかし 相続時精算課税で贈与した土地には、この特例が適用できません。
実額インパクト
評価額3,000万円の自宅土地の場合、特例を使えば 600万円(80%減) で相続税を計算できるのに、精算課税で贈与してしまうと 3,000万円そのまま で加算されます。差額2,400万円は、相続税率30%で 720万円の税増。自宅は原則として精算課税で贈与しないのが鉄則です。
必要書類と登記申請の手順
| 書類 | 取得先 |
|---|---|
| 贈与契約書 | 自作/司法書士作成 |
| 登記事項証明書(登記簿謄本) | 法務局(600円) |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村 |
| 贈与者の印鑑証明書 | 贈与者の住所地(発行3ヶ月以内) |
| 贈与者の登記識別情報(権利証) | 前回取得時に交付されたもの |
| 受贈者の住民票 | 受贈者の住所地 |
| 登記原因証明情報 | 司法書士作成 |
申請は土地の所在地を管轄する法務局へ。オンライン申請も可能ですが、土地の場合は書類不備があると差戻されて時間がかかるため、司法書士への依頼が一般的です。
司法書士への依頼費用
- 登記申請報酬:土地1筆あたり5〜10万円
- 贈与契約書作成:2〜5万円
- 実費(登記事項証明書・印鑑証明等):5千〜1万円
- 登録免許税は別途実費
こんなケースは生前贈与が有利
- 値上がりが確実に見込まれる土地(再開発地域・駅前商業地):相続時精算課税で贈与時の価格で固定
- 収益不動産(賃貸物件):家賃収入を子の資産形成に回せる
- 高齢親の認知症リスクが高い:判断能力があるうちに確実に移す
- 将来の争族リスクを消したい:生前に合意を取り付けることで相続トラブル回避
- 親が多数の土地を所有:自宅以外の土地を生前贈与、自宅は相続で小規模宅地特例
よくある質問
Q. 土地の一部だけ贈与できますか?
A. 共有持分としての贈与は可能。ただし後日売却・担保設定で共有者全員の同意が必要になるなど管理の手間が増えます。
Q. 配偶者控除2,000万円を使えば得ですか?
A. 婚姻20年以上の夫婦間なら、居住用不動産を最大2,000万円まで贈与税非課税にできます。ただし登録免許税・不動産取得税は通常通りかかるため、完全無料ではありません。
Q. 税務署に贈与を知られない方法は?
A. ありません。不動産登記の異動は法務局から税務署に自動通知されます。生前贈与 現金手渡し と同じく、隠すことは事実上不可能です。