相続税シミュレーション2026
あなたの家族で相続税が いくらからかかるか(基礎控除の壁)
記事の答えを確認した次に
相続税、うちは申告が必要?納税資金はいくら残す?
決めるタイミング: 財産の概算が見えたとき。分け方や売却を決める前。
相談で繰り返される本音
- 税額が分かっても、現金で払えるかが心配
- 不動産を残すか売るか決められない
- 特例を使う前提で家族の分け方を決めてよいか不安
初回で口頭整理できること
初回は、家族、財産、借入、使える現金を伺い、税理士へ確認する論点と納税資金の見方を口頭で整理します。
その次に分けること
資料がそろった後、税理士の試算と分け方・納税資金を同じ前提で確認します。
初回の範囲: 申告要否・税額・特例適用の確定、税務申告、財産評価、金融商品の申込みは初回に行いません。
相談前のFAQ
資料がそろっていなくても相談できますか?
はい。初回は、いま分かる範囲から迷いと確認順を整理します。通知書、通帳、財産や家計のメモなどが手元にあれば、分かる範囲だけご用意ください。
初回で何を持ち帰れますか?
いま決めること、まだ決めなくてよいこと、次に確認する数字や窓口を口頭で整理して持ち帰れます。初回当日の資料完成は約束していません。
初回に商品や契約の話がありますか?
初回は迷いと数字の整理に使います。金融商品の見積り、申込み、契約変更は初回の範囲に含みません。
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この概算に含めない判断
配偶者の税額軽減は実際の遺産分割額などが必要なため反映しません。小規模宅地等の特例は用途・面積・取得者・継続要件があるため自動判定しません。特例を確認済みの場合は、その適用後の評価額を財産総額へ入力してください。相続開始前の贈与加算も対象期間を自動判定せず、確認済み額だけを入力します。
確認日:2026年9月11日。根拠:国税庁「相続税の計算」、国税庁「相続税の税率」。
目次(16セクション)
相続税の計算ステップ(4段階)
相続税の計算は複雑に見えますが、骨格は次の4ステップです。全体の流れは「遺産総額の把握→基礎控除の差し引き→課税遺産総額への税率適用→各種控除の適用」という順序になります。この流れを理解しておくと、シミュレーターの計算結果がなぜその金額になるのかが見えてきます。
- 課税価格の合計額を出す:土地・建物・預貯金・有価証券・生命保険(非課税枠控除後)・退職手当金(非課税枠控除後)・その他財産をすべて合計し、そこから債務(借入金・未払税金等)と葬式費用を差し引きます。暦年贈与の加算対象期間は相続開始日で異なり、2026年12月31日以前に相続が開始した場合は相続開始前3年以内です。
- 基礎控除を引く:3,000万円+600万円×法定相続人数を課税価格の合計額から差し引きます。この金額を超えた分が「課税遺産総額」です。課税価格が基礎控除以下であれば、相続税の申告義務はありません。
- 法定相続分で按分して税率を適用:課税遺産総額を、実際の分割割合ではなく法定相続分で分けたと仮定して各人に相続税の速算表を当てはめます。各人の仮の税額を合算したものが「相続税の総額」です。この計算方法は、遺産の分け方によって相続税の総額が変動しないようにするための仕組みです。
- 実際の取得割合で按分し、各種控除を適用:相続税の総額を、各相続人が実際に取得した財産の割合で按分します。そこから配偶者の税額軽減・未成年者控除・障害者控除・相次相続控除・外国税額控除・贈与税額控除などを差し引いた残りが、各人の納付税額です。
相続税の計算で特に重要なのは、ステップ3で「法定相続分に基づく仮の按分」を行う点です。実際にどう分割するかに関係なく、まず法定相続分で計算した総額を出し、その後に実際の取得割合で按分し直します。このため、遺産分割の仕方で相続税の「総額」は変わりませんが、各相続人の「納付額」は変わります。
法定相続分の基本
法定相続分は民法で定められた相続割合です。配偶者と子が相続人の場合は配偶者1/2・子1/2(子が複数なら均等分割)、配偶者と父母の場合は配偶者2/3・父母1/3、配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者3/4・兄弟姉妹1/4です。この法定相続分は遺産分割協議で自由に変更できますが、相続税の計算上は常にこの法定相続分で仮の按分を行います。詳しい計算方法は 相続税の基礎控除と計算方法 をご覧ください。
みなし相続財産とは
民法上は相続財産ではないが、相続税法上は相続財産とみなされるものがあります。代表例が生命保険金と死亡退職金です。これらは受取人固有の財産であり遺産分割の対象にはなりませんが、相続税の課税対象には含まれます(ただし前述の非課税枠が適用されます)。その他、被相続人が保険料を負担していた個人年金の受給権や、相続開始日に応じた加算対象期間内の生前贈与なども課税価格に加算されることがあります。
基礎控除:いくらから課税されるか
相続税の基礎控除額は 3,000万円+600万円×法定相続人数 で計算します。遺産総額がこの金額以下なら相続税はかかりません。2015年1月1日以降の相続から現在の計算式が適用されており、それ以前(5,000万円+1,000万円×法定相続人数)から4割引き下げられました。この改正により、課税対象者は約4.4%から約8~9%台へとほぼ倍増しています。
法定相続人の数え方にも注意が必要です。養子がいる場合、実子がいれば養子は1人まで、実子がいなければ養子は2人まで法定相続人に含めることができます。また、相続放棄をした人がいても、法定相続人の数には影響しません(放棄がなかったものとして数えます)。代襲相続(被相続人の子がすでに亡くなっており、その子=孫が代わりに相続する場合)が発生している場合は、代襲相続人も法定相続人に数えます。法定相続人の確定には被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得する必要があり、この手続きだけでも数週間かかることがあります。
| 法定相続人数 | 基礎控除額 | 主なケース |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 配偶者のみ、または子1人 |
| 2人 | 4,200万円 | 配偶者+子1人 |
| 3人 | 4,800万円 | 配偶者+子2人 |
| 4人 | 5,400万円 | 配偶者+子3人 |
| 5人 | 6,000万円 | 配偶者+子4人 |
相続税の税率早見表と計算例
法定相続分で按分した「各人の取得金額」ごとに次の税率を当てはめます(相続税の速算表)。税率は10%から55%までの8段階で、取得金額が大きくなるほど高い税率が適用される累進課税方式です。
| 各人の取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | ― |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
出典:国税庁「相続税の税率」(令和7年時点)
速算表の使い方は「各人の取得金額×税率-控除額」です。たとえば法定相続分で按分した金額が4,000万円の場合、4,000万円×20%-200万円=600万円がその人の仮の税額となります。この速算表はあくまで「法定相続分で按分した仮の取得金額」に対して適用するものであり、実際の取得金額に直接適用するものではない点に注意してください。詳しい税率表は 相続税の税率早見表 で確認できます。
相続税の最高税率55%が適用されるのは、法定相続分で按分した取得金額が6億円を超える場合です。これは非常に大きな遺産のケースに限られますが、取得金額が1億円を超えると税率30%、2億円超で40%と段階的に上がるため、遺産規模が大きいほど節税対策の効果も大きくなります。なお、相続税率は2015年1月1日の改正で最高税率が50%から55%に引き上げられ、6段階から8段階に細分化されました。
配偶者の税額軽減(1.6億円の壁)
配偶者が取得した財産は、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。この特例は相続税の税額控除のなかで最も減額幅が大きく、一次相続では配偶者に多く相続させれば相続税がゼロになるケースも多くあります。
適用を受けるためには、相続税の申告書を税務署に提出する必要があります。基礎控除以下で申告不要のケースとは異なり、配偶者控除を使って税額がゼロになる場合でも申告書の提出は必須です。申告期限(死亡を知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割が確定していない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで、分割確定後に適用を受けることも可能です。詳しくは 配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除) をご覧ください。
注意:二次相続で逆転する
一次相続で配偶者に集めると節税になりますが、その配偶者が亡くなる二次相続では基礎控除が1人分(600万円)減り、配偶者軽減も使えません。一次と二次を合計した総額で比べることが重要です。たとえば遺産1億円のケースで、一次相続で配偶者が全額取得すると一次の税額はゼロですが、二次相続で子が1億円を相続すると約1,220万円の税額が発生します。一方、一次で配偶者と子が半分ずつ取得すれば、一次・二次の合計税額を数百万円抑えられる場合があります。詳しくは 二次相続の落とし穴と対策 をご確認ください。
生命保険500万円非課税枠
被相続人が保険料を払っていた生命保険金を法定相続人が受け取る場合、500万円×法定相続人数までは相続税の非課税枠が適用されます。現金で同じ額を残すより、保険で受け取るほうが税務上有利です。
- 相続人3人なら 1,500万円 まで非課税。
- 相続人以外(孫・兄弟姉妹など)が受け取ると非課税枠は使えません。
- 納税資金の準備としても有効(契約者=被相続人、被保険者=被相続人、受取人=相続人)。
- 死亡退職手当金にも同様に500万円×法定相続人数の非課税枠があります。
生命保険は遺産分割協議の対象外で、受取人が指定されていれば確実に特定の相続人に渡せる点もメリットです。遺産分割で揉めやすい現金とは異なり、保険金は受取人固有の財産として扱われます。また、相続税の納付は現金一括が原則のため、不動産中心の相続では生命保険で納税資金を確保しておく対策が有効です。詳しくは 生命保険の相続税非課税枠を徹底解説 を参照してください。
小規模宅地等の特例(80%減)
被相続人が住んでいた自宅の土地を、配偶者または同居親族が相続した場合、330㎡までの部分について評価額を80%減額できる特例です。都市部の戸建て・マンションでは、この特例の有無で相続税額が数百万〜数千万単位で変わります。たとえば、路線価評価額6,000万円の自宅敷地(200㎡)に特例を適用すると、評価額が1,200万円まで圧縮され、4,800万円もの課税価格の圧縮につながります。
配偶者には同居・居住継続・保有継続という取得者ごとの追加要件はありませんが、宅地等自体の要件、取得範囲、分割、申告手続は確認が必要です。同居親族の場合は「相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつその宅地等を申告期限まで保有していること」が要件です。別居親族には、被相続人に配偶者・同居相続人がいないこと、本人・配偶者・三親等内親族等が所有する家屋への過去3年の居住歴、現在の家屋の過去所有歴、申告期限までの保有など複数の要件があります。
| 宅地区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地(自宅) | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地 | 200㎡ | 50% |
小規模宅地等の特例は、原則として相続税の申告期限までに対象宅地等が分割され、申告書に適用の記載と所定書類があることが必要です。未分割なら、当初申告に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、原則3年以内に分割した後、分割日の翌日から4か月以内に更正の請求をする経路があります。申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内なので、分割未了でも申告自体を放置しないでください。
なお、特定居住用宅地と特定事業用宅地は、それぞれ330㎡・400㎡まで併用可能です(合計730㎡まで)。ただし、貸付事業用宅地と併用する場合は面積調整計算が必要になります。自宅と賃貸物件の両方を所有している場合は、どちらに特例を適用するのが有利かを比較検討する必要があります。詳しくは 小規模宅地等の特例の適用要件と計算方法 で解説しています。
その他の税額控除(未成年者・障害者・相次相続)
相続税には、配偶者の税額軽減以外にも複数の税額控除が設けられています。該当する場合は計算した相続税額からさらに差し引くことができます。
| 控除の種類 | 対象者 | 控除額の計算 |
|---|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 被相続人の配偶者 | 法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い方まで非課税 |
| 未成年者控除 | 相続人が18歳未満 | (18歳-相続時の年齢)×10万円 |
| 障害者控除 | 相続人が障害者 | (85歳-相続時の年齢)×10万円(特別障害者は20万円) |
| 相次相続控除 | 10年以内に2回以上相続があった場合 | 前回の相続税額の一定割合(経過年数に応じて逓減) |
| 外国税額控除 | 外国で相続税に相当する税を課された場合 | 外国で支払った税額(日本の税額を限度) |
| 贈与税額控除 | 相続開始日に応じた加算対象期間内に贈与を受けた場合 | 贈与時に支払った贈与税額 |
未成年者控除と障害者控除は、控除額がその相続人の相続税額を超える場合、超過分を扶養義務者である他の相続人の税額から差し引くことができます。たとえば15歳の子が相続人の場合、未成年者控除は(18歳-15歳)×10万円=30万円となり、この子の相続税額が30万円未満であれば残りを親の税額から控除できます。
相次相続控除は、短期間に二度の相続が続いた家庭の負担を軽減するための制度で、前回の相続から10年以内であれば適用されます。控除額は前回の相続税額に一定の割合を掛けて算出し、経過年数が短いほど控除額が大きくなります。一次相続で多額の相続税を支払った直後に二次相続が発生するケースでは、この控除が大きな意味を持ちます。
贈与税額控除は、相続開始日に応じた加算対象期間内の暦年贈与について適用されます。加算期間は段階的に延長されますが、2026年12月31日以前に相続が開始した場合は3年以内です。対象贈与を相続財産へ加算し、贈与時に支払った贈与税額を相続税額から差し引いて二重課税を調整します。
財産評価の基本(不動産・預金・有価証券)
相続税のシミュレーションで最も差が出るのが財産の評価方法です。財産の種類ごとに国税庁が定めた評価方法があり、時価(売却価格)とは異なる金額になることが一般的です。以下の表に主な財産の評価方法をまとめます。
| 財産の種類 | 評価方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 土地(市街地) | 路線価方式 | 路線価×地積×各種補正率。公示価格の約80%が目安 |
| 土地(郊外・農地等) | 倍率方式 | 固定資産税評価額×国税庁定める倍率 |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 市区町村が算定した固定資産税評価額をそのまま使用 |
| 預貯金 | 死亡日の残高 | 普通預金は残高、定期預金は残高+経過利息(税引後) |
| 上場株式 | 4つの価格のうち最も低い額 | 死亡日の終値・月平均・前月平均・前々月平均の最低額 |
| 生命保険金 | 受取金額-非課税枠 | 500万円×法定相続人数を差し引いた残額が課税対象 |
| 退職手当金 | 受取金額-非課税枠 | 500万円×法定相続人数を差し引いた残額が課税対象 |
| ゴルフ会員権 | 取引相場の70% | 取引相場のあるものは相場×70% |
出典:国税庁「財産評価」
路線価方式と倍率方式の違い
路線価方式は、国税庁が毎年7月に公表する路線価図を使い、道路に面した土地1㎡あたりの価格に地積を乗じて算出します。奥行・間口・形状などによる補正率を適用するため、同じ面積でも整形地と不整形地では評価額が異なります。
倍率方式は、路線価が定められていない地域に適用されます。固定資産税評価額に、国税庁が定めた一定の倍率を掛けて算出します。倍率は国税庁の路線価図・評価倍率表で確認できます。
不動産の評価が相続税額を大きく左右する理由
相続財産に占める不動産の割合は、国税庁の統計によると全国平均で約35%です。都市部ではこの割合がさらに高くなり、不動産の評価額が相続税額を大きく左右します。路線価は公示価格の約80%、固定資産税評価額は公示価格の約70%で設定されているため、不動産は時価よりも低い金額で評価される傾向があります。これが「現金より不動産で持つほうが相続税上は有利」と言われる根拠です。
ただし、2024年以降のタワーマンション評価の見直し(いわゆるタワマン節税の是正)により、市場価格と乖離が大きいマンションについては評価額が引き上げられる場合があります。マンションの相続税評価は、市場価格との乖離率が一定以上の場合に補正が入る仕組みに変わりました。不動産を活用した相続税対策を検討する際は、最新の評価ルールを確認することが重要です。
預貯金・有価証券の評価における注意点
預貯金は死亡日の残高がそのまま評価額です。定期預金の場合は経過利息(税引後)を加算します。外貨預金は死亡日のTTB(対顧客電信買相場)で円換算します。上場株式は、死亡日の終値、死亡月の月平均終値、前月の月平均終値、前々月の月平均終値の4つのうち最も低い価格で評価できます。株式市場が下落局面にある場合は、月平均のほうが有利になることがあります。投資信託は、死亡日の基準価額から信託財産留保額と源泉所得税を差し引いた金額で評価します。
非上場株式は、会社の規模に応じて類似業種比準方式や純資産価額方式など複雑な評価方法が適用されるため、税理士への相談が必要です。同族会社のオーナーが被相続人の場合、非上場株式の評価額が想定以上に高くなり、相続税額が大幅に増えるケースがあります。事業承継税制の特例を活用できる場合もあるため、早めの対策が重要です。
相続税がかかるボーダーラインの目安
相続税が発生するかどうかは、遺産総額が基礎控除を超えるかどうかで決まります。以下の表は、法定相続人の人数別に「このラインを超えると相続税の申告義務がある」目安をまとめたものです。自宅の土地・建物(路線価・固定資産税評価額ベース)と預貯金の合計が基礎控除を超えるかどうかが判断の出発点になります。
| 法定相続人数 | 基礎控除額(=ボーダーライン) | 典型的な家族構成 | 申告義務の有無 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 子1人(配偶者なし) | 遺産総額が3,600万円超で申告必要 |
| 2人 | 4,200万円 | 配偶者+子1人 | 遺産総額が4,200万円超で申告必要 |
| 3人 | 4,800万円 | 配偶者+子2人 | 遺産総額が4,800万円超で申告必要 |
| 4人 | 5,400万円 | 配偶者+子3人 | 遺産総額が5,400万円超で申告必要 |
国税庁の統計では、亡くなった方のうち相続税の申告が必要だったのは約9.6%(令和5年分)です。つまり約10人に1人が課税対象となっています。2015年の基礎控除引き下げ以降、課税対象者は大幅に増加しました。特に都市部では不動産の評価額が高いため、持ち家と退職金・預貯金の合計で基礎控除を超えるケースが多く見られます。地方であっても、農地や山林を含めると想定以上に課税財産が積み上がる場合があるため注意が必要です。
ただし、基礎控除を超えるかどうかの判定は、生命保険や退職金の非課税枠、債務控除、葬式費用を差し引いた後の「課税価格」で行います。たとえば遺産総額5,000万円でも、生命保険非課税枠1,500万円と債務500万円がある場合、課税価格は3,000万円となり、相続人3人(基礎控除4,800万円)なら課税されません。
また、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用した結果、税額がゼロになる場合は、基礎控除を超えていても「納付税額ゼロ」となりますが、相続税の申告は必要です。申告しなければ特例の適用を受けられません。「基礎控除以下=申告不要」と「特例適用で税額ゼロ=申告必要だが納付なし」の違いを理解しておくことが重要です。相続税の申告手続き全般については 相続税の申告手続き で解説しています。
3つの計算例で理解する相続税
ここでは、典型的な3つのケースを使って相続税の計算過程を具体的に見ていきます。シミュレーターの結果と照合しながら理解を深めてください。なお、実際の相続では債務(住宅ローン残高・未払税金・医療費等)と葬式費用(通常150~200万円程度)を差し引くことができます。以下の計算例では簡略化のため債務・葬式費用はゼロとして計算しています。
計算例1:配偶者+子1人、遺産6,000万円のケース
前提条件:遺産総額6,000万円(すべて預貯金)、法定相続人は配偶者と子1人の2人。
- 課税価格の合計:6,000万円
- 基礎控除:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
- 課税遺産総額:6,000万円-4,200万円=1,800万円
- 法定相続分で按分:配偶者1/2(900万円)、子1/2(900万円)
- 税率適用:各人900万円×10%=90万円 → 相続税の総額180万円
- 配偶者の税額軽減により配偶者分90万円が非課税 → 子の納付税額90万円
計算例2:配偶者+子2人、遺産1億円のケース
前提条件:遺産総額1億円(不動産5,000万円+預貯金5,000万円)、法定相続人は配偶者と子2人の3人。
- 課税価格の合計:1億円
- 基礎控除:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
- 課税遺産総額:1億円-4,800万円=5,200万円
- 法定相続分で按分:配偶者1/2(2,600万円)、子各1/4(1,300万円ずつ)
- 税率適用:配偶者 2,600万円×15%-50万円=340万円、子各 1,300万円×15%-50万円=145万円 → 相続税の総額630万円
- 配偶者が法定相続分(1/2)を取得すれば配偶者の税額はゼロ → 子2人合計の納付税額315万円
計算例3:配偶者+子2人、遺産2億円+小規模宅地特例適用
前提条件:遺産総額2億円(自宅土地8,000万円+建物2,000万円+預貯金8,000万円+生命保険2,000万円)、法定相続人は配偶者と子2人の3人。配偶者が自宅を相続し小規模宅地等の特例を適用。
- 生命保険非課税枠:500万円×3人=1,500万円 → 課税対象の保険金=500万円
- 小規模宅地等の特例:自宅土地8,000万円×80%減=6,400万円減額 → 土地の評価額=1,600万円
- 課税価格の合計:1,600万円+2,000万円+8,000万円+500万円=1億2,100万円
- 基礎控除:4,800万円 → 課税遺産総額:1億2,100万円-4,800万円=7,300万円
- 法定相続分で按分:配偶者1/2(3,650万円)、子各1/4(1,825万円ずつ)
- 税率適用:配偶者 3,650万円×20%-200万円=530万円、子各 1,825万円×15%-50万円=223.75万円 → 相続税の総額977.5万円
- 配偶者の税額軽減を適用 → 子2人合計の納付税額 約488万円
特例なしで計算すると相続税の総額は約2,500万円に達するため、小規模宅地等の特例と生命保険非課税枠で約1,500万円以上の節税効果があることがわかります。このように、同じ遺産総額でも特例の適用有無で納付額が大きく変わるため、シミュレーション段階から特例の適用可能性を確認することが重要です。
以下の比較表で3つのケースの計算結果を一覧で確認してみましょう。遺産規模が大きくなるほど税率の累進性が効いて税額が増えますが、各種控除・特例を正しく活用することで実効税負担率を大幅に引き下げることが可能です。
| 項目 | 例1:6,000万円 | 例2:1億円 | 例3:2億円(特例適用) |
|---|---|---|---|
| 遺産総額 | 6,000万円 | 1億円 | 2億円 |
| 法定相続人 | 配偶者+子1人 | 配偶者+子2人 | 配偶者+子2人 |
| 基礎控除額 | 4,200万円 | 4,800万円 | 4,800万円 |
| 課税遺産総額 | 1,800万円 | 5,200万円 | 7,300万円 |
| 相続税の総額 | 180万円 | 630万円 | 977.5万円 |
| 配偶者控除後の納付額 | 90万円 | 315万円 | 約488万円 |
シミュレーション結果の活用法
相続税のシミュレーション結果は、あくまで「概算の目安」です。しかし、この概算値を起点に以下の対策を検討することで、実際の節税効果を大きく高められます。
活用法1:生前贈与のスケジュール設計
概算税額は、暦年贈与や相続時精算課税制度を検討するための出発点です。ただし、暦年贈与には相続開始日に応じた加算対象期間があり、相続時精算課税にも年分・贈与者ごとの計算があります。贈与額に相続税率を掛けただけで節税額を確定せず、税務上の加算額と既納贈与税の控除を確認してください。
活用法2:生命保険の非課税枠の最適化
法定相続人が3人の場合、1,500万円の非課税枠があります。現在の保険金が非課税枠に達していなければ、追加加入で課税財産を圧縮できます。生命保険の相続税非課税枠のページで詳しく解説しています。
活用法3:二次相続まで見据えた分割協議
一次相続で配偶者に多く相続させると一次相続の税額は抑えられますが、二次相続で税額が跳ね上がる可能性があります。シミュレーターで一次・二次それぞれの概算を出し、合計額が最小になる分割比率を検討しましょう。
活用法4:納税資金の準備
相続税の申告・納付期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。不動産が主な財産の場合、納税資金が不足する事態も起こりえます。シミュレーション結果をもとに、生命保険や預金でどの程度の納税資金を確保すべきかを事前に把握しておくことが大切です。詳しくは 相続税の申告手続き をご確認ください。
活用法5:遺言書・家族信託の検討材料
シミュレーション結果をもとに、どの財産を誰に渡すかを遺言書に明記しておくと、遺産分割協議の負担を大幅に減らせます。特に不動産と預貯金の組み合わせで各相続人の納税資金まで考慮した分割案を記載しておくことが望ましいです。配偶者に自宅、子に預貯金を渡す場合と、配偶者に預貯金を多めに渡す場合で税額がどう変わるかをシミュレーションしておけば、家族全員が納得できる分割案の根拠になります。
活用法6:相続税の申告要否の判定
シミュレーション結果で課税遺産総額がゼロまたはマイナスになった場合、基礎控除の範囲内であり、原則として相続税の申告は不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用して初めてゼロになる場合は、申告書の提出が必要です。シミュレーション時に「特例適用前の課税価格」と「特例適用後の課税価格」の両方を確認しておくと、申告要否の判断に役立ちます。
相続税のシミュレーションは定期的に見直すことをおすすめします。財産の増減(退職金の受け取り、不動産の売却、生前贈与の実行等)によって概算税額は変動します。年に一度、財産一覧を更新してシミュレーションし直すことで、対策の進捗を確認できます。特に定年退職の前後は退職金の受け取りで財産が大きく増えるタイミングです。退職前にシミュレーションを行い、退職金を含めた遺産総額を把握しておくことで、必要な対策を早期に開始できます。
シミュレーション結果はあくまで概算であり、実際の相続税の計算は個別の事情(不動産の形状や立地による補正、債務の詳細、過去の贈与歴など)で大きく変わります。概算税額が100万円を超える場合や、遺産に不動産が含まれる場合は、税理士への相談を強くおすすめします。FP相談では、税理士への橋渡しも含めた家計全体の整理をお手伝いしています。
よくある質問(FAQ)
相続税に関してよく寄せられる質問と回答をまとめました。シミュレーターの使い方や計算結果の解釈に迷ったときの参考にしてください。より詳しい制度解説は各リンク先のページをご確認ください。
Q. 相続税はいくらから発生しますか?
遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えた分にかかります。法定相続人が2人なら4,200万円、3人なら4,800万円を超えた時点から課税対象です。基礎控除以下であれば、相続税の申告自体が不要です。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用して税額がゼロになる場合は、申告は必要です。
Q. 配偶者の税額軽減はいくらまで非課税ですか?
配偶者が取得した財産は、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額まで相続税が非課税になります。この特例は非常に強力ですが、一次相続で使いすぎると二次相続の負担が増えるため、一次・二次のトータルで検討することが重要です。詳しくは 配偶者の税額軽減の詳細解説 をご覧ください。
Q. 生命保険金の相続税非課税枠はいくらですか?
500万円×法定相続人の数が非課税枠です。受取人が法定相続人の場合に限り適用されます。相続人が3人であれば1,500万円まで非課税です。孫を受取人にした場合は非課税枠の対象外となるため注意が必要です。なお、死亡退職手当金にも同額の非課税枠(500万円×法定相続人数)があります。詳しくは 生命保険の相続税非課税枠を徹底解説 をご覧ください。
Q. 小規模宅地等の特例で何割減額されますか?
特定居住用宅地(自宅の土地)なら330㎡まで80%減額されます。たとえば路線価評価額5,000万円の自宅敷地であれば、評価額が1,000万円に圧縮されます。適用要件として、配偶者が取得するか、同居していた親族が相続税の申告期限まで居住・保有を継続すること等が必要です。
Q. 相続税の申告期限はいつですか?
被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。期限内に遺産分割が確定しない場合でも、法定相続分で仮の申告を行い、分割確定後に更正の請求・修正申告を行います。期限を過ぎると延滞税や加算税が課されます。相続税の申告手続きで詳しく解説しています。
Q. 不動産の相続税評価額と市場価格(時価)は違いますか?
異なります。土地の路線価は公示価格の約80%、建物の固定資産税評価額は時価の約50~70%が目安です。そのため、同じ金額の現金と不動産を比べると、不動産のほうが相続税の課税対象額は低くなります。路線価図は国税庁の路線価図・評価倍率表で確認可能です。
Q. シミュレーション結果と実際の税額が違うのはなぜですか?
シミュレーションは入力された数値に基づく概算です。実際の税額は、不動産の詳細な評価(補正率の適用など)、債務・葬式費用の正確な金額、各種特例の適用判定、相続開始日に応じた生前贈与の加算などにより変動します。正確な税額は税理士に依頼して申告書を作成する段階で確定します。
Q. 相続税対策は何から始めればよいですか?
まずは財産の棚卸しから始めます。不動産・預貯金・有価証券・生命保険・退職金など、すべての財産を一覧化し、おおよその評価額を把握します。次にシミュレーターで各人の税額調整前の総額を確認し、基礎控除を超えるかどうかの目安にします。超える場合は、相続・贈与の基本ガイドを参考に、生前贈与・生命保険の活用・遺言書の作成など具体的な対策を検討しましょう。暦年贈与は各年の贈与税が0円でも、相続開始日に応じた加算対象期間内の贈与が相続税の課税価格へ加算されることがあります。将来の相続税を含む節税額は、この結果だけでは確定できません。
Q. 相続税は分割払い(延納)や物納はできますか?
原則として相続税は申告期限までに現金で一括納付しますが、一括納付が困難な場合は延納(分割払い)が認められます。延納の場合は利子税がかかります。さらに延納でも納付が困難な場合に限り、不動産等の現物で納める物納が認められることもあります。ただし、物納は要件が厳しく、認められるケースは限定的です。いずれも税務署への事前申請が必要です。
Q. 生前贈与と相続、どちらが有利ですか?
一概にどちらが有利とは言えません。暦年課税と相続時精算課税では将来の相続税への反映も異なります。教育資金の一括贈与非課税は2026年3月31日で新規適用を終了し、結婚・子育て資金の一括贈与非課税は2027年3月31日までとされています。制度名だけで選ばず、贈与日現在の要件を国税庁または税理士へ確認してください。
相続税の計算で見落としやすい財産
相続税のシミュレーションでは「預貯金と不動産」だけを入力して安心してしまいがちですが、実際の申告では以下の財産も課税対象に含まれます。見落としがあると、税務調査で指摘を受け追徴課税となるケースも少なくありません。
みなし相続財産(生命保険金・死亡退職金)
被相続人の死亡によって支払われる生命保険金や死亡退職金は、民法上の相続財産ではありませんが、税法上は「みなし相続財産」として課税対象になります。それぞれ「500万円×法定相続人数」の非課税枠がありますが、非課税枠を超えた部分は課税されます。法定相続人以外が受取人になっている保険金には非課税枠が適用されない点にも注意が必要です。
生前贈与加算(相続開始日により対象期間が異なる)
暦年課税による贈与の加算期間は段階的に3年から7年へ延長されます。国税庁によると、2026年12月31日以前に相続が開始した場合の加算対象期間は3年以内です。将来の相続を一律に「7年」とせず、実際の相続開始日と贈与日で確認してください。
名義預金
形式上は配偶者や子ども名義の口座であっても、実質的に被相続人が管理・出資していた預金は「名義預金」として相続財産に含まれます。税務調査では名義預金の指摘が最も多く、以下のポイントで判定されます。
- 口座の開設・届出印の管理を誰がしていたか
- 通帳やキャッシュカードを誰が保管していたか
- 入金の原資はどこから出ていたか
- 名義人本人がその預金の存在を認識していたか
名義預金と認定されると、贈与が成立していないとみなされ相続財産に加算されます。贈与の証拠として贈与契約書の作成や、受贈者自身による口座管理を徹底しておくことが防御策になります。
不動産の評価で見落としやすいポイント
前述のとおり土地は路線価方式または倍率方式で評価しますが、見落としやすいのは貸付地・借地権・農地・山林などです。貸している土地は借地権割合分を差し引けるため、自用地よりも評価が下がります。一方、被相続人が借地権を持っている場合はその借地権自体が相続財産となります。農地は農業投資価格で評価できる場合がありますが、転用許可が下りている農地は宅地並みの評価になるため注意が必要です。
上場株式の評価(4つの価格から最低額を選択)
上場株式は以下の4つの価格のうち最も低い金額で評価できます。
- 被相続人の死亡日の終値
- 死亡日の属する月の毎日の終値の月平均額
- 死亡日の属する月の前月の毎日の終値の月平均額
- 死亡日の属する月の前々月の毎日の終値の月平均額
株価が下落傾向にある場合は過去の月平均が低くなり、逆に上昇傾向なら死亡日の終値が最低になる可能性があります。いずれにしても4つすべてを確認し、最も有利な価格を選択することがポイントです。
その他の見落としやすい財産
| 財産の種類 | 評価方法 | 見落としやすいポイント |
|---|---|---|
| ゴルフ会員権 | 取引相場の70% | 取引相場のないものは預託金等を基に評価 |
| 書画・骨董品 | 売買実例価額または専門家の鑑定額 | 高額な美術品を自宅に保管している場合に申告漏れが多い |
| 自動車 | 売買実例価額(中古車査定額) | 高級車・クラシックカーは想定以上の評価額になることがある |
| 貸付金・未収金 | 元本+経過利息 | 親族や法人への貸付金を忘れているケースが多い |
| 暗号資産(仮想通貨) | 死亡日の取引価格 | 取引所の残高証明が必要。秘密鍵の所在確認も重要 |
相続税を合法的に減らす7つの方法
相続税対策は「脱税」ではなく、法律が認めた制度を正しく活用する「節税」です。以下の7つの方法は、いずれも税法上認められた合法的な手段であり、多くの税理士・FPが推奨しています。ただし、制度の併用には制限がある場合もあるため、実行前に専門家への確認をお勧めします。
1. 生前贈与(暦年110万円+非課税制度の活用)
暦年贈与の基礎控除は、受贈者1人あたり年間110万円です。ただし、相続開始日に応じた加算対象期間内の贈与は相続税の課税価格へ加算されることがあるため、「毎年110万円なら将来の相続税にも必ず影響しない」とは限りません。
さらに、以下の非課税制度を併用できます。
- 教育資金の一括贈与:新規適用は2026年3月31日で終了(それ以前に適用を受けた契約には継続ルールあり)
- 結婚・子育て資金の一括贈与:18歳以上50歳未満の子・孫に最大1,000万円まで非課税(2027年3月31日まで)
- 住宅取得等資金の贈与:省エネ住宅は最大1,000万円、一般住宅は500万円まで非課税
2. 生命保険の非課税枠の活用(500万円×法定相続人数)
前述のとおり、生命保険金には500万円×法定相続人数の非課税枠があります。相続人が3人なら1,500万円を非課税で受け取れるため、預貯金の一部を生命保険に振り替えるだけで課税財産を圧縮できます。一時払い終身保険など、高齢でも加入しやすい商品を活用するケースが多くみられます。
3. 小規模宅地等の特例(最大80%減額)
被相続人の自宅敷地を配偶者または同居親族が相続する場合、330㎡まで評価額の80%を減額できます。路線価評価額6,000万円の自宅敷地なら、特例適用後は1,200万円の評価となり、4,800万円分の課税財産が圧縮されます。詳しくは 小規模宅地等の特例の適用要件と計算方法 をご参照ください。
4. 配偶者の税額軽減(1.6億円 or 法定相続分)
配偶者が取得する財産は法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額まで非課税です。ただし、一次相続で配偶者に財産を集中させると二次相続の税負担が増大します。一次・二次のトータルで最適な分割比率をシミュレーションすることが大切です。
5. 養子縁組による法定相続人の増加
養子を迎えると法定相続人が増え、以下の3つの非課税枠が拡大します。
- 基礎控除:1人あたり600万円増加
- 生命保険金の非課税枠:1人あたり500万円増加
- 死亡退職金の非課税枠:1人あたり500万円増加
ただし、相続税の計算上カウントできる養子の数には制限があります。実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までです。また、孫を養子にすると相続税額が2割加算される点にも注意が必要です。
6. 不動産の活用(現金→不動産で評価額を圧縮)
現金1億円はそのまま1億円として課税されますが、これを不動産に変えると路線価(公示価格の約80%)や固定資産税評価額(時価の約50~70%)で評価されるため、課税対象額が下がります。さらに賃貸物件にすれば、借家権割合や借地権割合による追加的な評価減も受けられます。
注意:過度な不動産の評価圧縮
2022年の最高裁判決以降、相続直前の不動産購入による極端な評価圧縮は否認されるリスクが高まっています。不動産の取得目的・保有期間・借入の合理性などを総合的に判断されるため、節税だけを目的とした不動産購入は慎重に検討する必要があります。
7. 家族信託(認知症対策と財産管理の一元化)
家族信託とは、財産の所有者(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産の管理・処分を託す仕組みです。相続税の直接的な節税効果はありませんが、以下のメリットがあります。
- 認知症対策:判断能力が低下しても信託契約に基づき受託者が財産管理を継続できる
- 遺言の代替機能:二次相続以降の財産の承継先まで指定できる(遺言では一次相続の指定しかできない)
- 不動産の共有回避:受託者が一元管理することで、相続人間の共有による売却困難を防げる
家族信託は設計が複雑で、信託契約書の作成には専門家(司法書士・弁護士)の関与が不可欠です。相続対策の一環として検討する場合は、税理士・FPと連携して設計することをお勧めします。
| 対策方法 | 節税効果の目安 | 実行の難易度 | 着手推奨時期 |
|---|---|---|---|
| 暦年贈与(110万円/年) | 中〜大(長期ほど効果大) | 低い | 今すぐ |
| 生命保険の非課税枠 | 500万円×相続人数 | 低い | 今すぐ |
| 小規模宅地等の特例 | 大(最大80%減) | 中程度 | 居住要件を確認 |
| 配偶者の税額軽減 | 大(1.6億円まで非課税) | 中程度 | 分割協議時 |
| 養子縁組 | 基礎控除600万円+保険500万円増 | 中程度 | 家族と要相談 |
| 不動産の活用 | 評価額20〜50%圧縮 | 高い | 数年前から |
| 家族信託 | 間接的(認知症リスク回避) | 高い | 判断能力が十分なうちに |
シミュレーション結果の読み方と次のステップ
シミュレーターで概算税額を出したあと、その数字をどう解釈し、何をすべきかを整理します。
相続税がゼロでも申告が必要なケース
シミュレーション結果が「相続税ゼロ」であっても、以下の特例を適用して税額がゼロになった場合は相続税の申告義務があります。申告を怠ると、特例の適用が認められず本来の税額を請求されるリスクがあります。
- 配偶者の税額軽減を使って税額ゼロになった場合
- 小規模宅地等の特例を使って課税価格が基礎控除以下になった場合
- 特定計画山林の特例や農地等の納税猶予を適用する場合
一方、財産の総額が基礎控除額以下で、特例を使わなくても非課税であれば、申告は不要です。
概算と実際の乖離が大きくなるケース
シミュレーターの概算値と実際の申告額が大きく異なるのは、主に以下のパターンです。
| 乖離の原因 | 内容 | 影響の方向 |
|---|---|---|
| 不動産の評価差 | 路線価の補正率(奥行・間口・不整形地等)が反映されていない | 実際の方が低くなることが多い |
| 名義預金の存在 | 配偶者・子名義の預金が相続財産に加算される | 実際の方が高くなる |
| 生前贈与加算 | 相続開始日に応じた対象贈与を加算していない | 実際の方が高くなる |
| 債務・葬式費用 | 借入金・未払い税金・葬儀費用を控除していない | 実際の方が低くなる |
| 非上場株式 | 自社株の評価が複雑で概算に含めていない | ケースにより大きく変動 |
税理士に相談すべきタイミングの目安
以下のいずれかに該当する場合は、早めに相続税に強い税理士への相談をお勧めします。
- 課税遺産総額が5,000万円を超える見込みの場合
- 相続財産に不動産が含まれる場合(評価の適正化で税額が変わる)
- 非上場株式(自社株)がある場合
- 名義預金や生前贈与の整理が必要な場合
- 二次相続まで含めたトータルの節税設計を検討したい場合
- 遺産分割で家族間の合意形成が難しそうな場合
税理士報酬の相場
相続税申告の税理士報酬は、一般的に遺産総額の0.5~1.0%が目安です。遺産総額1億円の場合で50万~100万円程度となります。ただし、土地の筆数が多い場合や非上場株式の評価が必要な場合は加算されることがあります。報酬は事務所によって異なるため、複数の税理士事務所に見積もりを依頼し比較することをお勧めします。
FP相談と税理士の役割の違い
FPは家計全体の視点から相続対策の方向性を整理し、生前贈与・保険・不動産活用などの戦略を提案します。一方、税理士は具体的な税額計算と申告書の作成を担当します。まずFP相談で全体像を把握し、必要に応じて税理士をご紹介する流れが効率的です。
相続税シミュレーターに関するよくある質問(FAQ)
Q. シミュレーターに入力する不動産の金額は、固定資産税の評価額でよいですか?
土地については路線価で評価するのが原則です。路線価は国税庁の路線価図・評価倍率表で確認できます。路線価が設定されていない地域は倍率方式(固定資産税評価額×倍率)を使います。建物については固定資産税評価額をそのまま入力してください。不明な場合は、毎年届く固定資産税の納税通知書に記載されている評価額を目安にできます。
Q. 生前贈与をしている場合、シミュレーターにはどう入力すればよいですか?
相続開始日に応じた対象期間内の贈与は相続財産に加算されます。本シミュレーターでは期間や制度を自動判定しないため、国税庁資料や税理士により加算対象と確認できた合計額を「加算対象の贈与等」へ一度だけ入力し、財産総額へ重ねて含めないでください。表示結果は既納贈与税の控除などを行う前の相続税総額です。
Q. 二次相続のシミュレーションはどうすればよいですか?
一次相続で配偶者が取得した財産に、配偶者固有の財産(退職金・年金積立・預貯金等)を加えた金額を二次相続の遺産総額として入力します。二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、法定相続人も1人減るため、同じ遺産総額でも税額が一次相続より高くなるのが一般的です。一次と二次の合計で最も税額が小さくなる分割比率を探しましょう。
Q. 相続税の申告を自分でやることはできますか?
法律上、相続税の申告は納税者本人が行うことも可能です。ただし、不動産の評価・各種特例の適用判定・遺産分割協議書の作成など、専門知識を要する作業が多いため、税理士に依頼するのが一般的です。特に不動産が含まれる場合は、評価の適正化だけで税理士報酬以上の節税効果が得られるケースが多くあります。
Q. 相続税の税務調査はどのくらいの確率で入りますか?
国税庁の統計によると、相続税の申告件数に対する税務調査の実地調査割合は約20%前後です。特に遺産総額が大きいケース、申告漏れが疑われるケース(名義預金・海外資産など)は調査対象になりやすい傾向があります。申告内容に不備がなければ過度に心配する必要はありませんが、財産の漏れがないよう丁寧に棚卸しを行うことが大切です。
Q. 相続放棄をすると相続税はどうなりますか?
相続放棄をした人は最初から相続人でなかったとみなされます。ただし、相続税の基礎控除の計算における「法定相続人の数」には、相続放棄をした人も含めてカウントします。つまり、相続放棄によって基礎控除額が減ることはありません。相続放棄の手続きは家庭裁判所への申述が必要で、相続の開始を知った日から3か月以内が期限です。詳しくは 相続放棄の手続き・期限・必要書類 をご参照ください。
Q. 海外に住んでいる相続人がいる場合、相続税はどうなりますか?
日本の相続税は、被相続人または相続人が日本国内に住所を有する場合、国内外すべての財産が課税対象です。海外に住む相続人であっても、被相続人が日本に住所を有していれば、その相続人の取得した財産(国内外問わず)に日本の相続税がかかります。また、海外で相続税に相当する税を課された場合は、外国税額控除の適用を受けることができます。
Q. 相続時精算課税制度を使った贈与はシミュレーションにどう影響しますか?
相続時精算課税適用財産のうち、2023年12月31日以前に取得したものは原則として贈与時の価額を加算します。2024年1月1日以後に取得したものは、年分ごとに同制度の贈与価額合計から基礎控除110万円を差し引いた残額を加算し、同じ年に複数の特定贈与者がいる場合は基礎控除を各人の課税価格で按分します。本ツールは年分・贈与者・既納贈与税を自動判定しません。国税庁資料または税理士に確認した加算額だけを「加算対象の贈与等」へ一度だけ入力し、財産総額へ重ねて含めないでください。結果は既納贈与税相当額の控除前です。詳しくは 国税庁「相続時精算課税の選択」をご確認ください。
出典・改訂履歴・免責事項を見る
本ページの制度概要・要件・税率は、以下の公式情報を編集部が確認のうえ整理しています(執筆時点)。最新かつ正確な情報は必ず各公式サイトでご確認ください。FPは記事を直接監修してはおらず、関連テーマでご相談を受けるFPとしてご紹介しています。
最終確認日:2026年4月25日
※本記事は2026年4月時点の一般的な情報であり、個別の税務・経営・法務相談に代わるものではありません。各制度の適用要件・税額は個人の状況により異なります。実行にあたっては、必ず公式情報および税理士・社労士・FP・弁護士など専門家にご相談ください。本記事の情報により生じたいかなる損害についても、当サイトでは責任を負いかねます。
本相談は個別の法律・税務判断、申告、登記、交渉を代行するものではありません。必要な場合は、確認すべき専門家と論点を分けます。