税金・節税

不動産売却時の譲渡所得税はいくら?
5年の壁と税率の使い分け【2026】

税金と固定費を確認して毎月の手取りの余白を整える場面
税金や控除の確認を、毎月の手取りと将来資金の判断につなげます。

計算式:譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除

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目次(12セクション)
  1. 譲渡所得税の基本
  2. 5年の壁と税率の違い
  3. 譲渡所得の計算ステップ — 4段階で求める
  4. 取得費の落とし穴 — 概算5%と実額の差
  5. 譲渡費用に含められるもの・含められないもの
  6. 3,000万円特別控除の適用要件チェックリスト
  7. 10年超所有の軽減税率 — 条件と計算例
  8. 買換え特例・譲渡損失の繰越控除
  9. 相続・贈与で取得した不動産の譲渡所得
  10. 確定申告の流れと必要書類
  11. かんたん試算(5年の壁・3000万円控除・軽減税率対応)
  12. よくある質問(FAQ)

譲渡所得税の基本

不動産売却で発生する税金は、正確には「譲渡所得税+住民税+復興特別所得税」の3つの合算です。利益(譲渡所得)が出たときだけ課税され、損失なら税金はゼロ。買ったときより安く売れた場合は、原則として税金は発生しません。

5年の壁と税率の違い

所有期間区分所得税+住民税
5年超(長期)長期譲渡所得20.315%
5年以下(短期)短期譲渡所得39.63%
10年超かつマイホーム(軽減税率)軽減税率の特例6,000万円以下部分 14.21%

注意点として、所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定します。2020年6月に買って2025年8月に売ると一見5年超ですが、2025年1月1日時点ではまだ4年7か月なので短期扱い。1月以降に売却日をずらすだけで税額が半分になるケースがあるのは、この判定ルールのせいです。

譲渡所得の計算ステップ — 4段階で求める

譲渡所得税の計算は、次の4ステップで進めます。各ステップの数字を順番に求めれば、最終的な税額が出ます。

ステップ計算内容具体例(売却5,000万円の場合)
Step 1譲渡収入金額を確定5,000万円
Step 2取得費を算出(購入代金+取得時の諸費用−建物の減価償却費)3,200万円
Step 3譲渡費用を合算(仲介手数料・印紙税・測量費など)180万円
Step 4特別控除を適用(要件を満たす場合)3,000万円控除 → 課税譲渡所得 0円

計算式:課税譲渡所得 = 譲渡収入金額 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除額

上の例では、5,000万 − 3,200万 − 180万 = 1,620万円(控除前の譲渡所得)。ここからマイホーム売却なら3,000万円控除を差し引けるため、課税譲渡所得は0円=税額ゼロになります。

控除が使えない場合は、1,620万円 × 税率で税額が決まります。長期(20.315%)なら約329万円、短期(39.63%)なら約642万円と、税率で約313万円の差が出ます。

取得費の落とし穴 — 概算5%と実額の差

取得費とは、不動産を購入したときの代金+取得にかかった諸費用です。建物は経年で価値が下がるため、購入代金から減価償却費を差し引いた金額が取得費になります。

取得費に含められる主な項目

  • 土地・建物の購入代金
  • 購入時の仲介手数料
  • 登録免許税・不動産取得税・印紙税
  • 測量費・造成費・整地費
  • 建物のリフォーム費用(資本的支出に該当するもの)
  • 立退料(借家人に支払った場合)

概算取得費(5%ルール)との比較

購入時の契約書が見つからない場合、売却価格の5%を取得費とできます(概算取得費)。ただし、実際の取得費が5%を大幅に上回る場合は大きく損をします。

売却価格概算取得費(5%)実額取得費(例)譲渡所得の差
5,000万円250万円3,200万円2,950万円
3,000万円150万円2,000万円1,850万円
8,000万円400万円5,500万円5,100万円

5,000万円で売却した場合、概算取得費だと譲渡所得が4,750万円ですが、実額なら1,800万円。長期税率20.315%で計算すると税額差は約599万円にもなります。契約書が見つからなくても、通帳の振込記録・住宅ローンの返済表・不動産会社の販売資料など間接的な証拠で実額を立証できた裁決例もあります。

譲渡費用に含められるもの・含められないもの

譲渡費用は、売却のために直接かかった費用です。取得費と混同しやすいため、表で整理します。

項目譲渡費用になる譲渡費用にならない
仲介手数料○(売却時のもの)×(購入時のもの → 取得費)
印紙税○(売買契約書に貼付)
測量費・境界確定費○(売却のために実施)
建物の取壊し費用○(更地にして売却)
立退料○(借家人を退去させるため)
固定資産税×(所有期間中の維持費)
修繕費×(維持管理費扱い)
引越し費用×(個人的な費用)
抵当権抹消費用×(ローン関連費用)

よくある誤りは、固定資産税の精算金を譲渡費用に入れてしまうケースです。売買時に買主から受け取る固定資産税の精算金は譲渡収入に加算する必要があり、費用として差し引くことはできません。

3,000万円特別控除の適用要件チェックリスト

マイホーム(居住用財産)を売却した場合に使える最大3,000万円の特別控除は、適用要件が細かく定められています。以下のチェックリストで確認してください。

適用を受けるための主な要件

  • ☑ 自分が住んでいる家屋、またはその敷地を売ること
  • ☑ 以前住んでいた家屋の場合は、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること
  • ☑ 売った年の前年・前々年にこの特例を受けていないこと
  • ☑ 売主と買主が親子・夫婦など特別な関係でないこと
  • ☑ 売った年の前年・前々年に「買換え特例」「譲渡損失の損益通算」を受けていないこと

適用できないケース

  • ✗ 別荘やセカンドハウスなど、一時的な居住目的の物件
  • ✗ この特例を受けるためだけに入居した家屋
  • ✗ 建物を取り壊してから1年超経過後に売却した場合
  • ✗ 取壊し後に駐車場などの用途で使用してしまった場合

3,000万円控除を使った場合の税額比較

譲渡所得(控除前)控除なしの税額(長期)3,000万円控除後の税額節税額
1,500万円約305万円0円約305万円
3,000万円約609万円0円約609万円
4,500万円約914万円約305万円約609万円
6,000万円約1,219万円約609万円約609万円

控除前の譲渡所得が3,000万円以下であれば税額ゼロになります。3,000万円を超えても、超過分にだけ税率がかかるため、控除のインパクトは常に大きいです。

10年超所有の軽減税率 — 条件と計算例

マイホームを売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合、3,000万円特別控除と併用して軽減税率の特例を適用できます。

通常の長期税率との比較

課税譲渡所得通常の長期(20.315%)10年超軽減税率差額
2,000万円約406万円約284万円(14.21%)約122万円お得
4,000万円約813万円約568万円(14.21%)約244万円お得
6,000万円約1,219万円約853万円(14.21%)約366万円お得
8,000万円約1,625万円約1,259万円(※)約366万円お得

※ 6,000万円超の部分は通常の長期税率(20.315%)が適用されるため、8,000万円の場合は 6,000万円×14.21% + 2,000万円×20.315% で計算します。

計算例:所有12年のマイホームを7,000万円で売却

  • 売却価格:7,000万円
  • 取得費(減価償却後):2,800万円
  • 譲渡費用:200万円
  • 譲渡所得(控除前):7,000万 − 2,800万 − 200万 = 4,000万円
  • 3,000万円控除後:4,000万 − 3,000万 = 1,000万円
  • 税額(10年超軽減):1,000万 × 14.21% = 約142万円
  • 参考:通常の長期税率なら 1,000万 × 20.315% = 約203万円 → 約61万円の節税

買換え特例・譲渡損失の繰越控除

マイホーム売却に関連する特例は3,000万円控除だけではありません。状況に応じて、買換え特例や譲渡損失の繰越控除が使える場合があります。

特例の使い分け早見表

状況使える特例ポイント
売却益が出た+新居を買わない3,000万円特別控除最も使われる。確定申告で適用
売却益が出た+新居を買う3,000万円控除 or 買換え特例買換え特例は課税繰延べ。売却益が大きいと有利な場合あり
売却損が出た+新居を買う買換え等の譲渡損失の損益通算・繰越控除給与所得等と相殺でき、翌年以降3年繰越可
売却損が出た+ローン残高 > 売却額特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除新居購入不要。オーバーローン分が限度
相続した空き家を売却被相続人居住用財産の3,000万円控除1981年5月31日以前築・相続後3年以内等の要件あり

買換え特例の計算例

売却額5,000万円・取得費1,500万円のマイホームを売り、6,000万円の新居を購入した場合:

  • 3,000万円控除を選択:譲渡所得3,500万円 − 3,000万円 = 500万円 × 20.315% = 約102万円を今年納税
  • 買換え特例を選択:売却額 ≦ 新居購入額 なので今年の納税は0円(将来の売却時に繰延べ)

買換え特例は課税を「消す」のではなく「先送り」する制度です。新居を将来売却するときに、繰延べた譲渡所得が課税されます。長期保有して軽減税率を使う戦略と組み合わせると有効です。

相続・贈与で取得した不動産の譲渡所得

相続や贈与で取得した不動産を売却する場合、取得費と所有期間の扱いに特別なルールがあります。

相続・贈与の取得費と所有期間

取得方法取得費所有期間の起算日
相続被相続人の取得費をそのまま引き継ぐ被相続人の取得日を引き継ぐ
贈与贈与者の取得費をそのまま引き継ぐ贈与者の取得日を引き継ぐ
遺贈(包括遺贈)被相続人の取得費を引き継ぐ被相続人の取得日を引き継ぐ
遺贈(特定遺贈・相続人以外)時価で取得したものとして扱う場合あり遺贈時から起算

相続税の取得費加算の特例

相続で取得した不動産を、相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却した場合、相続税額の一部を取得費に加算できます。

  • 加算できる金額 = その人の相続税額 ×(売却した財産の課税価格 ÷ その人の課税価格の合計)
  • 相続税を多く支払った場合、取得費が増えて譲渡所得が減り、節税になる
  • 期限は「相続開始日の翌日から3年10か月以内の売却」

計算例:相続した土地を売却

  • 父が40年前に1,000万円で購入した土地を相続
  • 売却価格:4,000万円 / 譲渡費用:150万円
  • 相続税のうち、この土地に対応する額:300万円
  • 取得費:1,000万円 + 300万円(取得費加算)= 1,300万円
  • 課税譲渡所得:4,000万 − 1,300万 − 150万 = 2,550万円
  • 税額(長期):2,550万 × 20.315% = 約518万円
  • 取得費加算がなければ:(4,000万 − 1,000万 − 150万) × 20.315% = 約579万円 → 約61万円の節税

確定申告の流れと必要書類

不動産を売却して譲渡所得が発生した場合、または特別控除・損益通算の適用を受ける場合は、売却した翌年の2月16日〜3月15日に確定申告が必要です。損失の場合でも繰越控除を使うなら申告が必要です。

確定申告に必要な書類一覧

書類入手先用途
確定申告書B税務署・e-Tax申告書本体
譲渡所得の内訳書税務署・e-Tax売却の詳細を記載
売買契約書(売却時)手元保管売却価格の証明
売買契約書(購入時)手元保管取得費の証明
仲介手数料の領収書手元保管譲渡費用の証明
登記事項証明書法務局所有期間の確認
住民票の写し(除票)市区町村居住用財産の要件確認
建物の固定資産税評価証明書市区町村減価償却費の計算

確定申告のスケジュール

  • 売却年:必要書類を整理。不足する書類は早めに取り寄せる
  • 翌年1月:e-Taxで事前準備。マイナンバーカードの確認
  • 翌年2月16日〜3月15日:確定申告書を提出(e-Tax推奨)
  • 翌年4月頃:所得税の納付(振替納税なら4月中旬に口座引落し)
  • 翌年6月〜:住民税に反映(給与天引き or 普通徴収で納付)

申告期限を過ぎると、3,000万円特別控除や軽減税率の特例が使えなくなる場合があります。特に特別控除は期限内申告が要件となっているため、必ず期間内に申告してください。

かんたん試算(5年の壁・3000万円控除・軽減税率対応)

数字を入れると譲渡所得と税額が表示されます。

よくある質問(FAQ)

譲渡所得税はいつ払うのですか?
不動産を売却した翌年の確定申告期間(2月16日〜3月15日)に申告・納付します。売却した年ではなく翌年である点に注意してください。振替納税を選択すれば4月中旬の口座引落しにできます。住民税は翌年6月以降に反映されます。
取得費が不明な場合はどうなりますか?
売却価格の5%を概算取得費として使えます。ただし実際の取得費がそれより高ければ、税額が大幅に増えてしまいます。購入時の売買契約書が見つからなくても、通帳の振込記録・住宅ローンの返済表・不動産会社の当時の販売資料・登記簿の抵当権設定額などから実額を推定できる場合があります。税理士に相談する価値が大きい論点です。
3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できますか?
原則として併用できません。3,000万円特別控除を適用すると、新たに購入した住宅の住宅ローン控除は、入居年とその前後2年間(計5年間)使えなくなります。売却益の大きさと新居のローン残高によって、どちらが有利かは変わります。事前のシミュレーションが重要です。
相続した不動産を売った場合の所有期間はどう数えますか?
相続・贈与で取得した不動産は、被相続人(元の所有者)の取得日をそのまま引き継ぎます。たとえば親が30年前に購入した土地を相続して売却すれば、所有期間は30年として長期譲渡所得(20.315%)が適用されます。相続してからの年数ではない点がポイントです。
譲渡損失が出た場合、他の所得と相殺できますか?
マイホームの買換えで譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たせば給与所得や事業所得と損益通算ができます。さらに、その年で引ききれなかった損失は翌年以降3年間繰り越して控除できます。ただし、投資用不動産の譲渡損失は不動産所得以外の所得との通算ができない点に注意が必要です。
夫婦共有名義の不動産を売った場合、3,000万円控除はどうなりますか?
夫婦それぞれが持分に応じた譲渡所得を計算し、各自が3,000万円特別控除を適用できます。つまり共有名義であれば最大6,000万円まで控除が可能です。ただし、夫婦それぞれが「居住用財産の譲渡」の要件を満たしている必要があり、名義だけ共有で片方が住んでいないケースでは適用できません。

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本ページの制度概要・要件・税率は、以下の公式情報を編集部が確認のうえ整理しています(執筆時点)。最新かつ正確な情報は必ず各公式サイトでご確認ください。FPは記事を直接監修してはおらず、関連テーマでご相談を受けるFPとしてご紹介しています。

最終確認日:2026年5月15日

※本記事は2026年5月時点の一般的な情報であり、個別の税務・経営・法務相談に代わるものではありません。各制度の適用要件・税額は個人の状況により異なります。実行にあたっては、必ず公式情報および税理士・社労士・FP・弁護士など専門家にご相談ください。本記事の情報により生じたいかなる損害についても、当サイトでは責任を負いかねます。

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