iDeCo改正のポイント【2025〜2026】
拠出上限・受給開始・5年→10年ルール
2025〜2026年に予定されているiDeCo(個人型確定拠出年金)改正の主要論点。
目次(13セクション)
- iDeCo改正の全体像|2024〜2026年のロードマップ
- 2024年12月改正の概要|DB併用者の上限引き上げと事業主証明の廃止
- 2025年税制改正大綱|掛金上限の引き上げ(施行は2026年12月)
- 加入年齢の拡大|70歳まで加入可能に
- 事業主の掛金拠出|iDeCo+(イデコプラス)の活用
- 小規模企業共済との併用戦略|個人事業主の最適解
- DB併用者・公務員の変更点|掛金枠の再設計
- 受取時の税制|退職所得控除と5年→10年ルール問題
- 運用商品の選び方|事業主が押さえるべきポイント
- 金融機関の手数料比較|コストで差がつく長期運用
- 企業型DCからの移換手続き|法人成り・転職時の注意点
- iDeCo改正対応チェックリスト|事業主が今やるべきこと
- よくある質問(FAQ)
iDeCo改正の全体像|2024〜2026年のロードマップ
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、2001年の制度創設以来、数年おきに拡充されてきました。とりわけ2022年以降は改正ペースが加速しており、2024年12月・2025年税制改正大綱・2026年以降の検討事項と、立て続けに制度変更が予定されています。
事業主・フリーランスにとって、iDeCoは「節税」と「老後資金形成」を同時に実現できる数少ない制度です。改正の全体像を把握し、自分に関係する変更点を見落とさないことが重要です。
| 時期 | 主な改正内容 | 事業主への影響 |
|---|---|---|
| 2017年1月 | 加入対象を専業主婦・公務員等に拡大 | 第1号被保険者の上限 月68,000円が確定 |
| 2022年4月 | 加入年齢上限を60歳→65歳に引き上げ | 60歳以降も国民年金任意加入なら拠出継続可能 |
| 2022年4月 | 受給開始年齢の上限を70歳→75歳に拡大 | 運用期間の延長で受取タイミングに柔軟性 |
| 2024年12月 | DB併用者の上限引き上げ・事業主証明廃止 | 従業員のiDeCo加入手続きの負担軽減 |
| 2026年12月(予定) | 掛金上限引き上げ(第1号:月75,000円等) | 年間84,000円の追加所得控除が可能に |
| 2026年以降(検討中) | 5年ルール→10年ルールへの厳格化 | 退職金との受取間隔の再設計が必要 |
以下、各改正の詳細を時系列で解説します。
2024年12月改正の概要|DB併用者の上限引き上げと事業主証明の廃止
2024年12月1日に施行された改正は、主に会社員・公務員側の制度改善です。ただし事業主にとっても、従業員を雇用している場合や法人成りを検討している場合に影響があります。
改正点1:DB等の他制度加入者の掛金上限引き上げ
確定給付企業年金(DB)や厚生年金基金に加入している会社員・公務員のiDeCo掛金上限が、月額1.2万円から月額2万円に引き上げられました。公務員も同様に月2万円まで拠出できるようになっています。
従来、DBに加入している会社員は月1.2万円しかiDeCoに拠出できず、節税効果も限定的でした。月2万円への引き上げにより、年間の所得控除額は14.4万円から24万円に増加します。
改正点2:事業主証明書の廃止
2024年12月以降、会社員がiDeCoに新規加入・変更届を出す際に、勤務先の事業主が発行する「事業主証明書(事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書)」が不要になりました。
これまで会社員がiDeCoに加入するには、会社の人事・総務部門に証明書の発行を依頼する必要がありました。中小企業では手続きに数週間かかることも多く、加入の障壁になっていました。
事業主にとっての意味
従業員を雇用している個人事業主は、従業員からの事業主証明書の発行依頼がなくなります。事務負担は減りますが、逆に従業員のiDeCo加入状況を把握しにくくなるため、企業型DCとの調整が必要な場合は自社で確認する仕組みを設けましょう。
2025年税制改正大綱|掛金上限の引き上げ(施行は2026年12月)
2025年度の税制改正大綱で、iDeCoの掛金上限が大幅に引き上げられることが決まりました。施行時期は2026年12月の予定です。
加入者区分別の掛金上限比較(改正前後)
| 加入者区分 | 改正前(月額) | 改正後(月額) | 増加額 |
|---|---|---|---|
| 第1号被保険者(個人事業主) | 68,000円 | 75,000円 | +7,000円 |
| 会社員(企業年金なし) | 23,000円 | 62,000円 | +39,000円 |
| 会社員(企業型DCのみ) | 20,000円 | 62,000円(合算枠) | 条件による |
| 会社員(DB等あり) | 20,000円 | 62,000円(合算枠) | 条件による |
| 公務員 | 20,000円 | 62,000円(合算枠) | 条件による |
| 第3号被保険者(専業主婦等) | 23,000円 | 62,000円 | +39,000円 |
個人事業主の節税シミュレーション
個人事業主が改正後の上限月75,000円を満額拠出した場合の節税効果を試算します(国民年金基金・付加年金に未加入の場合)。
| 課税所得 | 所得税率 | 所得税の節税額 | 住民税の節税額 | 合計節税額 |
|---|---|---|---|---|
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 180,000円 | 90,000円 | 270,000円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 207,000円 | 90,000円 | 297,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 297,000円 | 90,000円 | 387,000円 |
改正前(月68,000円=年81.6万円)と比較すると、年間の追加節税額は所得税率20%の場合で約25,200円、33%の場合で約36,120円です。金額としては大きくありませんが、30年間の拠出で累計75万〜108万円の差が生まれます。
国民年金基金・付加年金との合算に注意
月75,000円は国民年金基金・付加年金との合算枠です。国民年金基金に月30,000円拠出中の方は、iDeCoの上限は月45,000円になります。付加年金(月400円)に加入中の方は月74,600円が上限です。
加入年齢の拡大|70歳まで加入可能に
2025年税制改正大綱では、iDeCoの加入可能年齢を現行の65歳未満から70歳未満に引き上げることも盛り込まれました。
現行制度と改正後の比較
| 項目 | 現行 | 改正後(2026年12月〜) |
|---|---|---|
| 加入可能年齢 | 65歳未満 | 70歳未満 |
| 加入要件(第1号) | 60歳以降は国民年金任意加入が条件 | 国民年金に加入していなくても可能 |
| 受給開始年齢 | 60〜75歳 | 60〜75歳(変更なし) |
事業主にとってのメリット
個人事業主やフリーランスには定年がありません。60歳以降も事業を続ける方にとって、iDeCoの加入期間を延長できることは次のメリットがあります。
- 節税期間の延長:65歳から70歳まで追加5年間、最大で年間90万円(月75,000円)の所得控除を受けられる
- 退職所得控除の積み増し:加入年数が増えると退職所得控除額も増える(20年超の部分は1年あたり70万円)
- 運用期間の延長:受給開始を75歳まで遅らせれば、最大で45年間の長期運用が可能
ただし、70歳まで拠出を続ける場合は受取開始時期との兼ね合いを慎重に検討する必要があります。75歳が受給開始の上限であるため、70歳から拠出を始めると最短でも5年しか運用できません。既に加入中の方が拠出期間を延長する場合に最も効果的です。
事業主の掛金拠出|iDeCo+(イデコプラス)の活用
従業員を雇用している中小事業主は、iDeCo+(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)を活用することで、従業員のiDeCo掛金の一部または全部を事業主が上乗せ拠出できます。
iDeCo+の概要
- 対象:企業型DC・DB・厚生年金基金のいずれも実施していない従業員300人以下の中小企業
- 拠出額:事業主掛金+加入者掛金の合計で月5,000円以上、掛金上限以下(1,000円単位)
- 事業主側のメリット:事業主が拠出した掛金は全額損金算入。社会保険料の算定基礎にも含まれない
- 従業員側のメリット:事業主拠出分は従業員の給与所得にならず、所得税・住民税・社会保険料がかからない
企業型DCとの比較
| 項目 | iDeCo+ | 企業型DC |
|---|---|---|
| 導入コスト | 低い(既存のiDeCo口座を利用) | 高い(規約策定・厚労省届出が必要) |
| 運営管理手数料 | 従業員個人が負担 | 事業主が負担 |
| 投資教育義務 | 努力義務 | 配慮義務(実質的に必須) |
| 加入対象 | iDeCoに加入している従業員のみ | 原則として全従業員 |
| 運用商品 | 従業員が自分で選んだ金融機関の商品 | 事業主が選定した運営管理機関の商品 |
従業員数が少ない事業所では、企業型DCの導入・運営コストに見合わないケースが多く、iDeCo+のほうが現実的な選択肢です。従業員の福利厚生を充実させつつ、事業主側も損金算入のメリットを得られます。
小規模企業共済との併用戦略|個人事業主の最適解
個人事業主が老後資金を準備する手段は、iDeCo以外にも小規模企業共済と経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)があります。これらは併用可能であり、組み合わせることで節税効果を最大化できます。
3つの制度の比較
| 項目 | iDeCo | 小規模企業共済 | 経営セーフティ共済 |
|---|---|---|---|
| 掛金上限(月額) | 75,000円(改正後) | 70,000円 | 200,000円 |
| 年間最大拠出額 | 900,000円 | 840,000円 | 2,400,000円 |
| 所得控除の種類 | 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済等掛金控除 | 必要経費(事業所得から控除) |
| 受取時の課税 | 退職所得 or 雑所得 | 退職所得 or 雑所得 | 事業所得(解約時に益金) |
| 中途解約 | 原則60歳まで不可 | 可能(元本割れリスクあり) | 12か月以上で可能 |
| 貸付制度 | なし | あり(掛金の7〜9割) | あり(掛金の10倍まで) |
併用時の年間節税シミュレーション(課税所得700万円の場合)
iDeCo(月75,000円)と小規模企業共済(月70,000円)を満額併用した場合:
- 年間拠出額の合計:90万円 + 84万円 = 174万円
- 所得税の節税額(税率23%):174万円 × 23% = 約40万円
- 住民税の節税額(税率10%):174万円 × 10% = 約17.4万円
- 年間合計節税額:約57.4万円
さらに経営セーフティ共済(月20万円・年240万円)を加えると、必要経費としての控除が上乗せされます。ただし経営セーフティ共済は解約時に全額が益金算入されるため、廃業年や所得が低い年に解約するなど、出口戦略が重要です。
併用の優先順位
資金に余裕がない場合の優先順位は、(1)iDeCo →(2)小規模企業共済 →(3)経営セーフティ共済が基本です。iDeCoは60歳まで引き出せないため流動性は最も低いですが、運用益が非課税であること、受取時の退職所得控除が手厚いことから、長期の老後資金形成には最も効率的です。小規模企業共済は貸付制度があるため、事業資金のバッファとしても機能します。
DB併用者・公務員の変更点|掛金枠の再設計
2024年12月改正と2025年税制改正大綱により、確定給付企業年金(DB)に加入している会社員や公務員のiDeCo掛金枠が大きく再設計されました。法人成りして厚生年金に加入した元個人事業主にも直接関係します。
2024年12月改正:月額2万円への引き上げ
DB等の他制度に加入している場合のiDeCo掛金上限が月1.2万円から月2万円に引き上げられました。これは公務員にも適用されます。
2026年12月予定:合算枠の統一
2025年税制改正大綱では、企業型DC・DB・iDeCoの掛金を月額62,000円の合算枠で管理する方針が示されました。
計算式は次のとおりです:
iDeCo拠出可能額 = 62,000円 −(企業型DC事業主掛金 + DB等の掛金相当額)
DB等の掛金相当額は、各企業年金制度の給付水準に応じて算出されます。DBの掛金相当額が月42,000円以上の場合、iDeCoの拠出可能額は月20,000円(下限保証)となります。
法人成りした事業主への影響
個人事業主から法人成りして厚生年金に加入すると、iDeCoの加入区分が第1号被保険者(月75,000円枠)から第2号被保険者に変わります。企業年金制度を導入していない法人の場合、改正後は月62,000円が上限です。
月75,000円から月62,000円に減額されるように見えますが、法人成りすると役員報酬を経費にできるため、iDeCo単体の掛金上限だけで判断すべきではありません。法人の税制メリットと合わせて総合的に検討することが重要です。
受取時の税制|退職所得控除と5年→10年ルール問題
iDeCoの最大の落とし穴は「出口の税金」です。拠出時の節税ばかりに注目して、受取時の課税を見落とすと、実質的なメリットが大幅に減少します。
一時金受取の場合:退職所得控除
iDeCoの一時金は「退職所得」として課税されます。退職所得控除額の計算は次のとおりです。
| 加入年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 加入年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(加入年数 − 20年) |
具体例:30年加入の場合
30歳から60歳まで30年間iDeCoに加入した場合の退職所得控除額:
800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円
iDeCoの一時金が1,500万円以下であれば、退職所得は0円で税金がかかりません。月75,000円を30年間拠出した場合の元本は2,700万円ですが、運用損益によって受取額は変動します。
5年ルール(現行)と10年ルール(検討中)
退職所得控除は、iDeCoの一時金と勤務先の退職金で通算されます。ただし、受取時期に一定のインターバルを空ければ、控除を独立適用できるルールがあります。
| 項目 | 現行(5年ルール) | 検討中(10年ルール) |
|---|---|---|
| iDeCo先→退職金後 | 5年以上空ければ控除を独立適用 | 10年以上空ける必要あり |
| 退職金先→iDeCo後 | 20年以上空ければ控除を独立適用 | 変更なし(20年のまま) |
10年ルールが適用された場合の影響シミュレーション
例:60歳でiDeCo一時金1,200万円(加入30年)、65歳で退職金2,000万円(勤続35年)を受け取るケース。
現行5年ルール(控除を独立適用できる場合):
- iDeCo:控除1,500万円 → 退職所得0円 → 税額0円
- 退職金:控除2,250万円 → 退職所得0円 → 税額0円
- 合計税額:0円
10年ルール(控除が通算される場合):
- iDeCo(60歳):控除1,500万円 → 退職所得0円 → 税額0円
- 退職金(65歳):間隔が5年で10年未満のため、iDeCoの加入年数と重複する期間の控除が差し引かれる → 税額が発生
- 合計税額:数十万円〜(退職金額と重複期間によって変動)
注意:10年ルールは未確定
本稿執筆時点(2026年5月)で「10年ルール」は正式決定していません。2025年税制改正大綱では「今後の検討事項」として記載されており、2026年12月の税制改正大綱で結論が出る見込みです。ただし、50代後半で出口設計を迫られている方は、現行ルール下での受取を検討する価値があります。
運用商品の選び方|事業主が押さえるべきポイント
iDeCoは自分で運用商品を選ぶ制度です。金融機関ごとに取り扱い商品が異なり、商品のコスト(信託報酬)が長期リターンに大きく影響します。
商品カテゴリの基本
iDeCoで選べる運用商品は大きく3つに分類されます。
- 元本確保型(定期預金・保険):元本割れリスクがない代わりに、利率は年0.002〜0.1%程度。インフレ負けする可能性が高い
- 投資信託(インデックス型):市場指数に連動する運用。信託報酬が年0.1〜0.2%程度と低コスト。長期の資産形成には最も適している
- 投資信託(アクティブ型):ファンドマネージャーが銘柄を選別。信託報酬は年0.5〜1.5%程度。インデックス型を上回る保証はない
事業主特有の視点
事業主がiDeCoの運用商品を選ぶ際には、会社員とは異なる視点が必要です。
- 事業リスクとの分散:事業と同じ業種・市場に集中投資すると、事業の不振と運用の不振が同時に来るリスクがある。国際分散型のインデックスファンドでリスクを分散する
- 収入の変動への対応:収入が不安定な年は掛金を月5,000円まで減額できる。運用商品を変更する必要はない
- 小規模企業共済との役割分担:小規模企業共済は予定利率1.0%の低リスク運用のため、iDeCoではやや積極的な運用(株式比率を高め)にするとバランスが取れる
信託報酬の差が長期で生む金額差
信託報酬が年0.1%と年1.0%の商品を30年間、月75,000円ずつ拠出・運用した場合(想定リターン年5%)、30年後の受取額の差は約400万円以上になります。低コスト商品を選ぶことは、iDeCo運用で最も確実にコントロールできる要素です。
金融機関の手数料比較|コストで差がつく長期運用
iDeCoには金融機関ごとに異なる手数料がかかります。手数料は毎月発生するため、30年以上の長期では無視できない差になります。
iDeCoの手数料体系
| 手数料の種類 | 支払先 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 加入時手数料 | 国民年金基金連合会 | 2,829円 | 初回のみ・全社共通 |
| 掛金収納手数料(月額) | 国民年金基金連合会 | 105円 | 拠出月ごと・全社共通 |
| 事務委託手数料(月額) | 信託銀行 | 66円 | 全社共通 |
| 口座管理手数料(月額) | 運営管理機関(金融機関) | 0〜400円超 | 金融機関ごとに異なる(ここが比較ポイント) |
共通手数料(月額171円)はどの金融機関でも同じですが、口座管理手数料は金融機関ごとに0円〜400円超まで開きがあります。
30年間の手数料総額の比較
口座管理手数料が月0円の金融機関と月400円の金融機関では、30年間で:
- 月0円の場合:共通手数料のみ 171円 × 12か月 × 30年 = 61,560円
- 月400円の場合:(171円 + 400円)× 12か月 × 30年 = 205,560円
- 差額:144,000円
14万円超の差は小さくありません。ネット証券系の主要各社は口座管理手数料を0円に設定しており、商品ラインナップも充実しています。特段の理由がなければ、口座管理手数料0円の金融機関を選ぶのが合理的です。
金融機関の変更は可能だが時間がかかる
iDeCoの金融機関は途中で変更できますが、全商品を一度売却して現金化し、新しい金融機関で再購入する必要があります。移管手続きに1〜2か月かかり、その間は運用できない「空白期間」が発生します。最初の金融機関選びが重要です。
企業型DCからの移換手続き|法人成り・転職時の注意点
企業型DCに加入していた方が退職・転職・独立した場合、6か月以内に資産を移換する手続きが必要です。手続きを怠ると「自動移換」となり、デメリットが発生します。
移換パターンと手続き
| 変更パターン | 移換先 | 手続き先 |
|---|---|---|
| 会社員 → 個人事業主 | iDeCo | iDeCoの運営管理機関(金融機関) |
| 会社員 → 企業型DCのある会社へ転職 | 転職先の企業型DC | 転職先の人事・総務部門 |
| 会社員 → 企業型DCのない会社へ転職 | iDeCo | iDeCoの運営管理機関(金融機関) |
| 個人事業主 → 法人成り | iDeCo継続(区分変更) | iDeCoの運営管理機関に届出 |
自動移換のデメリット
6か月以内に移換手続きをしないと、資産は国民年金基金連合会に自動移換されます。自動移換されると以下のデメリットがあります。
- 運用されない:現金のまま管理され、運用益を得られない
- 手数料だけ引かれる:自動移換時に4,348円、毎月52円の管理手数料が差し引かれる
- 加入年数に算入されない:自動移換期間は退職所得控除の計算に含まれない
- 受給が遅れる可能性:通算加入期間が短縮され、60歳で受給できない場合がある
独立・法人成りの準備に追われて移換手続きを後回しにするケースが多いため、退職が決まった時点で移換先の金融機関を決めておくことが重要です。
法人成り時の区分変更手続き
個人事業主(第1号被保険者)から法人の役員(第2号被保険者)になる場合、iDeCoの加入者区分を変更する届出が必要です。金融機関を変更する必要はなく、同じ口座・同じ運用商品のまま継続できます。
ただし、掛金上限は第1号の月75,000円から第2号の枠(企業年金の有無で変動、最大月62,000円)に変わるため、掛金額の変更届も同時に提出します。届出を忘れると、上限超過分が還付され、その年の所得控除が減少する場合があります。
iDeCo改正対応チェックリスト|事業主が今やるべきこと
ここまでの改正内容を踏まえ、事業主・フリーランスが2026年中に確認すべき項目をチェックリストにまとめます。
全員共通のチェック項目
- ☐ 現在のiDeCo掛金額を確認する(2026年12月以降の上限引き上げに備える)
- ☐ 国民年金基金・付加年金に加入しているか確認する(合算枠に影響)
- ☐ 金融機関の口座管理手数料を確認する(月0円でない場合は変更を検討)
- ☐ 運用商品の信託報酬を確認する(年0.2%を超えていたら低コスト商品への変更を検討)
- ☐ 小規模企業共済に加入しているか確認する(未加入なら検討の価値あり)
- ☐ 受取時の退職所得控除額を試算する(加入年数×控除額)
50代の事業主向け:出口戦略のチェック項目
- ☐ iDeCo一時金と小規模企業共済の受取タイミングを設計しているか
- ☐ 5年ルール→10年ルールが適用された場合のシミュレーションをしたか
- ☐ 一時金と年金の併用受取(併給)を検討したか
- ☐ 税理士またはFPに出口設計について相談したか
従業員を雇用している事業主向け
- ☐ 事業主証明書の廃止に伴い、従業員のiDeCo加入状況を把握する仕組みがあるか
- ☐ iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)の導入を検討したか
- ☐ 企業型DCの導入と比較検討したか(従業員数が増えた場合)
よくある質問(FAQ)
- 2024年12月のiDeCo改正で何が変わりましたか?
- 確定給付企業年金(DB)等の他制度に加入している会社員・公務員のiDeCo掛金上限が月1.2万円から月2万円に引き上げられました。また事業主証明書が廃止され、会社員がiDeCoに加入する際に勤務先の証明が不要になっています。
- 個人事業主のiDeCo掛金上限はいくらになりますか?
- 2026年12月施行予定の改正で、月68,000円から月75,000円に引き上げられます。ただし国民年金基金や付加年金との合算枠のため、これらに加入中の方はその掛金分がiDeCoの上限から差し引かれます。
- iDeCoと小規模企業共済は併用できますか?
- はい、併用できます。iDeCoは国民年金基金との合算枠(月75,000円)、小規模企業共済は独立した枠(月70,000円)です。両方を満額拠出すると年間174万円の所得控除となります。
- 5年ルールが10年ルールに変わるとどうなりますか?
- 現行では、iDeCo一時金を受け取ってから5年以上あけて退職金を受け取れば退職所得控除を別々に適用できます。10年ルールに変更されると、60歳でiDeCo一時金を受け取った場合、退職金で控除を独立適用するには70歳以降まで待つ必要があり、税負担が増える可能性があります。2026年5月時点では未確定の検討事項です。
- iDeCoの受取時にかかる税金はどう計算しますか?
- 一時金の場合は退職所得として課税されます。退職所得控除額は、加入年数20年以下は1年あたり40万円、20年超は1年あたり70万円です。控除後の金額の2分の1に税率を掛けて税額を計算します。年金で受け取る場合は雑所得として公的年金等控除が適用されます。
- iDeCoの金融機関はどう選べばよいですか?
- 口座管理手数料(月0円〜400円超まで差がある)、運用商品のラインナップ(低コストのインデックスファンドが揃っているか)、サポート体制の3点で比較するのが基本です。ネット証券系は手数料が安く商品数も多い傾向にあります。30年で14万円超の手数料差が出るため、最初の選択が重要です。
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ここまで読んだあとに
事業のお金を見たあと、暮らしまで我慢だけにしない3つの体験
事業主は、忙しさと資金繰りで家族の楽しみを後回しにしがちです。事業資金と生活費を分け、休む日や外食の余白も守ります。
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- 出典: 中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)公式サイト — 小規模企業共済・倒産防止共済の所管
- 出典: 国税庁 公式サイト — 所得税・法人税・インボイス・退職所得控除
- 出典: 日本政策金融公庫 公式サイト — 創業融資・事業承継融資
- 出典: 中小企業庁 公式サイト — 事業承継税制・補助金
- 出典: 勤労者退職金共済機構 公式サイト — 中退共・建退共
最終確認日:2026年5月15日
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