PRESS RELEASE

発表日:

スペシャリスト・ドクターズ株式会社(IKIGAI TOWN 運営)

親の口座を動かすために後見人をつけると、亡くなるまでに283万円

── 成年後見の申立て動機の93.4%が「預貯金等の管理・解約」。80歳女性で始めると平均11.83年続き、預金500万円の家庭ではその56.8%が報酬に

ライフプランメディア「IKIGAI TOWN」(運営:スペシャリスト・ドクターズ株式会社)編集部は、最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」(2026年3月公表)と厚生労働省「令和6年簡易生命表」、東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」を突き合わせ、認知症で凍結された親の口座を動かすために成年後見を始めた場合、亡くなるまでに支払う報酬の総額を再計算しました。申立ての動機は93.4%が「預貯金等の管理・解約」で、ほぼすべてが口座を動かすために始められています。しかし現行制度は原則として本人が亡くなるまで続くため、80歳女性で開始した場合は平均余命どおり11.83年。基本報酬だけで総額283.9万円になり、預金500万円の家庭ではその56.8%にあたります。2026年6月17日、この終身利用を見直す民法改正が成立しましたが、施行は遅くとも2028年12月24日までで、いま直面している家庭は現行ルールで判断することになります。全92通りの試算をCSVで公開し、出典明記のうえCC BY 4.0で自由に引用・転載できます。

なぜいま公開するのか

まもなくお盆の帰省期です。親と直接会って話せる数日間は、親の判断能力があるうちにしか選べない選択肢を検討できる、年に数回の機会にあたります。認知症で口座が凍結されてからでは、事実上、成年後見以外の道がほとんど残りません。

あわせて、2026年6月17日に成年後見制度を見直す民法改正が成立しました。「後見」「保佐」を廃止して「補助」に一本化し、いったん始めたら原則として亡くなるまでやめられないという現行の運用を、必要なときに必要な期間だけ使える形に改めるものです。ただし施行は遅くとも2028年12月24日までとされており、いま凍結に直面している家庭が使うのは現行制度です。

再計算のポイント

  1. 申立ての動機は93.4%が「預貯金等の管理・解約」。令和7年の終局事件42,674件のうち39,871件(複数回答)。身上保護74.2%、介護保険契約45.7%を大きく上回り、成年後見は事実上「凍結された口座を動かすための制度」として使われています。開始原因も認知症が61.3%で最多です。
  2. 始めると、原則として亡くなるまで続きます。本人の年齢は女性の63.1%、男性の34.5%が80歳以上。80歳の平均余命は女性11.83年、男性8.96年(厚労省 令和6年簡易生命表)で、これがそのまま利用年数になります。
  3. 基本報酬だけで総額283.9万円。東京家裁の報酬めやすは管理財産1,000万円以下で月2万円。80歳女性なら月2万円×12×11.83年=283.9万円です。付加報酬・後見監督人報酬・申立費用は含みません。
  4. 預金500万円の家庭では、その56.8%にあたります。基本報酬が定額であるため、守る財産が少ない家庭ほど負担率が高くなります。預金6,000万円なら13.0%です。
  5. 管理財産1,000万円の境目で、総額が213万円跳ねます。1,000万円以下は月2万円、超えると月3〜4万円の帯に移るため、1万円の差で月額が1.75倍になります(1,000万円=283.9万円/1,100万円=496.9万円)。
  6. 後見人の83.6%は親族以外。専門職が選任されると報酬が毎年発生します。利用者数は令和7年12月末で259,901人(前年比+2.3%)です。
  7. 月2万円は、世帯の生命保険料(月2.94万円)の68%にあたります。ただし生命保険と違い、給付として戻るお金はありません。生命保険には本人が請求できないときの「指定代理請求特約」が無料で用意されている一方、預金の凍結に備えている人は12.1%にとどまります(当社調査・2026年8月2日公表/生命保険加入率は80.0%)。

1. 成年後見は「口座を動かすための制度」になっている

図1:主な申立ての動機と、亡くなるまでに払う総額

最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」2026年3月公表 × 厚生労働省「令和6年簡易生命表」 × 東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」

成年後見の主な申立て動機は預貯金等の管理・解約が93.4%で最多、身上保護74.2%、介護保険契約45.7%。80歳女性で開始した場合の報酬総額は預金500万円で283.9万円(56.8%)、2000万円で496.9万円(24.8%)、6000万円で780.8万円(13.0%)
主な申立ての動機(複数回答)件数割合
預貯金等の管理・解約39,871件93.4%
身上保護31,655件74.2%
介護保険契約19,502件45.7%
不動産の処分15,502件36.3%
相続手続10,909件25.6%
保険金受取7,578件17.8%

制度は本人の権利を守るために設計されていますが、実際の入口はほぼ「口座が動かせなくなったこと」です。医療費や介護施設の費用を親の預金から払おうとして払えず、やむを得ず申し立てる。その結果始まるのが、本人が亡くなるまで続く関係です。

2. 財産が少ない家庭ほど、負担率は高くなる

図2:管理財産額別の報酬総額と、財産に占める割合

東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」(平成25年1月1日)× 厚生労働省「令和6年簡易生命表」。80歳女性で開始・平均余命11.83年

管理財産300万円では報酬総額283.9万円で財産の94.6%、500万円で56.8%、1000万円で28.4%。1100万円になると月額が3.5万円に上がり総額496.9万円で45.2%。6000万円では13.0%、1億円では7.8%
管理財産基本報酬(月額)総額(11.83年)財産に占める割合
300万円2.0万円283.9万円94.6%
500万円2.0万円283.9万円56.8%
1,000万円2.0万円283.9万円28.4%
1,100万円3.5万円496.9万円45.2%
2,000万円3.5万円496.9万円24.8%
6,000万円5.5万円780.8万円13.0%
1億円5.5万円780.8万円7.8%

1,000万円と1,100万円の差は預金では100万円ですが、報酬総額の差は213万円です。基本報酬が管理財産1,000万円を境に月2万円から3〜4万円へ移るためで、境目をわずかに超えるだけで月額が1.75倍になります。

この数字の読み方について

これは東京家庭裁判所の「めやす」に基づく試算です。実際の報酬額は家庭裁判所が事案ごとに決めるもので、本人の資力その他の事情が考慮されます。管轄によってもめやすは異なります。

また親族が後見人になった場合、報酬を請求しないことも多くあります。最高裁によれば親族以外が選任されたのは83.6%で、この試算はそのケースを想定しています。低所得の方については、市区町村の成年後見制度利用支援事業により報酬の助成を受けられる場合があります。

本試算は基本報酬のみで、不動産処分や訴訟などに伴う付加報酬、後見監督人が付いた場合の報酬、申立時の費用(収入印紙・登記手数料・鑑定費用など)は含んでいません。実際の総額はこれを上回りうることにご留意ください。

3. 2026年6月、法律は変わった。ただし施行は最長2028年12月

2026年4月3日に閣議決定され、2026年6月17日に参議院本会議で可決・成立した民法等の改正は、まさにこの構造に手を入れるものです。「後見」「保佐」を廃止して「補助」に一本化し、必要な事項について必要な期間だけ支援を受けられる制度へ改めます。いったん始めたら原則として亡くなるまでやめられないという現行の運用は見直されます。

ただし施行は遅くとも2028年12月24日までとされています。つまり、いま親の口座が凍結されて困っている家庭が使うのは、まだ現行制度です。今回の試算は、その現行制度で始めた場合に何が起きるかを示したものです。

制度そのものを否定するものではありません

成年後見は、判断能力が失われた方の財産と権利を守るための制度です。専門職による後見が本人を守った例は数多くありますし、親族間に対立がある場合や、悪質な勧誘・搾取から本人を守る場面では、この制度以外に手立てがないこともあります。

本リリースが示しているのは、「口座を動かしたいだけ」という入口と、「亡くなるまで続く」という出口の間にある落差です。今回の法改正は、まさにその落差を埋めようとするものだと理解しています。

4. 生命保険と並べると、性質の違いがはっきりする

月2万円という数字は、それだけを見てもピンときません。家計から毎月出ていく固定費として、生命保険料と並べてみます。生命保険文化センターの全国実態調査によれば、2人以上世帯の年間払込保険料は平均35.3万円=月2.94万円です。

図3:生命保険料と成年後見の基本報酬、そして備えている割合の差

生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2人以上世帯)× 東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」× 当社調査(2026年8月2日公表)

世帯の生命保険料は月2.94万円、成年後見の基本報酬は月2.00万円で保険料の68%。生命保険の加入率は80.0%で請求できない事態には無料の指定代理請求特約がある一方、口座凍結の対策をしているのは12.1%にとどまる

成年後見の基本報酬は、世帯が払っている生命保険料の68%にあたります。感覚としては「生命保険をもう1本、7割ぶん増やした」のに近い負担が、平均11.83年続きます。

比べる項目生命保険成年後見
毎月出ていく額約2.94万円(世帯平均)2万円(管理財産1,000万円以下)
お金の向き保険金・給付金として戻る戻らない(自分の預金を動かすための手数料)
金額を決めるのは自分(契約時に選ぶ)家庭裁判所
相手を選べるか会社・商品を選べる家裁が選任(83.6%は親族以外)
やめられるかいつでも解約できる原則やめられない
いつまで続くか自分で決める本人が亡くなるまで
始めるタイミング元気なうちに選ぶ判断能力を失ったあと

役割は同じではありません。生命保険は「万一のときにお金が入ってくる」仕組みで、払った保険料はいつか給付として戻る設計です。成年後見の報酬は、自分の預金を使うために払う手数料で、給付はありません。似ているのは「長期に定額を払い続ける」という一点だけで、ほかのすべての項目で、後見のほうが選択の余地が小さいことがわかります。

そして生命保険には、同じリスクへの「無料の答え」がある

認知症などで本人が請求できなくなる事態は、生命保険でも起こります。入院給付金や高度障害保険金を本人が請求できなければ、契約があっても受け取れません。これに対して用意されているのが「指定代理請求特約」で、あらかじめ指定した家族などが本人に代わって請求できるようになります。この特約の保険料は不要(無料)で、契約後に付加することもできます(取扱いや対象となる保険金の範囲は保険会社・契約により異なります)。

つまり保険には、「本人が動けなくなる」というリスクに対する無料の備えが用意されています。一方、預金についてはそれに相当する仕組みが十分に整っておらず、凍結が起きたあとは成年後見がほぼ唯一の道になります。

そして備えている割合が大きく違います。生命保険の加入率は80.0%(生命保険文化センター)。これに対し、当編集部が2026年8月2日に公表した調査では、認知症による口座凍結に何らかの対策をしている人は12.1%でした。8割が加入している保険には無料の代理請求の備えがあるのに、預金には1割しか手を打っていない——これが今回の比較でいちばん大きな差です。

この比較の限界

生命保険料と後見報酬は性質の異なる支出であり、単純な優劣を比べるものではありません。ここで並べているのは「家計から長期に出ていく固定費としての大きさ」であって、保険に入る代わりに後見を避けられる、という関係ではありません。

また指定代理請求特約は、あくまで保険金・給付金の請求に関するものです。預金の引き出しや不動産の管理には及びません。口座凍結そのものへの備えは、金融機関の代理人届や任意後見・家族信託など、別の手段で検討する必要があります。

5. 帰省の数日でできること

凍結が起きてからでは選択肢がほぼ後見に限られる一方、親に判断能力があるうちは、複数の選び方があります。いずれも法律上の手続きであり、実際の設計や書面の作成は弁護士・司法書士などの専門家が行います。以下は「話題として持ち帰るための一覧」です。

選択肢どんなときに使えるか費用の性質
代理人届・代理人カード金融機関に事前に家族を代理人として届け出ておく。日常的な出し入れの範囲多くは無料。取扱いは金融機関ごとに異なる
任意後見契約判断能力があるうちに「誰に・何を任せるか」を自分で決めて公正証書にしておく初期費用+発効後は後見監督人の報酬
家族信託(民事信託)財産の管理・処分を家族に託す。不動産や事業用資産を含む場合に検討されることが多い初期の設計費用が中心。月額報酬は原則発生しない
何もしない(凍結後に法定後見)凍結が起きてから申し立てる。本試算のケース本人が亡くなるまで報酬が続く

どれが適しているかは、家族構成・財産の内容・親の意向によって大きく変わります。帰省の場でできるのは決めることではなく、「通帳がどこにあるか」「取引のある金融機関はどこか」「本人はどうしたいか」を聞いておくことです。

読み解き ── 「後見人をつければいい」で終わらせない

認知症で口座が凍結されたときの答えとして、「成年後見人をつければいい」はよく語られます。手続きとしては正しい。ただ、その先に平均11.83年・総額283.9万円という時間と金額があることは、ほとんど語られません。

そして本試算で最も見過ごされやすいのは、負担率が財産の少ない家庭ほど高いという点です。預金6,000万円の家庭では13.0%でも、預金500万円の家庭では56.8%になります。基本報酬が定額である以上、これは構造的に起きます。「守る財産が小さいほど、守るための費用が重い」という逆転です。

当編集部が2026年8月2日に公開した調査では、認知症による口座凍結に何らかの対策をしている人は12.1%でした。5人に1人が「家族なら引き出せる」と誤解していることも分かっています。凍結は突然起きるものではなく、親が元気なうちに決めておけたはずのことが、決めないまま時間が過ぎた結果として起きます。

編集部より

介護のご相談で「親の預金から施設費用を払おうとしたら、窓口で止められた」という話は珍しくありません。そこから成年後見の申立てに進むのですが、総額でいくらかかるのかを事前に把握している方はほとんどいません。年間24万円という数字は小さく見えても、11年続けば283万円です。

今回この計算を出したのは、制度を批判するためではありません。6月に法律が変わったのは、この構造が問題だと国も認めたということです。ただ施行までにはまだ時間があり、その間に凍結に直面する家庭は現行制度で判断することになります。帰省で親と会う数日のあいだに、通帳の場所と本人の意向だけでも聞いておいていただければと思います。

IKIGAI TOWN 編集長/

集計方法と使用データ

集計名:成年後見を「口座を動かすため」に始めた場合の生涯報酬額の再計算(IKIGAI TOWN 編集部集計)

集計主体:スペシャリスト・ドクターズ株式会社(IKIGAI TOWN 運営)

使用データ:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 ―令和7年1月〜12月―」(2026年3月公表)/厚生労働省「令和6年簡易生命表」(主な年齢の平均余命)/東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部「成年後見人等の報酬額のめやす」(平成25年1月1日)。内容は2026年8月10日時点で確認。

集計方法:現行の成年後見が原則として本人の死亡まで継続することから、開始年齢の平均余命をそのまま利用年数とし、東京家裁のめやすによる基本報酬(月額)を乗じて生涯報酬額を算出しました。開始年齢は75・80・85・90歳、性別・管理財産額10区分の計92通りをCSVに収録しています。月3〜4万円・月5〜6万円と幅のある帯は中央値(3.5万円・5.5万円)を用いています。

留意点:報酬額は家庭裁判所が事案ごとに決定するもので、本試算は東京家裁の「めやす」に基づく機械的な計算です。基本報酬のみで、付加報酬・後見監督人報酬・申立費用は含みません。親族が後見人の場合は報酬を請求しないことも多く、本試算は親族以外が選任されるケース(83.6%)を想定しています。低所得の方には市区町村の成年後見制度利用支援事業による報酬助成がある場合があります。平均余命は集団の平均であり、個々の利用期間を示すものではありません。

法改正について:民法等の一部を改正する法律は2026年4月3日に閣議決定、2026年6月17日に成立。施行期日は公布から2年6か月以内(遅くとも2028年12月24日)とされています。施行後の運用や既存利用者の取扱いの詳細は、今後の政省令等によります。

報道関係者向け「そのまま記事化パック」

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本リリースの図表・数値・本文は、出典を明記いただければCC BY 4.0のもと、改変を含めて自由にご利用いただけます(事前連絡不要)。

▍記事本文(リード・小見出し付き・そのまま出稿可)
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▍見出し案
媒体記事用(40字):後見申立ての93.4%が「預金を動かすため」
SNS・タイトル用(60字):親の口座を動かすために後見人をつけると、亡くなるまでに283万円 ── 申立て動機の93.4%が「預貯金の管理・解約」
短尺(全角13字):後見報酬11.8年分
比較切り口:成年後見の報酬は、世帯の生命保険料の68% ── ただし1円も戻らない

▍出典表記(コピペ用)

出典:<a href="https://ikigai.town/ja/press/2026-08-10/">IKIGAI TOWN 編集部集計(最高裁・厚生労働省・東京家庭裁判所の公表値に基づく)</a>

▍追加集計・取材
開始年齢・財産額を指定した試算、都道府県別の申立件数との突き合わせなどをご提供できます。support@ikigai.town(メールのみ)

本リリースの利用について

引用・転載(CC BY 4.0)

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出典:<a href="https://ikigai.town/ja/press/2026-08-10/">IKIGAI TOWN 編集部集計(最高裁・厚生労働省・東京家庭裁判所の公表値に基づく)</a>

本リリースは公的統計に基づく情報提供を目的としたものであり、成年後見制度そのもの、または個別の後見人・専門職の業務を評価・批判するものではありません成年後見・任意後見・信託の設計や申立手続は弁護士・司法書士等の業務であり、当社およびIKIGAI TOWNのファイナンシャル・プランナーはこれを行いません。個別の法律判断・手続については弁護士・司法書士、またはお住まいの市区町村の権利擁護センター・地域包括支援センターにご相談ください。また、特定の金融商品・保険商品の推奨や契約の勧誘を目的とするものでもなく、個別の税務判断を行うものでもありません。

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