── 全国1,605保険者を再集計。保険料と高齢化率の相関はほぼゼロ(−0.03)、要介護認定率とは0.52。高齢化率51.5%の高知県土佐清水市は月4,850円、24.5%の大阪市は9,249円
ライフプランメディア「IKIGAI TOWN」(運営:スペシャリスト・ドクターズ株式会社)編集部は、厚生労働省が公表する第9期(2024〜2026年度)の介護保険料1,605保険者と、総務省の住民基本台帳による高齢化率を突き合わせて再集計しました。その結果、保険料と高齢化率の相関はほぼゼロ(−0.03)である一方、要介護認定率との相関は0.52でした。「高齢者が多い市ほど保険料が高い」という直感は成り立ちません。実際、高齢化率51.5%の高知県土佐清水市は月4,850円、高齢化率24.5%の大阪市は月9,249円です。保険料は月3,374円から9,249円まで2.74倍の開きがあり、65歳から85歳までの20年間では最大141万円の差になります。全1,605保険者のデータはCSVで公開し、出典明記のうえCC BY 4.0で自由に引用・転載できます。
8月1日から、介護保険の負担割合証と負担限度額認定証の新しい有効期間(8月1日〜翌年7月31日)が始まりました。7月下旬に一斉発送されており、いま各家庭に届いています。高額療養費の年間上限も8月〜翌年7月が区切りで、8月は医療・介護の自己負担が切り替わる月です。
あわせて、まもなくお盆の帰省期に入ります。実家の市区町村の数字を確認する機会として、全1,605保険者のデータを公開します。
厚生労働省 第9期介護保険料(1,605保険者)× 総務省 住民基本台帳(2024年1月1日現在)
| 組み合わせ | 市区819保険者 | 都道府県平均(46県) |
|---|---|---|
| 保険料 × 要介護認定率 | +0.52 | +0.47 |
| 保険料 × 高齢化率 | −0.03 | −0.04 |
集計単位を市区から都道府県平均に変えても符号が変わりません。突き合わせできた範囲の偏りによる見かけの関係ではないことを示しています。
相関は因果ではありません。要介護認定率の差は、高齢者の年齢構成(同じ「65歳以上」でも75歳以上の比率が違う)、介護サービスの供給量、認定の運用差などが合わさったものです。認定率が高いことは「使いすぎ」でも「サービスが手厚い」でもなく、それ自体が説明を要する事実です。
また高齢化率を突き合わせられたのは822保険者(市区中心)で、町村の多くは含まれていません。この点も踏まえてご覧ください。
厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく第1号保険料」2024年5月14日公表
| 保険者 | 月額 | 年額 | 高齢化率 | 要介護認定率 |
|---|---|---|---|---|
| 大阪府 大阪市 | 9,249円 | 110,988円 | 24.5% | 27.4% |
| 大阪府 守口市 | 8,970円 | 107,640円 | 28.4% | ― |
| 沖縄県 名護市 | 7,352円 | 88,224円 | 23.8% | 18.4% |
| 北海道 芦別市 | 4,500円 | 54,000円 | 47.7% | 20.1% |
| 高知県 土佐清水市 | 4,850円 | 58,200円 | 51.5% | 17.4% |
| 東京都 小笠原村 | 3,374円 | 40,488円 | 16.9% | 18.6% |
高齢化率47〜51%の芦別市・土佐清水市が、24%の大阪市より安い。これが今回の集計で最も目を引く並びです。
全1,605保険者のCSVをダウンロード(保険料・年額・第8期比の改定率・要介護認定率・高齢化率・75歳以上比率を収録)。ご自身の市区町村、ご実家のある市区町村の数字を確認できます。
介護保険の負担割合証(自己負担が1割か2割か3割かを示すもの)と、負担限度額認定証(施設の食費・居住費の軽減)は、いずれも有効期間が8月1日から翌年7月31日です。前年の所得が6月に確定し、7月下旬に一斉発送されます。
つまり、いま各家庭に届いている割合証が、これから1年間の自己負担を決めます。帰省の際は、この1枚を確認するところから始められます。
介護保険料は3年ごとに改定され、2026年度は第9期の最終年度です。2027年度からの第10期に向けて、利用者負担が2割となる対象範囲の拡大(現行の「合計所得金額280万円以上」という基準の引き下げ)が社会保障審議会介護保険部会で審議されています。2026年度中に結論が出る見通しです。
本リリースは審議の内容や是非を論じるものではありませんが、来年度に向けて保険料も自己負担割合も変わりうるという前提で、いまの数字を確認しておく意味はあると考えます。
介護保険料は、市区町村(保険者)が3年ごとに、その地域の介護サービスの見込み量から逆算して決めます。だから高齢者が多いかどうかよりも、実際にサービスがどれだけ使われているかのほうが保険料に効く。今回の相関はその仕組みを数字で示したものです。
逆に言えば、高齢化率が高い地域が必ずしも「介護の負担が重い地域」ではありません。土佐清水市や芦別市のように、高齢化率が5割近くても保険料が全国平均を下回る保険者があります。地域を語るときに高齢化率だけを見ると、実態を取り違えます。
家計の側でできることは限られていますが、親がどの保険者に属し、いくら払っていて、自己負担が何割なのかを知っておくことは、介護が始まってからの見通しをまったく変えます。8月に届く1枚と、この1,605行の表が、その入口になれば幸いです。
集計名:介護保険料(第9期)× 高齢化率 × 要介護認定率の再集計(IKIGAI TOWN 編集部集計)
集計主体:スペシャリスト・ドクターズ株式会社(IKIGAI TOWN 運営)
使用データ:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく第1号保険料(2024〜2026年度)」(2024年5月14日公表・1,605保険者)/総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2024年1月1日現在)。内容は2026年8月9日時点で確認。
集計方法:保険者名で両データを突き合わせ、保険料基準額(第5段階・月額)と高齢化率・要介護認定率のピアソン相関係数を算出。市区819保険者と、5保険者以上を含む46都道府県の平均値の2水準で算出し、符号の一致を確認しています。
全国平均について:厚生労働省公表の全国平均は加重平均で月6,225円(第8期6,014円から+3.5%)です。本集計の1,605保険者の単純平均(6,023円)とは定義が異なります。両者を混同しないでください。本文・図表で「全国平均」と記載しているのは、いずれも厚労省公表の加重平均6,225円です。
留意点:保険料は第5段階(基準額)で、実際の負担は所得段階(多くの市区町村で13〜15段階)によって変わります。高齢化率の突き合わせができたのは822保険者(市区中心)で、町村の多くは含まれていません。相関は因果関係を示すものではありません。第9期は2026年度が最終年度で、2027年度から第10期の改定が行われます。
本リリースの図表・数値・本文は、出典を明記いただければCC BY 4.0のもと、改変を含めて自由にご利用いただけます(事前連絡不要)。
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媒体記事用(40字):介護保険料、高齢化率とは無相関 認定率と0.52
SNS・タイトル用(60字):介護保険料が高いのは「高齢者が多い市」ではなかった ── 全国1,605保険者を再集計、高齢化率との相関は−0.03
短尺(全角13字):介護保険料2.74倍差
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▍追加集計・取材
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本リリースは公的統計に基づく情報提供を目的としたものであり、特定の自治体の運営を評価・批判するものではありません。また、特定の金融商品・保険商品の推奨や、契約の勧誘を目的とするものでもなく、個別の税務判断を行うものでもありません。保険料の段階や減免、負担割合の判定については、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。
編集部より
介護の相談は、始まってから来ることがほとんどです。そして最初に聞かれるのが「これからいくらかかるのか」。そのとき、親御さんの保険料や負担割合を把握している方はごく少数です。
今回あえて相関という形で出したのは、「高齢者が多いから高い」という説明が通用しないことをはっきりさせたかったからです。地域差の原因を人口構成に求めてしまうと、そこで思考が止まります。実際に効いているのはサービスの利用量で、それは制度設計と地域の事情の話です。帰省の前に、まず自分の家の数字を見ていただければと思います。
IKIGAI TOWN 編集長/塩飽 哲生