相続・贈与

相続・贈与とは?
相続税の仕組みと生前対策の全体像【2026】

相続税と納税資金を家族で確認しもめない準備を進める場面
税額だけでなく、納税資金、家族の分け方、親の意思を早めに整理します。

「うちには大した財産はないから相続税なんて関係ない」。そう思っていたはずが、いざ親の相続が発生してみると、実家の土地評価だけで基礎控除を超えてしまう——。

記事の答えを確認した次に

相続が始まったら、今日やることは何?

決めるタイミング: 相続について調べ始めたとき。生前準備なら、家族と話せるうち。

相談で繰り返される本音

  • 情報が多く、今日やることだけを知りたい
  • 税金・登記・家族の話を別々に進めるのが不安
  • 専門家へ相談するほどかも分からない

初回で口頭整理できること

初回は、いま迷っていることを伺い、決める順番と確認が必要な数字を口頭で整理します。

その次に分けること

追加計算や専門家の確認が必要な論点は、次に集める資料と確認先を分けます。

初回の範囲: 初回で資料の完成、制度の適用判定、手続き代行、金融商品の見積り・申込みは行いません。

相談前のFAQ

資料がそろっていなくても相談できますか?

はい。初回は、いま分かる範囲から迷いと確認順を整理します。通知書、通帳、財産や家計のメモなどが手元にあれば、分かる範囲だけご用意ください。

初回で何を持ち帰れますか?

いま決めること、まだ決めなくてよいこと、次に確認する数字や窓口を口頭で整理して持ち帰れます。初回当日の資料完成は約束していません。

初回に商品や契約の話がありますか?

初回は迷いと数字の整理に使います。金融商品の見積り、申込み、契約変更は初回の範囲に含みません。

まずは60分で、相続に関する家計の見直しポイントを確認してみませんか。

目次(7セクション)
  1. 相続・贈与の全体像
  2. 相続税の計算の仕組み(基礎控除・法定相続分)
  3. 相続税の計算方法|基礎控除と税率
  4. 生前贈与のメリット・デメリット|暦年贈与と精算課税の比較
  5. 相続手続きのタイムライン|発生から10か月の流れ
  6. 小規模宅地等の特例とは?最大80%減額
  7. 相続で使える税制優遇一覧

相続・贈与の全体像

「相続」とは、人が亡くなったときにその人(被相続人)の財産を家族などの相続人が引き継ぐことをいいます。一方「贈与」は、生きているうちに財産を無償で渡すことです。どちらも財産が別の人の手に渡るという点は同じですが、課される税金は別で、相続には相続税、贈与には贈与税がかかります。

そして両者は完全に別物というわけではなく、「生前贈与した財産の一部は、相続のときに相続財産として足し戻す」というルールが存在します。つまり、相続税と贈与税はセットで設計されており、片方だけを見て対策するとバランスを崩してしまうのが、相続・贈与を難しく感じさせる一番の理由です。

Point

相続対策は「相続税を減らす」だけが目的ではありません。①相続税を減らす ②納税資金を準備する ③家族が争わないようにする、この3つのバランスを取ることが本当のゴールです。

相続税の計算の仕組み(基礎控除・法定相続分)

相続税の計算は複雑に見えますが、大きな流れを掴むことが先決です。ざっくり次の4ステップで計算されます。

  1. 被相続人の財産をすべて洗い出し、時価で評価する(=課税価格)
  2. そこから基礎控除額を差し引く
  3. 残った額を法定相続分で各相続人に分けたと仮定して税率を当てはめる
  4. いったん計算した相続税の総額を、実際の取り分に応じて按分する

ここで最も重要なのが基礎控除です。計算式は覚えやすく、3,000万円+600万円×法定相続人の数。つまり相続人が多いほど基礎控除額も大きくなります。

法定相続人の数 基礎控除額 主なケース
1人3,600万円配偶者のみ、または子1人
2人4,200万円配偶者+子1人
3人4,800万円配偶者+子2人
4人5,400万円配偶者+子3人
5人6,000万円配偶者+子4人

例えば夫が亡くなり、妻と子2人が相続人となる場合、基礎控除は4,800万円。財産が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。逆にいえば、都市部の持ち家と預貯金・有価証券を合わせると、4,800万円を超えてしまう家庭は決して珍しくないのが現実です。

注意

「配偶者の税額軽減」により、配偶者が相続する財産は1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い額まで相続税がかからない制度があります。ただし、二次相続(残された配偶者が亡くなったとき)で子どもの税負担が重くなりやすいので、一次相続と二次相続を合わせて考える視点が必要です。

基礎控除の詳しい計算例や早見表は「相続税の基礎控除とは?計算方法と早見表」で詳しく解説しています。法定相続人の範囲と順位については「法定相続人とは?範囲・順位・相続分を図解」もあわせてご確認ください。

相続税の計算方法|基礎控除と税率

基礎控除を超えた課税遺産総額には、累進税率(10%〜55%)が適用されます。税率は「法定相続分に応じた取得金額」ごとに段階的に上がります。国税庁が公表する速算表を使えば、各相続人の仮の税額をすばやく算出できます(国税庁 No.4155 相続税の税率)。

相続税の速算表(2026年時点)
法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下10%—
1,000万円超〜3,000万円以下15%50万円
3,000万円超〜5,000万円以下20%200万円
5,000万円超〜1億円以下30%700万円
1億円超〜2億円以下40%1,700万円
2億円超〜3億円以下45%2,700万円
3億円超〜6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

計算の具体例

たとえば課税遺産総額が8,000万円、相続人が配偶者+子2人(計3人)の場合を考えます。

  1. 基礎控除 = 3,000万円+600万円×3人 = 4,800万円
  2. 課税遺産総額 = 8,000万円 − 4,800万円 = 3,200万円
  3. 法定相続分で仮分割 → 配偶者1/2(1,600万円)・子各1/4(各800万円)
  4. 速算表を適用 → 配偶者:1,600万円×15%−50万円=190万円、子各:800万円×10%=80万円
  5. 相続税の総額 = 190万円+80万円+80万円 = 350万円

ここから配偶者は「配偶者の税額軽減」でゼロになるため、実際の納税は子2人で按分した額のみになります。さらに詳しい計算例は「相続税の税率と早見表|速算表で税額を確認」、自動計算は「相続税シミュレーション」をご利用ください。

Point

税率だけ見ると高く感じますが、基礎控除・配偶者控除・小規模宅地等の特例を適切に使えば、課税対象者の約9割は税率20%以下に収まります。まずは自分のケースでシミュレーションしてみることが大切です。

生前贈与のメリット・デメリット|暦年贈与と精算課税の比較

相続税対策の王道といわれる生前贈与。制度としては「暦年贈与」と「相続時精算課税」の2つがあります。2024年の税制改正により、暦年贈与は相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算されるルールに変わりました(国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除)。一方、相続時精算課税は2024年から年間110万円の基礎控除が新設され、使い勝手が向上しています。

暦年贈与 vs 相続時精算課税 比較表
比較項目 暦年贈与 相続時精算課税
非課税枠年110万円(基礎控除)累計2,500万円+年110万円(2024年〜)
超過分の税率10%〜55%(累進)一律20%
相続財産への加算相続開始前7年以内の贈与を加算年110万円超の部分を加算(110万円以下は加算なし)
適用条件誰から誰へでもOK60歳以上の父母・祖父母→18歳以上の子・孫
届出不要(110万円以下なら申告も不要)初回に届出書の提出が必要(撤回不可)
向いているケース少額を長期間かけて多くの人に贈与したいまとまった財産(不動産等)を早期に移転したい

暦年贈与のメリット・デメリット

  • メリット:年110万円まで非課税。届出不要で手軽。孫・子の配偶者など相続人以外にも贈与できる
  • デメリット:7年持ち戻しルールにより、高齢になってからの贈与は相続税の節税効果が薄い。毎年の贈与を証拠として残す必要がある

相続時精算課税のメリット・デメリット

  • メリット:2,500万円まで贈与税ゼロ。値上がりする資産を早めに移転すれば、評価額を「贈与時点」で固定できる。2024年以降は年110万円まで加算なし
  • デメリット:一度選択すると撤回不可。相続時に贈与額が相続財産に加算されるため、相続税がゼロにはならない

どちらの制度が有利かは、贈与者の年齢・財産規模・相続人の人数で大きく変わります。詳しくは「生前贈与とは?110万非課税・7年持ち戻しを解説」「相続時精算課税とは?制度の仕組みと活用法」をご覧ください。贈与税の試算は「贈与税シミュレーション」で自動計算できます。

2026年の改正ポイント

2024年1月1日以降の贈与から、暦年贈与の持ち戻し期間が「3年→7年」に段階的に延長されています。また精算課税の年110万円基礎控除も2024年スタートです。改正の詳細は「2026年からの相続・贈与制度改正まとめ」で解説しています。

相続手続きのタイムライン|発生から10か月の流れ

相続が発生(被相続人の死亡)すると、さまざまな手続きに法律上の期限が定められています。特に相続税の申告は10か月以内、相続放棄は3か月以内と短いため、全体のスケジュールを把握しておくことが重要です(裁判所 相続放棄の手続き)。

相続手続きタイムライン
期限 手続き 届出先・備考
7日以内死亡届の提出市区町村役場
14日以内年金受給停止届・健康保険の資格喪失届年金事務所・市区町村
3か月以内相続放棄・限定承認の申述家庭裁判所(被相続人の最後の住所地)
4か月以内被相続人の準確定申告(所得税)税務署
〜速やかに遺言書の有無の確認・検認家庭裁判所(自筆証書遺言の場合)
〜速やかに相続人・相続財産の調査戸籍謄本の収集・不動産登記・金融機関への照会
〜速やかに遺産分割協議・協議書の作成相続人全員の合意が必要
10か月以内相続税の申告・納付被相続人の住所地の税務署
3年以内(義務化)相続登記(不動産の名義変更)法務局(2024年4月から義務化)

Point

相続登記は2024年4月1日から義務化されました。正当な理由なく3年以内に登記しないと、10万円以下の過料の対象となります(法務省 相続登記の義務化)。詳しくは「相続登記の義務化|手続き・費用・必要書類」をご確認ください。

手続きの初期段階で必要になる書類の準備については「法定相続情報一覧図の作り方・必要書類を解説」「相続関係説明図の書き方」が参考になります。遺産分割のひな形は「遺産分割協議書の書き方・ひな形」で無料公開しています。

相続放棄を検討している方は「相続放棄とは?手続き・期限・必要書類を解説」、相続税の申告手順は「相続税の申告期限・手続きの流れ・必要書類」をあわせてお読みください。

小規模宅地等の特例とは?最大80%減額

相続税対策で最もインパクトが大きいのが小規模宅地等の特例です。被相続人が住んでいた自宅の土地や、事業用の土地について、一定の要件を満たせば評価額を最大80%減額できます(国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例)。

特例の種類と減額率

  • 特定居住用宅地等:被相続人等の居住用の土地。330㎡まで80%減額。配偶者には同居・居住継続・保有継続という取得者ごとの追加要件はありませんが、対象土地・取得範囲・分割・申告書類など制度共通の要件は確認が必要です。同居親族は原則として相続税申告期限まで居住・保有を継続します
  • 特定事業用宅地等:被相続人の事業用土地。400㎡まで80%減額。事業を引き継ぐ親族が申告期限まで事業継続・保有が要件
  • 貸付事業用宅地等:アパート・駐車場などの賃貸用土地。200㎡まで50%減額

適用例

たとえば、相続した自宅の土地の評価額が5,000万円(面積250㎡)の場合、特定居住用宅地等の特例が適用できれば、5,000万円×80%=4,000万円が減額され、評価額は1,000万円として計算します。この差が基礎控除内に収まれば、相続税はゼロになります。

取得者別の条件、未分割・期限後申告、老人ホーム・二世帯・貸付事業などは「小規模宅地等の特例の要件・確認準備ツール」で確認できます。

注意

小規模宅地等の特例を使う場合は、適用後に税額がゼロでも相続税申告書への記載と所定書類の添付が必要です。法定申告期限は原則10か月で、期限後は加算税・延滞税や分割状況の論点が生じます。ただし期限後申告だから一律に特例不可とは限らないため、過ぎた場合は税務署または税理士へ直ちに確認してください。不動産相続の全体像は「不動産相続の手続き|名義変更・評価・分割対策」で解説しています。

相続で使える税制優遇一覧

相続税には、基礎控除以外にも多くの控除・特例・非課税制度が用意されています。適用できるものを漏れなく使うことで、税負担を大幅に軽減できます。

主な控除・特例・非課税制度一覧
制度名 概要 非課税枠・減額率
配偶者の税額軽減配偶者が取得した財産について相続税を軽減1億6,000万円 または法定相続分のいずれか多い額まで非課税
生命保険金の非課税枠死亡保険金のうち一定額が非課税500万円×法定相続人の数
死亡退職金の非課税枠死亡退職金のうち一定額が非課税500万円×法定相続人の数
小規模宅地等の特例自宅・事業用土地の評価額を減額最大80%減額(330㎡まで)
未成年者控除未成年の相続人の税額を控除(18歳−相続時の年齢)×10万円
障害者控除障害のある相続人の税額を控除(85歳−相続時の年齢)×10万円(特別障害者は20万円)
相次相続控除10年以内に2回以上相続が発生した場合の軽減前回の相続税額の一定割合を控除
教育資金の一括贈与教育資金目的の一括贈与が非課税(2026年3月31日で新規の適用は終了)受贈者1人あたり1,500万円まで
結婚・子育て資金の一括贈与結婚・子育て目的の贈与が非課税受贈者1人あたり1,000万円まで
住宅取得等資金の贈与住宅購入資金の贈与が非課税省エネ住宅1,000万円・一般住宅500万円まで

生命保険の非課税枠を使った相続税対策の詳細は「生命保険の非課税枠で相続税を節税する方法」で解説しています。贈与税の各種非課税制度については「生前贈与とは?110万非課税・7年持ち戻しを解説」もあわせてご確認ください。

Point

配偶者の税額軽減は強力ですが、一次相続で配偶者に財産を集中させると、二次相続(配偶者の死亡時)で子どもの税負担が急増します。一次相続と二次相続をセットで試算し、トータルの税額が最小になる分割方法を検討しましょう。

認知症対策としての家族信託

相続対策は「元気なうちに」が鉄則です。認知症になると、不動産の売却や預金の引き出しが困難になり、生前贈与も法的に無効になるリスクがあります。家族信託を活用すれば、判断能力が低下しても信頼できる家族が財産を管理・運用できる仕組みを整えられます。詳しくは「家族信託とは?費用・メリット・成年後見との違い」をご覧ください。

代襲相続と相続登記

相続人が被相続人より先に亡くなっている場合は代襲相続が発生し、孫や甥・姪が相続人になります。法定相続人の範囲が複雑になるケースでは、専門家のサポートが有効です。「代襲相続とは?範囲・要件・相続分をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

また、相続した不動産は名義変更が必要です。相続登記の手続きと費用は「相続登記の義務化|手続き・費用・必要書類」、土地の名義変更を生前に行いたい場合は「生前贈与で土地の名義変更|手続き・費用・税金」をご参照ください。

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本ページの制度概要・要件・税率は、以下の公式情報を編集部が確認のうえ整理しています(執筆時点)。最新かつ正確な情報は必ず各公式サイトでご確認ください。FPは記事を直接監修してはおらず、関連テーマでご相談を受けるFPとしてご紹介しています。

最終確認日:

改訂:2026年10月19日、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置が2026年3月31日で延長されずに終了したことを反映しました。

※本記事は2026年4月時点の一般的な情報であり、個別の税務・経営・法務相談に代わるものではありません。各制度の適用要件・税額は個人の状況により異なります。実行にあたっては、必ず公式情報および税理士・社労士・FP・弁護士など専門家にご相談ください。本記事の情報により生じたいかなる損害についても、当サイトでは責任を負いかねます。

本相談は個別の法律・税務判断、申告、登記、交渉を代行するものではありません。必要な場合は、確認すべき専門家と論点を分けます。