厚生年金まとめ
保険料・受給額・加入条件・計算
厚生年金は会社員・公務員が加入する報酬比例の年金制度。保険料は給与の18.3%を労使折半で負担
記事の答えを確認した次に
働き方を変えたら、年金と手取りはどう動く?
決めるタイミング: 転職、退職、再雇用、扶養の変更、独立を決める前後。
相談で繰り返される本音
- 収入を増やしても手取りが減る境目が分からない
- 勤務先と自分、どちらが手続きするのか迷う
- 今の働き方を何年続けるか決めきれない
初回で口頭整理できること
初回は、今の働き方、変更候補、給与と年金の確認項目を並べ、判断順を口頭で整理します。
その次に分けること
勤務先や公式窓口の回答がそろった後、手取りと生活費への影響を確認します。
初回の範囲: 社会保険の適用判定、勤務先手続きの代行、手取り額の保証、金融商品の申込みは初回に行いません。
初回は口頭で整理します。資料がなくても、分かる範囲から始められます
相談前のFAQ
資料がそろっていなくても相談できますか?
はい。初回は、いま分かる範囲から迷いと確認順を整理します。通知書、通帳、財産や家計のメモなどが手元にあれば、分かる範囲だけご用意ください。
初回で何を持ち帰れますか?
いま決めること、まだ決めなくてよいこと、次に確認する数字や窓口を口頭で整理して持ち帰れます。初回当日の資料完成は約束していません。
初回に商品や契約の話がありますか?
初回は迷いと数字の整理に使います。金融商品の見積り、申込み、契約変更は初回の範囲に含みません。
目次(12セクション)
厚生年金とは|制度の全体像
厚生年金は、会社員・公務員が加入する報酬比例の公的年金です。国民年金(基礎年金)に上乗せして支給されるため、自営業者よりも手厚い老後保障を受けられます。
厚生年金の基本情報
- 加入対象:会社員・公務員(70歳まで加入可能)
- 保険料率:標準報酬月額の18.3%(労使折半で本人負担は9.15%)
- 受給開始:原則65歳(繰上げ60歳〜、繰下げ〜75歳)
- 受給額:報酬(年収)× 加入年数に比例
- 管轄:日本年金機構
厚生年金に加入すると、自動的に国民年金にも加入していることになります。つまり、65歳からは「老齢基礎年金+老齢厚生年金」の2階建てで受給できます。
公的年金の2階建て構造
日本の公的年金は「国民年金(1階)」と「厚生年金(2階)」で構成されます。国民年金は20歳以上60歳未満の全国民が加入し、定額の老齢基礎年金(2026年度満額:月約6.8万円)を支給します。厚生年金は報酬に比例した金額が上乗せされるため、加入期間と平均報酬が多いほど受給額が増えます。
2015年10月に被用者年金が一元化され、公務員・私学教職員も厚生年金に統合されました。現在は「厚生年金=会社員+公務員+私学教職員の共通制度」と考えて問題ありません。詳しくは厚生年金とはで解説しています。
加入対象者|パート・アルバイト・70歳以上
厚生年金の加入対象は「適用事業所に使用される者」ですが、雇用形態によって条件が異なります。
正社員・役員
- 適用事業所に常時使用される正社員は原則全員が加入
- 法人の代表取締役・役員も、報酬を受けていれば加入義務あり(1人社長も含む)
- 個人事業所は従業員5人以上の一定業種で強制適用。5人未満や非適用業種は任意適用
パート・アルバイト(短時間労働者)
2024年10月の法改正により適用拡大が進みました。以下の全てを満たす場合に加入対象となります。
- 従業員51人以上の企業で働いている(2024年10月〜。それ以前は101人以上)
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円)
- 2か月を超える雇用見込みがある
- 学生ではない(休学中・夜間学生は加入可能)
「年収の壁」とパートの厚生年金
- 106万円の壁:上記要件を満たすと厚生年金に加入。保険料が天引きされ手取りは一時的に減るが、将来の年金額と傷病手当金・出産手当金が充実する
- 130万円の壁:配偶者の扶養(第3号被保険者)から外れるライン。51人未満の企業では106万円の壁がないため、130万円が実質的な基準になる
70歳以上の方
厚生年金の加入は原則70歳までです。70歳以降も受給資格期間(10年)を満たしていない場合は「高齢任意加入制度」により加入を続けることができます。保険料は全額自己負担が原則ですが、事業主が同意すれば折半も可能です。
詳しくは厚生年金の加入条件をご覧ください。
保険料と負担|月収別早見表
厚生年金保険料は標準報酬月額 × 18.3%で計算し、会社と従業員が半分ずつ負担します。標準報酬月額は実際の月収を1〜32等級に区分した金額で、毎年9月に「定時決定」で見直されます。
| 月収(額面) | 標準報酬月額 | 保険料(月額・本人負担) | 年間本人負担額 |
|---|---|---|---|
| 月収20万円 | 20万円 | 約18,300円 | 約22万円 |
| 月収25万円 | 26万円 | 約23,790円 | 約28.5万円 |
| 月収30万円 | 30万円 | 約27,450円 | 約33万円 |
| 月収40万円 | 41万円 | 約37,515円 | 約45万円 |
| 月収50万円 | 50万円 | 約45,750円 | 約55万円 |
| 月収65万円(上限) | 65万円 | 約59,475円 | 約71万円 |
賞与の保険料
賞与(ボーナス)からも厚生年金保険料が天引きされます。計算式は標準賞与額 × 18.3%(労使折半)です。標準賞与額の上限は1回あたり150万円で、超えた分は保険料の対象外ですが、将来の年金額にも反映されません。
保険料が決まるタイミング
- 資格取得時決定:入社時に届け出た報酬で決定
- 定時決定:毎年4〜6月の報酬の平均で9月から改定
- 随時改定:固定的賃金が大幅に変動し、2等級以上の差が3か月続いた場合に改定
詳しくは厚生年金保険料の計算方法をご覧ください。
老齢厚生年金の計算方法
老齢厚生年金の年金額は、加入期間と平均報酬から報酬比例部分として計算されます。
報酬比例部分の計算式
年金額の計算式(本則)
- 2003年3月以前:平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 加入月数
- 2003年4月以降:平均標準報酬額(賞与込み)× 5.481/1000 × 加入月数
- 報酬比例部分 = 上記2つの合計
2003年4月に「総報酬制」が導入され、賞与も年金額の計算対象になりました。それ以前の期間は月額報酬のみで計算するため、乗率が異なります。
年収・加入年数別の受給額早見表
| 平均年収 | 加入20年 | 加入30年 | 加入38年 | 加入40年 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 月9.5万 | 月11.0万 | 月12.2万 | 月12.6万 |
| 400万円 | 月10.5万 | 月12.3万 | 月13.8万 | 月14.1万 |
| 500万円 | 月11.4万 | 月13.6万 | 月15.4万 | 月15.9万 |
| 600万円 | 月12.3万 | 月15.0万 | 月17.0万 | 月17.7万 |
| 800万円 | 月14.1万 | 月17.7万 | 月20.3万 | 月21.4万 |
※ 老齢基礎年金(満額 月約6.8万円)との合計額。手取りは手取り額早見表で確認できます。
経過的加算と加給年金
経過的加算は、20歳前・60歳以降に厚生年金に加入した期間について、老齢基礎年金に反映されない分を補う加算です。加給年金は、厚生年金の加入期間が20年以上ある方に65歳未満の配偶者や18歳未満の子がいる場合に加算されるもので、年額約39.7万円(配偶者)が支給されます。詳しくは加給年金とはをご覧ください。
繰上げ・繰下げ受給|増減率と損益分岐
老齢厚生年金は原則65歳から受給開始ですが、60歳〜75歳の間で自由に開始時期を選択できます。
繰上げ受給(60〜64歳)
- 1か月早めるごとに0.4%減額(2022年4月以降の請求者。1962年4月1日以前生まれは0.5%)
- 60歳開始の場合:24%減額(0.4% × 60か月)
- 減額は一生涯続く(途中で元に戻すことはできない)
- 繰上げすると障害基礎年金の請求ができなくなるなどの制約あり
繰下げ受給(66〜75歳)
- 1か月遅らせるごとに0.7%増額
- 70歳開始の場合:42%増額(0.7% × 60か月)
- 75歳開始の場合:84%増額(0.7% × 120か月)
- 増額は一生涯続く
損益分岐年齢の目安
- 繰上げ(60歳開始 vs 65歳開始):約80歳10か月。80歳以上長生きするなら65歳開始が有利
- 繰下げ(70歳開始 vs 65歳開始):約81歳10か月。82歳以上長生きするなら70歳開始が有利
- 繰下げ(75歳開始 vs 65歳開始):約86歳10か月
老齢基礎年金と老齢厚生年金はそれぞれ別々に繰上げ・繰下げできます(老齢基礎年金だけ繰下げて厚生年金は65歳から受給、など)。ただし、繰上げは両方同時に行う必要があります。詳しくは年金繰下げ・繰上げ受給のメリット・デメリットをご覧ください。
在職老齢年金|働きながら受給する場合
65歳以降も厚生年金に加入しながら働くと、賃金と年金の合計額に応じて年金の一部または全部が支給停止になる場合があります。これが「在職老齢年金」制度です。
支給停止の仕組み(65歳以上)
- 基準額:「基本月額(年金の月額)+ 総報酬月額相当額(月収+直近1年の賞与÷12)」が50万円を超える場合に調整
- 支給停止額:(基本月額 + 総報酬月額相当額 − 50万円)× 1/2
- 老齢基礎年金は支給停止の対象外(全額受給できる)
在職老齢年金と繰下げの注意点
在職老齢年金で支給停止された部分は繰下げ増額の対象外です。たとえば年金の半分が支給停止されている場合、繰下げで増額されるのは残りの半分だけです。高報酬で長く働く方は、繰下げの恩恵が小さくなる可能性があるため、FPと一緒にシミュレーションすることをお勧めします。
障害厚生年金|受給要件と等級
厚生年金加入中に初診日がある傷病で障害が残った場合、障害厚生年金を受給できます。国民年金の障害基礎年金(1・2級)に上乗せされるほか、3級や一時金(障害手当金)は厚生年金独自の給付です。
受給要件
- 初診日に厚生年金に加入していること
- 初診日の前日時点で保険料納付要件を満たしていること(直近1年間に未納がない、または全期間の2/3以上を納付済み)
- 障害認定日(初診日から1年6か月後)に障害等級1〜3級に該当すること
障害等級と年金額
| 等級 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 | 合計イメージ |
|---|---|---|---|
| 1級 | 月約8.5万円 | 報酬比例額 × 1.25 | 月12〜20万円程度 |
| 2級 | 月約6.8万円 | 報酬比例額 | 月10〜17万円程度 |
| 3級 | なし | 報酬比例額(最低保障あり) | 月5〜10万円程度 |
3級に該当しない程度の障害でも、初診日から5年以内に治癒した場合は障害手当金(一時金)が支給されることがあります。加入期間が短い場合でも300月(25年)みなしの最低保障があるため、若い方にとっても重要なセーフティネットです。
遺族厚生年金|受給できる遺族の範囲
厚生年金の加入者や受給者が亡くなった場合、一定の遺族に遺族厚生年金が支給されます。国民年金の遺族基礎年金(子がいる配偶者または子に支給)と合わせて受けられるケースもあります。
受給できる遺族(優先順位あり)
- 配偶者・子(子は18歳到達年度末まで、または20歳未満で障害1・2級)
- 父母
- 孫
- 祖父母
※ 夫・父母・祖父母は、死亡時に55歳以上であることが条件(支給開始は60歳から)。
年金額
遺族厚生年金の額は、亡くなった方の報酬比例部分の3/4です。加入期間が300月未満の場合は300月で計算する「短期要件の最低保障」があります。
中高齢寡婦加算
夫の死亡時に40歳以上65歳未満で子がいない妻(または子が成長して遺族基礎年金が失権した妻)には、65歳まで年額約61.2万円の中高齢寡婦加算が支給されます。65歳以降は経過的寡婦加算に切り替わります。
離婚時の年金分割
離婚した場合、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を分割できる制度があります。分割されるのは年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)であり、すでに受給中の年金を直接分けるわけではありません。
2つの分割方法
| 区分 | 合意分割 | 3号分割 |
|---|---|---|
| 対象期間 | 婚姻期間全体 | 2008年4月以降の3号被保険者期間のみ |
| 分割割合 | 当事者の合意または家庭裁判所の決定(最大1/2) | 一律1/2 |
| 相手の同意 | 必要(合意できなければ裁判所に申立て) | 不要(請求者が単独で手続き可能) |
| 請求期限 | 離婚後2年以内 | 離婚後2年以内 |
年金分割を行っても、分割した側の年金が必ずしも半分に減るわけではありません。分割対象は婚姻期間中の記録に限られ、婚姻前や離婚後の記録には影響しません。手続きは最寄りの年金事務所で行います。
厚生年金と確定拠出年金(DC)の違い
老後の資金準備として厚生年金と並んで話題になるのが確定拠出年金(DC)です。両者は性質が大きく異なります。
| 項目 | 厚生年金 | 確定拠出年金(DC) |
|---|---|---|
| 運営 | 国(日本年金機構) | 企業型:会社 / iDeCo:国民年金基金連合会 |
| 位置づけ | 公的年金(2階) | 私的年金(3階) |
| 給付額 | 制度で決まる(確定給付) | 運用成績で変動(確定拠出) |
| 保険料/掛金 | 標準報酬 × 18.3%(労使折半) | 企業型:会社が拠出 / iDeCo:自分で拠出 |
| 税制優遇 | 社会保険料控除 | 掛金は全額所得控除 + 運用益非課税 + 受取時も控除 |
| 受取開始 | 原則65歳 | 60〜75歳で選択 |
| 受取方法 | 終身年金 | 年金 or 一時金 or 併用 |
厚生年金は「長生きリスク」に強い終身給付、確定拠出年金は税制優遇を活かした資産形成に向いています。両方を活用して「2階+3階」の年金を組み立てるのが現在の主流です。iDeCoの掛金上限や企業型DCとの併用ルールは制度改正で変わることがあるため、最新情報を確認してください。
届出・手続き一覧
厚生年金に関する届出や手続きは、主に勤務先の会社を通じて行います。退職時や受給開始時など、自分で年金事務所に届け出が必要な場面もあります。
| 場面 | 届出・手続き | 届出先 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 入社 | 被保険者資格取得届 | 会社が届出 | 5日以内 |
| 退職 | 被保険者資格喪失届 | 会社が届出 | 5日以内 |
| 退職後の国民年金加入 | 種別変更届(第1号へ) | 市区町村役場 | 14日以内 |
| 配偶者の扶養に入る | 第3号被保険者届 | 配偶者の会社を通じて届出 | 速やかに |
| 年金の請求(65歳) | 老齢年金裁定請求書 | 年金事務所または街角の年金相談センター | 65歳到達月以降 |
| 繰下げ受給を選択 | 老齢厚生年金支給繰下げ申出書 | 年金事務所 | 66歳以降の希望時期 |
| 年金分割の請求 | 標準報酬改定請求書 | 年金事務所 | 離婚後2年以内 |
| 住所・氏名・口座の変更 | 各種変更届 | 年金事務所またはねんきんネット | 速やかに |
「ねんきんネット」に登録すると、自分の加入記録や将来の年金見込額をオンラインで確認できます。毎年届く「ねんきん定期便」と合わせて記録の確認を習慣にしましょう。
よくある質問(FAQ)
- 厚生年金は何年払えば満額ですか?
- 厚生年金には「満額」の概念はありません。加入年数と報酬に比例して増え続けます。ただし標準報酬月額の上限(65万円)があるため、高年収でも一定以上は頭打ちになります。
- パートでも厚生年金に入れますか?
- 2024年10月から、従業員51人以上の企業で週20時間以上・月収8.8万円以上等の要件を満たせば加入対象です。加入すれば将来の年金額が増え、健康保険も充実します。
- 厚生年金を繰下げると受給額はどれくらい増えますか?
- 繰下げ1か月ごとに0.7%増額されます。70歳まで繰下げると42%増、75歳まで繰下げると84%増です。ただし在職老齢年金で支給停止された部分は繰下げ増額の対象外です。
- 離婚すると厚生年金はどうなりますか?
- 婚姻期間中の厚生年金記録を最大2分の1まで分割できる「年金分割」制度があります。合意分割と3号分割の2種類があり、離婚後2年以内に請求が必要です。
- 厚生年金と確定拠出年金(DC)は何が違いますか?
- 厚生年金は国が運営する公的年金で給付額が制度で決まります。確定拠出年金は私的年金で、拠出額は決まっていますが運用成績によって受取額が変動します。厚生年金に上乗せする「3階部分」として併用できます。
- 退職したら厚生年金はどうなりますか?
- 退職後は国民年金(第1号被保険者)に切り替わります。退職日の翌日から14日以内に市区町村で手続きが必要です。なお、退職までに納めた厚生年金保険料に基づく受給権は失われません。
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最終確認日:2026-05-15
※本記事は2026年5月時点の一般的な情報であり、個別の税務・法務相談に代わるものではありません。各制度の適用要件・金額は個人の状況により異なります。実行にあたっては、必ず公式情報および専門家にご相談ください。本記事の情報により生じたいかなる損害についても、当サイトでは責任を負いかねます。
本相談は年金事務所・自治体・勤務先の手続きや受給額の確定を代行するものではありません。