退職金と住民税
退職所得にかかる住民税の計算方法
税制上の有利不利と、手元資金・将来支出への影響を分けて比べます。
退職金にかかる住民税の計算方法(退職所得控除→1/2→税率10%)と、確定申告が必要なケースを解説。
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退職金にかかる住民税の計算
退職金にかかる住民税は、他の所得とは分離して計算される「分離課税」の対象です。計算の流れは、まず退職金の額から退職所得控除を差し引き、その残額の2分の1が「退職所得」となります。この退職所得に住民税率10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%)を掛けた金額が住民税です。
たとえば勤続25年で退職金が1,500万円の場合、退職所得控除は800万円+70万円×5年=1,150万円です。退職所得は(1,500万円−1,150万円)×1/2=175万円となり、住民税は175万円×10%=17.5万円です。退職所得控除が大きいため、勤続年数が長いほど退職金にかかる住民税は少なくなります。
なお、退職金にかかる住民税は退職金支給時に天引きされて完結する「現年課税」です。翌年度の住民税(給与所得に対するもの)には影響しません。退職後の給与所得に対する住民税の取り扱いについては退職後の住民税をご覧ください。
勤続5年以下の役員等の場合は2分の1課税の適用がなく、退職所得=退職金−退職所得控除(1/2なし)で計算されるため、短期間で高額の退職金を受け取ると税負担が重くなります。2022年以降は役員等以外でも勤続5年以下で退職所得控除を超える部分が300万円を超える場合は1/2課税が適用されなくなりました。
勤続年数別の退職所得控除額表
退職所得控除の額は勤続年数によって決まります。勤続20年以下の場合は「40万円×勤続年数」(最低80万円)、勤続20年超の場合は「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」です。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 退職金がこの額以下なら | 退職金2,000万円の場合の住民税 |
|---|---|---|---|
| 5年 | 200万円 | 住民税ゼロ | 約90万円 |
| 10年 | 400万円 | 住民税ゼロ | 約80万円 |
| 15年 | 600万円 | 住民税ゼロ | 約70万円 |
| 20年 | 800万円 | 住民税ゼロ | 約60万円 |
| 25年 | 1,150万円 | 住民税ゼロ | 約42.5万円 |
| 30年 | 1,500万円 | 住民税ゼロ | 約25万円 |
| 35年 | 1,850万円 | 住民税ゼロ | 約7.5万円 |
| 38年 | 2,060万円 | 住民税ゼロ | 0円(控除内) |
※退職金2,000万円の住民税は(退職金−控除額)×1/2×10%で計算。勤続5年以下の役員等は1/2課税なし。
勤続年数は1年未満の端数を切り上げて計算します。たとえば勤続19年6か月であれば20年として扱われます。また、障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、通常の退職所得控除に100万円が加算されます。退職所得控除の範囲内に退職金が収まれば、退職金にかかる住民税はゼロになります。
住民税の計算方法の基本については住民税はいくら?年収別の計算方法をご覧ください。
退職所得の特別徴収
退職金にかかる住民税は、退職金の支払時に会社が天引き(特別徴収)して市区町村に納めます。これを「退職所得の特別徴収」と呼びます。退職する本人が「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すれば、会社が正しい税額を計算して天引きしてくれるため、退職金の住民税はこの時点で完結します。
天引きされた住民税は、退職金が支払われた月の翌月10日までに会社が市区町村に納付します。退職金の住民税は通常の給与所得の住民税(翌年6月から課税)とは異なり、支払い時点で課税が完了する「現年課税」の仕組みです。そのため、退職した翌年度の住民税の計算には退職金は含まれません。
住民税の納付先は退職金が支払われた年の1月1日時点の住所地の自治体です。退職後に引っ越した場合でも、退職金の住民税は退職時点で天引きされて完了しているため影響はありません。引っ越しと住民税の関係については引っ越し後の住民税をご確認ください。
確定申告が必要なケース
「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば、退職金の住民税は支払時に精算済みとなり、原則として確定申告は不要です。しかし、この申告書を提出しなかった場合は、退職金の全額に対して20.42%の所得税が源泉徴収されるため、確定申告をして正しい税額との差額を還付してもらう必要があります。
また、同じ年に複数の会社から退職金を受け取った場合や、過去に退職金を受け取ってから一定期間内に再度退職金を受け取った場合は、退職所得控除の調整計算が必要になり確定申告が求められることがあります。退職金以外の所得が少なく、各種控除(社会保険料控除・医療費控除など)を使い切れていない場合も、確定申告をすることで住民税が軽減される可能性があるため、退職した年の確定申告は検討する価値があります。
退職後に再就職しなかった場合の住民税の取り扱いについては無職の住民税をご覧ください。住民税の非課税の条件に該当する可能性もあります。
iDeCo・企業年金との関係
iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型確定拠出年金の一時金を受け取る場合も、退職所得として扱われます。会社の退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、退職所得控除は合算して計算されるため、控除枠を超えやすくなる点に注意が必要です。
たとえば勤続30年で退職金1,200万円+iDeCo一時金500万円の合計1,700万円を同年に受け取った場合、退職所得控除1,500万円を差し引いた200万円の1/2=100万円が退職所得となり、住民税は10万円です。iDeCoの受取を退職年と異なる年にずらせば、それぞれの控除枠を別々に使えるため、税負担を抑えられる可能性があります(ただし退職金とiDeCoの受取間隔に関するルールがあるため注意が必要です)。
企業年金を年金形式(分割)で受け取る場合は退職所得ではなく雑所得(公的年金等控除の対象)になります。一括受取と年金受取のどちらが有利かは、退職所得控除の残枠、公的年金等控除との兼ね合い、退職後の他の所得によって異なります。年金受給者の住民税については年金受給者の住民税をご覧ください。
💬 相談事例から
📋 60代前半のAさん
定年退職後、アルバイトと年金で暮らすAさん。退職翌年の住民税が前年の高い給与所得をもとに計算されることを知らず、請求額に驚きました。FPは退職後の家計設計と将来資金の優先順位整理を担当(退職所得控除の適用判定・税額計算は税理士の独占業務)を行い、納付計画を整理しました。
📋 独立起業したばかりのBさん(法人設立済み)
会社員から独立したBさん。個人事業と法人の所得の線引きや、住民税の普通徴収への切り替え手続きがわからず相談。FPが収入見込みに合わせた住民税・社会保険料のシミュレーションを行い、経費計上と控除の組み合わせで節税計画を作成しました。
📋 30代会社員のCさん(副業あり)
副業収入のある会社員Cさん。副業分の住民税を普通徴収にする方法がわからず、会社に知られるのを心配していました。FPは家計全体の優先順位整理を担当(確定申告書の記入方法・青色申告の手続きは税理士または国税庁の確定申告書等作成コーナーで)しました。
FPに相談すべきケース
退職金の受け取り方(一括 vs 年金形式)、iDeCoの一時金との受取タイミング、退職後の住民税・国保・年金の負担試算は、個々の勤続年数・退職金額・家族構成・他の所得によって最適解が大きく異なります。とくに退職金が退職所得控除を超える金額の場合や、同年にiDeCoの一時金も受け取る場合は、FPに相談してシミュレーションしてもらうことで数万円〜数十万円の税負担差が生じることがあります。退職は人生で数回しかない大きなお金の動きですので、事前にプロに計画を見てもらう価値は大きいです。
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本ページの制度概要・要件・税率は、以下の公式情報を編集部が確認のうえ整理しています(執筆時点)。最新かつ正確な情報は必ず各公式サイトでご確認ください。FPは記事を直接監修してはおらず、関連テーマでご相談を受けるFPとしてご紹介しています。
最終確認日:2026-05-14
※本記事は2026年5月時点の一般的な情報であり、個別の税務・経営・法務相談に代わるものではありません。各制度の適用要件・税額は個人の状況により異なります。実行にあたっては、必ず公式情報および税理士・社労士・FP・弁護士など専門家にご相談ください。本ページの情報により生じたいかなる損害についても、当サイトでは責任を負いかねます。
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