相続・贈与

相続放棄とは?
手続きの流れ・必要書類・期限と注意点【2026年版】

相続税と納税資金を家族で確認しもめない準備を進める場面
税額だけでなく、納税資金、家族の分け方、親の意思を早めに整理します。

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産も借金もすべて引き継がないことを選ぶ手続きです。相続の開始を知った日から3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ「相続放棄の申述」を行う必要があります。

記事の答えを確認した次に

3か月、4か月、10か月。うちが先に動く期限はどれ?

決めるタイミング: 相続を知った直後。相続放棄は原則3か月、準確定申告は4か月、相続税申告は10か月で、相続登記にも期限があります。

相談で繰り返される本音

  • 何から手を付ければ期限に間に合うか知りたい
  • 借金があるか分からず、相続放棄を迷っている
  • 家族で話し合う前に集める書類を知りたい

初回で口頭整理できること

初回は、亡くなった日、家族、分かっている財産・借入を伺い、急ぐ確認と専門家へ渡す論点を口頭で整理します。

その次に分けること

期限と資料を確認した後、法律・税務・登記の各専門家へ依頼する範囲を分けます。

初回の範囲: 期限延長の可否、相続放棄・税額・登記内容の判断、申述・申告・登記の代行は初回に行いません。

初回で期限と確認順を聞く

初回は口頭で整理します。資料がなくても、分かる範囲から始められます

相談前のFAQ

資料がそろっていなくても相談できますか?

はい。初回は、いま分かる範囲から迷いと確認順を整理します。通知書、通帳、財産や家計のメモなどが手元にあれば、分かる範囲だけご用意ください。

初回で何を持ち帰れますか?

いま決めること、まだ決めなくてよいこと、次に確認する数字や窓口を口頭で整理して持ち帰れます。初回当日の資料完成は約束していません。

初回に商品や契約の話がありますか?

初回は迷いと数字の整理に使います。金融商品の見積り、申込み、契約変更は初回の範囲に含みません。

期限の一次情報: 裁判所|相続の承認又は放棄の期間の伸長 / 国税庁|相続税の申告と納税 / 国税庁|納税者が死亡したときの準確定申告 / 法務省|相続登記の申請義務化

まずは60分で、相続に関する家計の見直しポイントを確認してみませんか。

目次(12セクション)
  1. 相続放棄とは?基本概念をわかりやすく解説
  2. 相続放棄の手続きの流れ【5ステップ】
  3. 相続放棄に必要な書類一覧
  4. 3か月の期限(熟慮期間)と起算点
  5. 相続放棄と限定承認の違い
  6. 兄弟が相続放棄するケース
  7. 相続放棄の費用と相場
  8. 相続放棄後の注意点(管理義務・固定資産税等)
  9. 相続放棄の申述書の書き方【記入例付き】
  10. 相続放棄の期限逆算スケジュール表
  11. 相続放棄と相続税の関係【計算例付き】
  12. 相続放棄のよくある質問(FAQ)

相続放棄とは?基本概念をわかりやすく解説

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)が残したすべての財産と債務を引き継がないと宣言する法的手続きです。民法第938条に基づき、家庭裁判所への申述によって行います。口頭や書面で「放棄する」と親族に伝えただけでは、法的な効力はありません。

相続が発生したとき、相続人には次の3つの選択肢があります。

  • 単純承認:プラスの財産もマイナスの財産(借金)もすべて引き継ぐ
  • 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ
  • 相続放棄:プラス・マイナスを問わず、一切の財産を引き継がない

相続放棄を選ぶ最も多い理由は、被相続人の借金が資産を上回っている場合です。たとえば、亡くなった父に預貯金200万円と借金1,000万円があった場合、単純承認すると差額の800万円を返済しなければなりません。相続放棄すれば、預貯金200万円は受け取れませんが、借金1,000万円の返済義務からも解放されます。

Point

相続放棄が家庭裁判所で受理されると、その相続人は「最初から相続人ではなかった」とみなされます(民法第939条)。これは遡及効と呼ばれ、相続開始時に遡って効力が生じます。

相続放棄が適しているケース

  • 被相続人に多額の借金・連帯保証債務がある
  • 遺産の不動産が老朽化しており、管理コストが大きい
  • 相続人間のトラブルに関わりたくない
  • 特定の相続人に財産を集中させたい(例:長男に実家を相続させるため他の兄弟が放棄)
  • 被相続人と長年疎遠で、財産の内容がまったくわからない

相続放棄の効果と代襲相続への影響

相続放棄の重要な特徴として、代襲相続が発生しない点があります。代襲相続とは、本来の相続人が被相続人より先に死亡している場合に、その子が代わりに相続する制度です。しかし、相続放棄の場合は「最初から相続人ではなかった」とみなされるため、放棄した人の子に相続権は移りません。

たとえば、被相続人Aの長男Bが相続放棄した場合、Bの子(Aの孫)Cには代襲相続権は発生しません。ただし、Bが相続放棄ではなくAより先に死亡していた場合は、Cに代襲相続権が発生します。この違いは極めて重要です。

相続放棄の手続きの流れ【5ステップ】

相続放棄の手続きは、以下の5つのステップで進めます。期限は「相続の開始を知った日から3か月以内」です。

ステップ1:相続財産と債務の調査

まず、被相続人の財産と借金の全体像を把握します。預貯金・不動産・有価証券などのプラスの財産に加えて、借金・未払い税金・連帯保証債務などのマイナスの財産を洗い出します。

  • 預貯金:金融機関への残高照会
  • 不動産:固定資産評価証明書・登記簿謄本の取得
  • 借金:信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への開示請求
  • 連帯保証:契約書の確認、債権者への問い合わせ

注意

被相続人の借金は、遺品整理で請求書や督促状が見つかるケースも多くあります。「借金はなさそうだ」と思い込まず、信用情報機関への照会は必ず行いましょう。

ステップ2:相続放棄の判断

財産と債務を比較し、相続放棄するかどうかを判断します。借金が財産を明らかに上回っている場合は相続放棄が有利です。プラスとマイナスが拮抗している場合は、限定承認も選択肢に入ります。

ステップ3:必要書類の収集

家庭裁判所への申述に必要な書類を集めます(詳しくは次のセクションで解説)。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の収集に時間がかかることが多いため、早めに着手してください。

ステップ4:家庭裁判所への申述

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」と必要書類を提出します。提出方法は窓口持参のほか、郵送でも可能です。

提出先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。相続人自身の住所地ではないので注意してください。管轄裁判所は裁判所のウェブサイトで確認できます。

ステップ5:照会書への回答と受理

申述書を提出すると、通常1〜2週間後に家庭裁判所から「照会書(回答書)」が届きます。相続放棄の意思に間違いがないか、法定単純承認に該当する行為(遺産の処分など)をしていないかなどの質問に回答して返送します。

相続放棄に必要な書類一覧

相続放棄の申述に必要な書類は、申述人(放棄する人)と被相続人との関係によって異なります。以下は共通して必要な書類です。

共通の必要書類

書類 取得先 備考
相続放棄の申述書裁判所ウェブサイト成人用・未成年者用の2種類
被相続人の住民票除票(または戸籍附票)市区町村役場最後の住所地の確認用
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本本籍地の市区町村役場死亡の事実を証明
申述人の戸籍謄本本籍地の市区町村役場相続人であることの証明
収入印紙800円分郵便局・コンビニ等申述人1人につき800円
連絡用の郵便切手郵便局裁判所により金額が異なる(数百円程度)

申述人が被相続人の配偶者の場合

上記の共通書類のみで足ります。

申述人が被相続人の子(第一順位の相続人)の場合

共通書類に加えて、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本は不要で、死亡の記載のある戸籍謄本があれば十分です。

申述人が被相続人の父母(第二順位の相続人)の場合

共通書類に加えて、以下が必要です。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(子の存在確認のため)
  • 先に死亡している子がいる場合は、その子の出生から死亡までの戸籍謄本

申述人が被相続人の兄弟姉妹(第三順位の相続人)の場合

共通書類に加えて、以下が必要です。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 先に死亡している子・父母がいる場合は、その出生から死亡までの戸籍謄本

Point

戸籍謄本の収集は、被相続人が転籍を繰り返していた場合に特に時間がかかります。複数の自治体から取り寄せる必要があるため、2〜4週間は見込んでおきましょう。2024年3月からは広域交付制度により、最寄りの市区町村窓口で他自治体の戸籍も取得できるようになりました。

3か月の期限(熟慮期間)と起算点

相続放棄の期限は、民法第915条に定められた「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」です。この3か月間を「熟慮期間」と呼びます。

起算点はいつか?

熟慮期間の起算点は「相続の開始を知った日」であり、「被相続人の死亡日」とは限りません。具体的には以下のように判断されます。

  • 同居の配偶者・子:通常は死亡日が起算点
  • 疎遠な親族:死亡の事実を知った日(死亡から数か月後に知った場合も、知った日から3か月)
  • 第二順位・第三順位の相続人:先順位の相続人が全員放棄したことを知った日
  • 借金の存在を後から知った場合:判例により、相続財産の全容を認識した日を起算点とする余地がある(最高裁昭和59年4月27日判決)

注意

「3か月を過ぎたから絶対にできない」とは限りません。被相続人に借金があることを3か月経過後に初めて知ったようなケースでは、裁判所が事情を考慮して相続放棄を認めた判例があります。ただし、期限内に行うのが原則であり、期限超過後の申述は認められないリスクが高いです。

熟慮期間の伸長

3か月以内に判断が難しい場合は、熟慮期間中に家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て」を行えます。以下のようなケースで認められることが多いです。

  • 被相続人の財産が各地に分散しており調査に時間がかかる
  • 事業用財産があり評価に専門的判断が必要
  • 相続人が海外に居住している
  • 相続人の数が多く、協議に時間を要する

申立ての費用は、収入印紙800円+連絡用郵便切手(数百円)です。伸長の申立てが認められると、通常は1〜3か月程度の延長が認められます。

法定単純承認に注意

熟慮期間中に以下の行為をすると、「法定単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなります(民法第921条)。

  • 相続財産の全部または一部を処分した場合(不動産の売却、預金の引き出しなど)
  • 3か月の熟慮期間を経過した場合
  • 相続放棄後に相続財産を隠匿・消費した場合

ただし、葬儀費用を被相続人の預金から支払う行為は、社会的に相当な範囲であれば法定単純承認には該当しないとされています(判例)。また、形見分けとして社会通念上の範囲の少額な物品を受け取ることも、通常は問題ありません。

相続放棄と限定承認の違い

相続放棄と並んで検討されることの多い「限定承認」との違いを整理します。

比較項目 相続放棄 限定承認
効果全財産・全債務を放棄プラスの財産の範囲内で債務を引き継ぐ
申述先家庭裁判所家庭裁判所
期限3か月以内3か月以内
申述人各相続人が単独で可能相続人全員で共同申述が必要
手続きの複雑さ比較的簡単複雑(官報公告・清算手続きが必要)
費用800円+切手代800円+切手代+官報公告費用(数万円)
代襲相続発生しない関係なし(全員で行うため)
適するケース明らかに借金が多い場合プラスとマイナスが不明確な場合

限定承認は、被相続人の財産にプラスがあるのかマイナスが多いのか判断がつかない場合に有効です。しかし、相続人全員で行う必要があり、手続きも複雑で時間がかかるため、実務上はあまり利用されていません。裁判所の統計によると、年間の限定承認件数は相続放棄の件数のおよそ100分の1程度にとどまります。

Point

限定承認では「みなし譲渡所得課税」が発生する場合があります。被相続人が値上がりした不動産や株式を持っていた場合、死亡時の時価で譲渡があったとみなされ、所得税が課されます。この税負担を見落とすと、限定承認のメリットが減殺されることがあるので注意してください。

兄弟が相続放棄するケース

「相続放棄 兄弟」で検索される方が多いように、兄弟間の相続放棄は実務上よくあるテーマです。ここでは2つの典型的なパターンを整理します。

パターン1:兄弟の中の一部が相続放棄する場合

たとえば父が亡くなり、相続人が長男・次男・三男の3人のケース。長男に実家を相続させたいため、次男と三男が相続放棄を検討する場合があります。

次男と三男が相続放棄すると、長男が単独相続人となり、実家を含むすべての財産(および債務)を長男1人が引き継ぎます。次男と三男は「最初から相続人ではなかった」とみなされるため、遺産分割協議に参加する必要もありません。

注意

特定の相続人に財産を集中させたい場合、相続放棄ではなく遺産分割協議で対応するほうが適切なケースもあります。相続放棄はプラスの財産も含めてすべて放棄するため、「実家は要らないが預貯金は欲しい」という選択はできません。遺産分割協議であれば、各財産ごとに取得者を決められます。

パターン2:被相続人の兄弟姉妹が相続人になるケース

被相続人に配偶者・子・父母がいない(または全員が相続放棄した)場合、被相続人の兄弟姉妹が第三順位の相続人として相続権を得ます。

この場合の相続放棄には特有の注意点があります。

  • 起算点:先順位の相続人が放棄した事実を知った日から3か月。先順位の放棄を知らなければ、熟慮期間は始まりません。
  • 代襲相続:兄弟姉妹の相続放棄では代襲相続は発生しません。つまり、兄弟姉妹が放棄すれば、その子(被相続人の甥・姪)には相続権は移りません。
  • 連絡の問題:先順位の相続人が放棄したことを兄弟姉妹に通知する法的義務はありません。債権者からの連絡で初めて知るケースも多いです。

全員が相続放棄した場合

法定相続人の全員が相続放棄した場合、相続人は不存在となります。この場合、以下の流れで処理されます。

  1. 利害関係人(債権者など)または検察官が家庭裁判所に相続財産清算人(旧:相続財産管理人)の選任を申し立てる
  2. 相続財産清算人が財産を管理・清算し、債権者への弁済を行う
  3. 特別縁故者への分与の申立てがあれば、裁判所が審判する
  4. 残余財産は国庫に帰属する

なお、2023年の民法改正により「相続財産管理人」は「相続財産清算人」に名称変更されています。

相続放棄の費用と相場

相続放棄の費用は、自分で手続きする場合と専門家に依頼する場合で大きく異なります。

自分で手続きする場合の費用

費用項目 金額の目安
収入印紙800円(申述人1人あたり)
連絡用郵便切手数百円(裁判所により異なる)
戸籍謄本の取得費用1通450〜750円 × 必要通数
住民票除票の取得費用300円程度

自分で手続きする場合の合計費用は、おおむね3,000〜5,000円程度です。戸籍の通数が多い場合はもう少しかかりますが、基本的に数千円で済みます。

専門家に依頼する場合の費用

依頼先 費用の目安 対応範囲
司法書士3万〜5万円書類作成・提出代行
弁護士5万〜10万円書類作成・提出代行・債権者対応・期限超過対応

3か月の期限が迫っている場合や、期限を過ぎてからの申述を検討する場合は、弁護士への依頼が安心です。司法書士は書類作成と提出代行が中心ですが、弁護士は代理人として裁判所とのやり取りや債権者対応まで行えます。

Point

経済的に余裕がない場合は、法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談や弁護士費用の立替制度を利用できる場合があります。収入・資産が一定以下であれば、弁護士費用の分割払いや立替えを受けられます。

相続放棄後の注意点(管理義務・固定資産税等)

相続放棄が受理された後も、いくつかの注意点があります。「放棄したから一切関係ない」とは言い切れないケースがあります。

保存義務(2023年民法改正)

2023年4月1日施行の民法改正により、第940条が改正され、相続放棄した人の義務が明確化されました。改正後の規定では、相続放棄をした者が相続財産を「現に占有」しているときは、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産と同一の注意をもって保存しなければならないとされています。

たとえば、被相続人と同居していた子が相続放棄した場合、その家に住み続けている間は建物を適切に管理する義務があります。ただし、「現に占有していない」場合(遠方に住んでいて被相続人の自宅には行っていない場合など)は、保存義務は生じません。

固定資産税について

相続放棄が受理されれば、原則として固定資産税の納税義務はありません。しかし、以下の点に注意が必要です。

  • 1月1日時点の登記名義人に課税通知が届く仕組みのため、名義変更前に課税通知が届くことがある
  • 相続放棄の受理を自治体に届け出ることで、翌年以降の課税通知は届かなくなる
  • 相続放棄前に固定資産税を支払ってしまうと、「法定単純承認」とみなされるリスクがある(ただし、判例では否定的な見解が多い)

被相続人の債権者への対応

相続放棄後に債権者から支払い請求が届いた場合は、「相続放棄申述受理証明書」のコピーを提示して対応します。受理証明書は家庭裁判所で交付申請できます(1通150円)。

債権者に受理証明書を提示すれば、通常はそれ以上の請求は来ません。万が一、執拗に請求される場合は弁護士に相談してください。

他の相続人への影響

自分が相続放棄したことで、次順位の相続人に相続権が移ります。法律上の通知義務はありませんが、次順位の相続人に連絡するのがマナーです。連絡しなかったために、次順位の相続人が借金の存在を知らないまま3か月の熟慮期間を過ぎてしまうトラブルも実際に起きています。

相続放棄と生命保険・遺族年金

相続放棄をしても、以下の財産は受け取ることができます。これらは相続財産ではなく、受取人固有の権利として扱われるためです。

  • 生命保険金(受取人が指定されている場合)
  • 遺族年金
  • 死亡退職金(受取人が指定されている場合)
  • 未支給年金(生計を一にしていた遺族が受給権者)

ただし、生命保険金は相続税の計算上「みなし相続財産」として課税対象になります。相続放棄をした人は生命保険の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)の適用を受けられない点に注意が必要です。

相続放棄の申述書の書き方【記入例付き】

相続放棄の申述書は、裁判所のウェブサイトから書式(成人用・未成年者用)をダウンロードできます。ここでは成人用の記入方法を項目ごとに整理します。

申述書の構成と記入項目

記入欄 記入内容 記入時の注意点
事件名「相続放棄申述」と印字済み記入不要
申述人の表示本籍・住所・氏名・生年月日・職業・被相続人との関係戸籍謄本と一字一句同じ表記にする
被相続人の表示本籍・最後の住所・氏名・死亡日住民票除票に記載の住所を正確に転記
申述の趣旨「相続の放棄をする」と印字済み記入不要
申述の理由(放棄の理由)該当する理由にチェック(債務超過・遺産不要など)「その他」を選ぶ場合は具体的に記入
相続財産の概略資産(土地・建物・預貯金・有価証券)と負債(借入金・未払金)の概算額正確な金額が不明でも概算で記入。「不明」も可
相続の開始を知った日被相続人の死亡を知った日付死亡日と異なる場合は、知った経緯の説明が必要になることがある

申述書記入時のチェックリスト

  • 申述人の氏名・住所は戸籍謄本・住民票と完全一致しているか
  • 被相続人の最後の住所は住民票除票の記載と一致しているか
  • 被相続人の死亡日は戸籍謄本の記載と一致しているか
  • 相続の開始を知った日が死亡日から3か月以内に収まっているか
  • 収入印紙800円は申述書に貼付したか(消印はしない)
  • 連絡用郵便切手は同封したか(裁判所ごとに金額が異なるため事前に確認)
  • 申述書のコピーを手元に保管したか

Point

申述書の「放棄の理由」欄は、詳しく書く必要はありません。「債務超過のため」「生活が安定しているため」など簡潔で構いません。ただし、熟慮期間経過後に申述する場合は、知った経緯と遅延の理由を別紙で丁寧に説明する必要があります。

申述書の提出方法

提出方法 メリット デメリット
窓口持参不備をその場で指摘してもらえる。受付印で提出日が確定する平日の開庁時間に出向く必要がある
郵送(普通郵便)来庁不要。全国どこからでも手続き可能到着日が提出日になるため期限ギリギリは危険
郵送(特定記録・書留)来庁不要。発送日の記録が残り安心郵送料がやや高い(書留は+480円程度)

期限まで余裕がない場合は窓口持参が最も確実です。郵送の場合は、裁判所の受付日(到着日)が申述日となるため、期限の1週間前までには投函しましょう。

相続放棄の期限逆算スケジュール表

「3か月以内」の期限を守るために、死亡日(または相続開始を知った日)を起点にした逆算スケジュールを整理します。以下は、相続開始を知った日を「Day 0」とした場合の目安です。

理想的なスケジュール(全体90日)

時期 やること 所要日数の目安 備考
Day 0〜7相続財産・債務の初期調査開始7日預金通帳・不動産・請求書の確認
Day 7〜14信用情報機関への開示請求7〜14日CIC・JICC・KSCの3機関。郵送は2週間かかる
Day 14〜28戸籍謄本・住民票除票の収集14〜28日複数自治体にまたがる場合は長期化
Day 30〜45放棄するか判断+申述書の作成7〜14日限定承認との比較も含めて検討
Day 45〜60家庭裁判所への申述書提出1日郵送の場合は到着日が提出日
Day 60〜75照会書(回答書)への回答・返送7〜14日届いたら速やかに回答
Day 75〜90受理通知書の到着7〜14日受理証明書の交付申請も行う

注意

上記は余裕を持ったスケジュールです。実際には戸籍収集や信用情報の開示に想定以上の時間がかかることがあります。Day 45までに申述書を提出できない見通しの場合は、早めに熟慮期間の伸長を申し立ててください。伸長の申立て自体も3か月以内に行う必要があります。

期限切れリスクの高いパターンと対策

リスクパターン よくある原因 対策
戸籍収集が間に合わない被相続人が多数回の転籍をしている広域交付制度(2024年3月〜)を活用。並行して伸長を申立て
相続人間で意見がまとまらない放棄するか遺産分割するか迷っている個人の判断で放棄は可能。全員の合意は不要
借金の全容が把握できない連帯保証の有無が不明信用情報開示と並行して伸長を申立て
先順位の放棄を知るのが遅れた兄弟姉妹への通知義務がないため起算点は「知った日」。慌てず3か月以内に手続き
葬儀・法要で時間を取られた初七日・四十九日で1か月以上経過Day 14までに戸籍収集を開始する

熟慮期間の伸長申立てに必要なもの

  • 熟慮期間伸長の申立書(裁判所ウェブサイトから書式をダウンロード)
  • 収入印紙800円(相続人1人につき)
  • 連絡用郵便切手(裁判所ごとに異なる)
  • 被相続人の住民票除票(または戸籍附票)
  • 伸長が必要な理由の説明(財産調査に時間を要する旨などを具体的に)

伸長が認められると、通常1〜3か月の延長が認められます。延長後もなお判断がつかない場合は、再度の伸長申立ても可能ですが、2回目以降はより具体的な理由が求められます。

相続放棄と相続税の関係【計算例付き】

「相続放棄すれば相続税は関係ない」と思われがちですが、放棄した人自身への課税と、他の相続人への影響の両面で注意が必要です。

相続放棄した人にかかる税金

相続放棄しても、以下の「みなし相続財産」を受け取った場合は相続税の課税対象になります。

みなし相続財産 相続放棄しても受け取れるか 相続税の課税 非課税枠の適用
生命保険金(受取人指定あり)受け取れる課税対象適用なし(放棄者は法定相続人から除外)
死亡退職金(受取人指定あり)受け取れる課税対象適用なし
遺族年金受け取れる非課税—
未支給年金受け取れる所得税(一時所得)—

計算例:生命保険金を受け取る場合

以下のケースで、相続放棄した長男が受け取る生命保険金にかかる相続税を計算します。

ケース設定

  • 被相続人:父(遺産総額8,000万円)
  • 法定相続人:母・長男・次男の3人
  • 長男が相続放棄(ただし生命保険金2,000万円の受取人)
  • 母と次男が遺産を相続

ステップ1:基礎控除額の計算

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

相続放棄しても法定相続人の「数」には含まれるため:3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

ステップ2:生命保険金の非課税枠

非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数 = 500万円 × 3人 = 1,500万円

ただし、相続放棄した長男はこの非課税枠を使えません。非課税枠は母と次男の受取分にのみ適用されます。

ステップ3:長男の課税額

長男が受け取った生命保険金2,000万円は、非課税枠の適用なしで全額が課税対象になります。さらに、相続放棄した人は相続税額の2割加算の対象にもなります(配偶者・一親等の血族以外に適用)。ただし、子は一親等の血族であるため、実際には2割加算は適用されません。

相続放棄が他の相続人の相続税に与える影響

影響項目 放棄がある場合 放棄がない場合(参考)
基礎控除額放棄者も「法定相続人の数」に含む(変化なし)同じ
生命保険の非課税枠放棄者も「法定相続人の数」に含む(枠の総額は変化なし)同じ
各相続人の取得額放棄者の分が他の相続人に上乗せされ、1人あたりの税額が増加する可能性3人で分割
配偶者の税額軽減配偶者の取得割合が増えれば軽減額も増加—

注意

「相続放棄すれば節税になる」という考えは誤りです。相続放棄はあくまで借金から身を守るための制度であり、節税目的で利用すると、かえって家族全体の税負担が増えたり、生命保険の非課税枠を活用できなくなるリスクがあります。相続税対策は放棄ではなく、生前贈与や保険の活用が基本です。

相続放棄のよくある質問(FAQ)

相続放棄の期限は延長できますか?
はい。3か月以内に家庭裁判所へ「熟慮期間伸長の申立て」を行えば、期限を延ばすことができます。被相続人の財産が複雑で調査に時間がかかる場合などに認められ、通常1〜3か月程度の延長が認められます。申立て費用は収入印紙800円+連絡用郵便切手です。
相続放棄をしたら生命保険の受取金はどうなりますか?
受取人が指定されている生命保険金は、受取人固有の財産であり相続財産には含まれません。そのため、相続放棄をしても生命保険金は受け取れます。ただし、相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象になります。さらに、相続放棄した人は生命保険の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)の適用を受けられない点に注意してください。
相続放棄は撤回できますか?
家庭裁判所に受理された相続放棄は、原則として撤回できません。ただし、詐欺・強迫による場合や、未成年者の法定代理人が本人に不利な放棄をした場合など、例外的に取消しが認められるケースがあります。取消しの申立て期限は、追認できる時から6か月以内、または放棄の時から10年以内です。
相続放棄の申述書はどこで入手できますか?
裁判所のウェブサイトから書式をダウンロードできます。成人用と未成年者用の2種類があり、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所の窓口でも入手可能です。記入例も裁判所サイトで公開されているため、初めての方でも記入しやすい書式です。不明点は家庭裁判所の窓口で相談すれば教えてもらえます。
被相続人の借金を3か月過ぎてから知った場合でも相続放棄できますか?
判例上、相続人が相続財産の全容を認識できなかった正当な理由がある場合は、借金の存在を知った時点から3か月以内であれば相続放棄が認められる余地があります(最高裁昭和59年4月27日判決)。ただし、期限内に行うのが原則であり、期限超過後の申述は裁判所の個別判断となるため、必ず弁護士に相談してください。
相続放棄と遺産分割協議で「何も受け取らない」ことの違いは何ですか?
相続放棄は家庭裁判所への申述により「最初から相続人ではなかった」ことになり、プラスの財産もマイナスの財産(借金)も一切引き継ぎません。一方、遺産分割協議で「何も受け取らない」と合意しても、法的には相続人のままです。そのため、債権者からの借金の請求を拒否することはできません。借金がある場合は、遺産分割協議ではなく家庭裁判所での相続放棄を選ぶ必要があります。

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